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Chapter 01: Desayuno con familia mia

まだまだ導入部。地味なカンジです。 :)

 4月26日、金曜日、天気: 晴れのち曇り、1ドル: 97.34円、目覚め良好度: B+。

 今日も一日が始まった。代わり映えの無い日常。正確には、変えようとする努力が著しく不足した、必然的日常。チャレンジしない、だから失敗もしない、だから劇的なコトなど起きるはずもない、そんな日々。

 でも、オレはこれで悪くないと思ってる。たしかに、"great"でも、"fantastic"でも、"MARVELOUS!!、オレの日々"でもないが、なんだかんだnot that bad(悪くはない)なのである。


 今日の朝食は、かりかりに焼いたベーコン、半熟で黄身の膜が今にも破れて、中から卵液が流れてきそうなほどに、絶妙な均衡を保っている目玉焼き、少し大きめにスライスした生のトマト、果物は1種類(今日はバナナ--毎日だいたいバナナで、あとはその時期の季節果物が多い--)、そして、ほのかにバターの香しさを感じさせるロールパン。(別皿で)

 出来上がって、おおよそ3分ほど経ったであろう状態で、4人が座るには少々大き過ぎるテーブルの上にいつものように置かれていた。


 飲み物は各自で自分が飲みたいものを入れるのが、この家の暗黙のルールである。オレは100%果汁のグレープフルーツジュース一択であるが、親父はミルク多め、砂糖無しのカフェ・コン・レッチェ、母親と妹は100%果汁のオレンジジュースを毎日飲んでいる。

 さっき、”オレは、100%果汁のグレープフルーツジュース一択”と高らかに宣言してしまったが、時々オレンジジュースを飲むことがあるのを忘れていた。グレープフルーツをたまたま切らしている時、もしくは、単に気分的にグレープフルーツジュースじゃない時……。


 唐突では在るが、オレは、朝食が自分の意志とは関係なく、メニューを決められ、あたかもこれ食っとけと言わんばかりに、勝手に出てくるのが好きじゃない。こんなことを考えるのはオレだけかもしれないし、たんなるオレのわがままなのかもしれない--いやそうなのだろう--。そして何より、毎日朝食を作ってくれる母親に謝れ、と叱られることになるだろうから、口に出して誰かに伝えた事はない。

 そんなコトを3日に1回は考えながら、朝食を取る。特に家族と会話をすることもなく、朝のニュース&エンタメ情報番組を観ながら--親父が新聞を読み終われば、新聞のテレビ欄と、国際面を流し読みしながら……--


 親父は毎日6時半に起きる。まず顔を洗い、歯を磨く。そして居間にある、いかにも高そうな親父専用のソファーに深く腰掛け、新聞を片手に、国営放送のニュース番組を観ながら、朝食が出てくるのを待つ。そうしてる内に、妹が2Fから降りてきて、同じように顔を洗い、歯を磨き、居間へ来る。


 オレが言うのも難だが、オレの妹は、かなりカワイイ……部類に入ると思う。自分の身内を良く言うということは、あまり日本人的ではないかもしれないし、いわゆる日本人観における美徳というものからはかけ離れているのかもしれない。しかし、実際、容姿に恵まれた出で立ちなのである。ここで、お約束のように妹がどのような姿形をしているのかを、少々大げさに誇張して、文学的に表現するのがテンプレートなのだろう。それは重々承知の上で言わせてもらおう、"それはまた後日"。


 問題は、この容姿に恵まれたオレの妹が、あまりにも無防備だということだ。朝、居間へ来ると(正確には、オレの方が起きるのが遅いことが多いのだが)80%以上の確率で、妹のお気に入りである淡いピンクのパジャマ、及び淡色ブルーの可憐で、愛らしいパジャマのボタンは全てはだけ、少しでも下を向こうものなら、バケツの底が抜けて水が全て流れ出る要領で、胸部全般を強制公開、露になるのである。そして、パジャマのパンツの部分は、意味も無く下がり、分数で表現すると、"日本列島分の東京23区程"、ショーツ部分がチラりとはみ出ている状態なのだ。

 親父と母親は毎日のように注意するのだが、相変わらずである、今日も見えちまってるよ、mi hermana……。


 妹は、リビングに来るなり、いつもと同じように、チャンネルをお気に入りのニュース&エンタメ情報番組、"guten morgen"へ回す。(妹はこの番組をグーテンと呼んでいる)チャンネルを回した瞬間、国営放送のニュースキャスターの声が、途中で遮られ、寸止められているようになるのが少しおもしろい。妹は、グーテンのエンタメランキングコーナーや、今流行りのアイドルの新曲PV最速公開なるものが好きなようで、お気に入りのアイドルグループ、RinQu.net(りんくぅーねっと)が出てくると、甲高い声を上げて、食い入るように画面を凝視する。


 今日の特集はそのRinQu.netで最も人気のある、りるという女の子の特集だ。なんでも、大手カレーチェーン、インディアーナの一日店長を今日の午前11時から午後3時まで務めるそうだ。朝の6時から並び始めたファンもいて、すでに30人もの列ができているとのことだ。ほんと、よくやるねー……。かくいうオレの妹も、この"りるちゃん"なるアイドルの大ファンで、一番推してるメンバーらしい。この子の話を妹に振る事は、地雷を踏む事を意味し、普段の少々舌足らずで、おっとりしすぎている妹が饒舌化し、少なくとも3時間は拘束される事になりかねないので、スルーである。こういう時、妹の脳内は3.2Ghzぐらいの処理能力を発揮しているじゃなかろうか、とオレは黙考してみる。


 オレが意味も無く思索している内に親父はもう仕事に出かけていた。りるちゃん特集もいつのまにか終わり、プロ野球選手と、美人アナの不倫スキャンダルへと話題が変わっていた。朝食の片付けを始めた母曰く、妹も朝食を済ませ、自室に戻り制服に着替えているようだ。

 時刻は午前7時35分。オレもそろそろ着替えて、準備しないと……。


 Que hay hoy?


 ¡Hasta la próxima!

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