形なき捕食獣
いや〜、なんという食べっぷり。
『オナカ…空いた…』
そして、暴食。
「こらこら、さっき食べたでしょ!!」
とりあえず注意しておかないと、目を離すと勝手に何かを食べてそう…
『あっ…ご飯……』
クリーチャは何かを見つけたようで、口を向ける。
見ると………え〜と、あれだ…馬車にいた………そう勇者のハーレムの2人だ!
女騎士と貴族か?高そうな服を着た女がいた。
「こんにちは〜」
とりあえず、手を振って挨拶…こんばんはだったか?
「現れたな!“混沌の使者”っ!!」
“絶望の使者”になったのは知らないみたいだな…。
とりあえず、戦闘準備として手をクリーチャに突っ込む。
『食べて…イイ……?』
いや、駄目だよ。
こんな時に…痛っ!? 噛みやがった!!?
【ダメージを感知、“絶望の使者”が発動しました。】
【ダメージを完治しました。ステータスが上昇します。】
あっ、そうだ…自動高速回復があったんだ。
まったく、後で調整するか…
「こらっ!! 噛むな! まったく“形状変化:ブラック・ウィップ”」
クリーチャに叱りながら、手を引き抜いた。
引き抜いた手には、かつて“邪悪なる光”で作った“閃黒剣”に似ている黒い剣を握っている。
『“ブラック・ウィップ”』
さぁ、喰い殺すか…
『頑張レ〜』
いや、君も戦うんだよ?
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何なのあの黒い剣は…
(マリア様! しゃがんで!!)
リンさんに念話で言われてとっさにしゃがむ。
次の瞬間、私の上を黒い剣が斬った。
ジョナは動かずただ剣をその場で振っただけで、剣が鞭のように伸びて私達の上空を通ったのだ。
鞭になった黒い剣は私達に当たらず、そのまま壁に当たる。
ガリッ!!
その時、まるで固い物をかじった音が鞭からした。
よく見ると鞭が触れた箇所がえぐられていた。
いや、“食べられた”が正しい。
あの黒い鞭は触れた物を食べる特性があるのだ…。それを知って私はぞっとした。
もしリンさんが指示しなかったり、反応できなかったら私は“死んでいた。”
「お〜、避けたか。」
ジョナは感心したように私達を見ていた。
「じゃあ、“これ”は?」
再び鞭が振られた。
(右に飛んで!!)
再び、リンさんの指示通りに跳びながら私は反撃に移った。
『光よ!敵を討て“ホーリー・ガント”』
私は人差し指をジョナに向けながら詠唱し、光の弾を数発撃った。
光の弾はジョナに向かっていくが、直前にジョナが鞭を振るいホーリー・ガントを消した…いや食べた。
どうやら、あの鞭は魔法でも食べるようだ。
だけど、私に集中したせいかジョナはリンさんが背後から近づいているのに気づいていない。
「覚悟!」
『ライト・スラッシュっ!!』
リンさんの光の剣がジョナの頭上めがけて振り下ろされた。
「まぁ、背後の対策ぐらいしてるけどね〜。」
…されなかった。
リンさんの剣はジョナの頭近くで止まり、リンさんの体には空中の裂け目から出ている黒い触手が縛りついて身動きを封じられていた。
『“ロスト・イーター”』
リンさんは触手を吹き飛ばそうと体から魔力を発生させる。
私も援護の為、光弾を準備する。
「無理無理、魔力なんてクリーチャの食事だよ。」
ジョナはヘラヘラと告げた。
「くっ…」
「リンさんっ!! “ホーリー・ガント!!”」
私達は光弾を触手に撃つが、光弾は吸い込まれるように消える。
「マリア様! 逃げ…『『『イタダきます』』』……!?」
!!?
リンさんが“喰われた”…
リンさんが言い終わる前に黒い塊がリンさんを一口で呑み込んだ。
「さて…君はどうする?」
ジョナが笑顔で聞いてくる。
私がとった行動は…
逃げることだった…
一番近い城の外へ出る扉へと私は全力で走った。
「まぁ、逃がさないけどね〜。“食べなさい”」
『ハ〜イ…』
後ろからそんな会話が聞こえたが、私は振り返らず走る。
『『『『『イタダきます』』』』』
「ユウキ様…たす…」
次の瞬間、私は意識を失った。




