天使と暗殺者
ジョナと名乗る“混沌の使者”が兵士の皆を誘惑して同士討ちを始めてしまった!?
「皆さん、落ち着いて!!」
僕は大きな声で言うけど、皆の耳に入らず殺し合いを続けている。
「うあぁぁっ!!」
若い兵士が僕に斬りかかろうと剣を振ってくる。それを僕は防ぐ。
「ユウキ様!! 此方へ!」
マリアが僕の手を掴んで誘導してくれた。
だけど、
「マリア、皆を止めないと…」
「ですがどうやって…」
案が浮かばない。
その時…
「魔王め、正義の裁きを受けろ!」
ガブリエルさんとラファエルさんがジョナへ近づいて剣を抜いた。
「おいおい、僕はまだ“国”を持っていないぜ〜。だから、僕は“魔王”じゃあない。」
「黙れ、外道! お前はこの世界の平和を乱す存在だ!!」
ガブリエルさんは剣をジョナに向け殺気を飛ばす。
ジョナはメガホンを捨てて後ろを見せた。
まるで“貴様と話す気はない”と言いたいように…
「いくぞ、ラファエル!」
「了解…」
ガブリエルさんの合図にラファエルさんも剣を構え、ジョナに斬りかかった。
「マスターに触るな。」
「ジョナはんには手を出さんといて〜」
2人の攻撃はジョナの側にいた彼女達に防がれた。
軍服の子は軍刀で、クのイチの子は右人差し指と中指の2本の指で白刃止めをして2人の攻撃を防いだ。
「なっ!?」「え!?」
2人は自分の攻撃を防いだ彼女達を見て驚きの声をあげた。
あの子達はジョナに洗脳されているのだろうか?
「「死ね(や)」」
彼女達は蹴りを放ち、ガブリエルさん達を吹き飛ばす。
ガブリエルさん達はすぐに受け身をとり体制を立て直した。
しかし、ガブリエルさんはすぐに反撃をせず驚いた顔で彼女達を見る。
そしてガブリエルさんは口を開いた。
「なぜ貴女達がいるのですか? “ルシファー様”と“朧”、貴女達は“死んだ”筈だ。」
ルシファー?、オボロ?それが彼女達の名前か?
「そんな、“裏切りの天使”と“霧の暗殺者”が何故…」
マリアがあり得ない事があったように呟いた。
聞くと“裏切りの天使:ルシファー”は、光の精霊が魔王と戦う為に作った天使の中で一番強く、美しい天使だった。
彼女は実力が認められ天使長に任命された。しかし、魔王が初代勇者に敗れると同時に“悪の誘惑”に負け、反逆を起こした。
彼女はこっそりと自分で作った兵器“無敵空艦劫火光炎”を使い、さらに魔導兵器“天獄騎士団”を率いて同じ天使を皆殺しにした。
だが、勇者により討たれた。
“霧の暗殺者:オボロ”はかつてとある国に仕えていたが、嫌気がさし国を裏切った。
暗殺者でもあり諜報員で優秀だった彼女は、裏切った国からの追っ手を自分側に寝返らせたりして部下を増やしていった。
彼女は高額な報酬で様々な国から依頼を受けていた。
しかし、裏切った国が彼女に賞金をかけ依頼を勇者にした。
勇者が彼女が潜んでいる所に行くと、霧が深い場所に城ができていた。
過去に様々な国が彼女を捕らえようと兵をだしたが誰1人として帰ってこなかったが、勇者は帰ってきた。
彼女の首を持って。
「えっ…君達そんな凄い人なの?」
ジョナが振り返って2人に聞く。
ていうか、仲間なのに知らないのか?
「はいマスター、生前はそう呼ばれていました。管理人は宝具の一番深い関わりを持つ生物が“召使”として蘇った存在です。しかし、私は“元”ルシファーであって“今はカナリア”です。」
「うちは“カラス”やで。」
ルシファーが“カナリア”、オボロが“カラス”か…
「それにしても、何でアイツは知ってるんやろ?」
「確かに、天使は私が生前皆殺しにした筈です。」
カラスとカナリアが首を傾げてガブリエルさんを見る。
確かに何でガブリエルさんは知ってるんだろう?
「それは…私が“転生”したからだ!!」
ガブリエルさんの背中から光が集まり羽のようになる。
「私は死ぬ直前に光の精霊様から頂いた秘法を使い、この肉体へと生まれ変わった!」
ガブリエルさんが剣を構えると光が剣に集まり巨大な剣になる。
「さらに、一時的に聖剣ジャスティスと同じ剣を作り出し扱う事ができる! これなら、貴女には負けないぞ! ルシファー様!!」
ガブリエルさんが剣を高らかに構える。
あれは祝詞!!
『聖なる精霊よ…じゃ「待つわけないやろ」がっ!?』
えっ…“いつの間に”
ガブリエルさんが祝詞を唱え始めると、突然カラスが現れてガブリエルさんの喉をナイフで掻っ斬った。
「ガブリエル!?」
ラファエルさんが驚くと…
パンッ!
銃声が鳴り響きラファエルさんの頭が吹き飛んだ。
見るとカナリアの手には硝煙が立ち上る銃を持っていた。




