黒き演説
勝てない…
俺はやって来る“それ”を見た時に口にでそうになるが実際には言葉が出なかった。
白い悪魔…マーガにドラゴンそしてラエティティアがいて、さらにSFに出てきそうな金色の戦艦が飛んでゆっくりと来ている。
こっちの戦力は先程の戦いで数が減った。
さらに…先程から兵士達が“咳”をしている。
「リュウ様…ゴホッ……すいません体調が…」
巨人の近くで戦っていた奴隷のララがそう言って寝込んで“そのまま起きなかった。”リリには症状はなかった。
この国はもう駄目だ…逃げるか?
そう思い、少しずつ後退する…その時だった。
『あ〜テステス、ヤッホー!! アルカイダの皆さん元気ですか!』
突然、拡声器のような声がアルカイダに響き渡った。
見ると城門でまだ残っている所の一番高い場所に、3人の人物がいた。
1人は軍服を着た長い黒髪の少女、もう1人は黒いショートボブで露出が高い忍の服を着た少女。
最後の1人は2人と違って男で多分俺と同じ歳だろうか、黒髪の短髪で学ランを来ている。転生者か? そいつはメガホンを持って俺達に話しかけてきた。
『え〜僕の名前は“ジョナ”。 さっそくだけど“降参しない”? 条件をのんでくれるなら“殺さないよ”〜』
ジョナは笑顔で俺達に勧告した。
「騙されちゃ駄目だ!」
そこにユウキが大きな声を出して叫ぶ。
「そいつは“混沌の使者”だ! 口から皆さんを惑わす嘘を吐く魔王だ!」
ユウキが剣をジョナへ向ける。ついでに俺も聖槍を向ける。
「彼はキドリー皇子を殺した犯人よ…」
いつの間にかアイもいて武器を浮かべて照準を合わせている。
「我々の仲間“ミカエル”を殺したのもお前だろう!」
光の騎士ガブリエルとラファエルもいる。
殺気が全てジョナへと向けられる。
当の本人は笑顔を絶やさずニコニコしている。彼はメガホンを口元へ近づけると口を開いた。
『じゃあ、降伏はしない…というわけね〜。 了解、じゃあ戦う前に一言…』
ジョナは息を大きく吸って不気味な笑みを浮かべ口を再び開ける。
『注目しろ、アルカイダの兵士達よ…まずは見ろ!!』
ジョナは指を指した。
指先には1人の兵士がおり、周りから視線が集まる。
「ギャハ…」
その兵士が口を開くと、突然どんどんと変化していく。髪はなくなり、肌は白くなり体格が大きくなる、そしてついに“マーガ”になった…
「嘘だろ…」
俺は思わず呟いていた。
周りからもどよめきが起きる。
仲間“だった”兵士が魔物になる。その意味を分かったからだ。
『“マーガ”は擬態して君達と同じ姿になる。 見分けられるか? だが、考えて見ろ…“お前達が信じていた仲間、戦友、家族は本物か?” 気をつけろ…擬態した魔物はいつお前達に牙を向けるか分からない。』
何を言っているんだ…!?
擬態ができるなら言わない方が有利の筈だ。
その時、俺は気づいた…ジョナが“起こそうとする事”を…
『教えてやろう…“この場にマーガはいるぞ。” さて、何処だったかな…』
兵士達は周りをキョロキョロし、隣にいた仲間から離れる。
『いたぞ……そこだ!!』
ジョナが指を指すと、そこにいる兵士達が剣を構える。
すると…
「コイツ剣を持っているぞ!」
他の兵士が剣を抜き隣の仲間を“斬った”。
それを引き金にその場にいた兵士が“同士討ち”を始めた。
「まぁ、さっきの1体だけなんだけどね」
俺はパニックになった兵士の攻撃を防ぎながら、ジョナがそう呟いたのを聞いた。




