武術
ふむ…白い悪魔とやらの侵入をなんとか阻止できて、息子に指揮を任せて来てみたが…
思った通り、あの小僧は戦場で人の前に立つ器ではないな。
小僧は前の世界ではおそらく“自分を中心に世界が回っていた”んだろう、この世界でもそうかもしれないが“敵”は違う。
敵は小僧の“自分を中心とした世界”を“無視”する。 だから、仲間の死を悲しんでいる間も“待たずに”止めをさした。
さて、この黒い悪魔が“大将”らしいが強いな…。
“効率よく戦う術”を知っている。
未知な力を持つ魔術士を直接殺さず、さらに兵士を減らす時間稼ぎの為にワザと“勇者に仲間を殺させた。”
勇者が仲間の死へ目がいくと計算してやがった。
厄介だな…
「黒い悪魔よ、お前の名前は?」
「種族ハ“マガーラ”ダ、名ハ無イ。」
「そうか…では、いくぞマガーラ。」
互いに名前を知ったところで、互いに構える。
儂は剣を抜き。
『強化、附加』
マガーラは背中に紋章を刻む。
おそらく、紋章に刻まれた言葉によって様々な能力を得る力だろう。
「「ふっ(フッ)!!!」」
開始の合図はなかった。 ただ今動くべきだと行動を起こしたのが同じだった。
儂とマガーラは一瞬で距離を詰める。
まず始めの一手は儂からだった。 儂の剣はマガーラの首を正確に狙い、首へと剣を振った。
ガキッ!!
しかし、剣はマガーラの首を斬り落とすことができなかった。 奴は防御も回避もせずに儂の剣を受け止めた。
この一瞬をついてマガーラは右腕を構えて繰り出そうとする。
『悪華』
顔面目掛けて放たれた拳を儂は避けることができずにくらってしまう。
「ガハッ!?」
しかし、次の瞬間に儂はマガーラの顔へ裏拳をくらわせた。
儂が持っていた剣は地面に落ち、マガーラはふらっとしたが直ぐに大勢を立て直す。
儂は剣を拾わず、マガーラと対峙する。
「…??? 何ガ…?」
どうやら、マガーラは分からないようだな…だが、儂は“あること”が分かった
「マガーラよ…お主は刃は通さないが、物理的ダメージは効くんだな?」
「っ!?」
どうやら、当たりだな。
奴は剣での攻撃は傷がつかなかったが、儂の裏拳は効いた。
つまり、奴には“刃は効かないが物理的ダメージは有効”。
なら、儂は“拳”を使えばいい。
「フン…マグレデ当タッタ攻撃、次ハ当タラナイゾ。 創造主ガ考エテイタ格闘技“悪拳”ハ最強ダ。」
「ほう、もしかしてお主の創造主は“ジョナ”か?」
「ナッ!?」
何故分かった?といいたげな顔を儂に向ける。
何故当たっているか?それは…
「その武術は儂が考えた格闘技術で“龍拳”という。 その技術を知っているのは儂の息子と娘。そして、その娘マオが武術の練習相手にしていたと話しておった“ジョナ”という少年だ。
まぁ、多少アレンジされているがの…」
儂は顎髭を撫でながら教えてやった。
「龍拳を元に作られた武術なら、面倒だが対処はできる。“悪華”だったか…お主のエネルギーを拳に宿し放った一撃は、相手を簡単に破壊できるだろう。」
「ウガァァッ!!」
マガーラは再び儂に近づいて『悪華』を繰り出す。
だが儂は“避けない”。
『悪華』を受けた箇所“左胸”、おそらく心臓を止める為に狙ったのだろう。
拳を受けた瞬間、儂は全身の力を抜く。
左半身を受けた力に身を任せて後ろに逸らす。 受けたダメージを流す為だ。
そして、その場で回転し受けたダメージを逃がす。 ダメージが無くなったら今度は左拳に力をいれ回転する力を利用してマガーラに裏拳をまたいれる。
『龍乃滝流』
受けたダメージを逃がす技術でカウンターに転ずる技だ。
「ギッ…!!」
今度は強めにやったのでマガーラは吹き飛んだ。
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「糞!!糞!!糞ッ!!」
私は四つん這いになりながら叫ぶ。
苛立ちを抑えられなかった。
この苛立ちはレオと名乗る人間に対してではなく自分が人間達相手に手間をかけている事だった。
気づけば自分の魔物達は殆どやられており、この帝都を落とす事ができないと悟った。
「申シ訳アリマセン。」
許されないと分かっていながらつい口にしてしまう。
その時だった…
私は自分達が来たルアーノ街がある方角へと首を向ける。
他のマーガも同じだった。
ああ…我らの創造主よ……“おめでとうございます。”
私は失態ばかりをしてしまい、創造主に謁見する資格はありません。
ですが、“道連れ兼戦力削減”なら…
せめて、目の前にいる脅威を…
『強化最大』
『自爆時間』
『発動開始』
私は最後の力を使い“自爆”の紋章を発動させた。




