巨人と悪魔
セイヤのフォルテが消えて、地割れに落ちた筈の“白いゴーレム”がいきなり現れた。
僕はとっさに聖剣ジャスティスを構える。
「ユウキっ!! 俺が時間を稼ぐからあのゴーレムを、“祝詞”を唱えて吹き飛ばせっ!!」
リュウが聖槍を構えながら叫んだ。
だけど、“祝詞”は…
「使えない…」
「はぁ!?」
「“祝詞”はラエティティアを倒す時に使ったから、しばらくは使えないんだ。」
「ふざけんなよ! 大事な時に使えないな!」
ひどいよ…
「うっ…」
突然セイヤが胸もとをおさえて倒れる。
「フォルテが死んだ…?」
セイヤが自分の“使い魔”が死んだと告げた。
確かルナから聞いた話だと使い魔を召喚して、もし使い魔がこの世界で死ぬと元にいた所に戻る。
しかし、召喚者は使い魔が死んだ時に“代償”として魔力を大量に持っていかれる。
その代償を元に使い魔は傷を癒やし、また召喚する事ができるようになる。
過去に魔術士が使い魔を召喚したが、事故で使い魔が死んだ時に大量の魔力を持っていかれて魔術士も死んだ事があるらしい。
「セイヤ、大丈夫!?」
僕は心配してセイヤに近づき声をかける。
よかった…生きてる。
僕はホッと一安心すると、巨大ゴーレムを睨みつける。
よくもセイヤを…許さない。
ブモーーーー
船笛のような声を出しながら巨大ゴーレムは右腕を天まで振り上げ、そして、振り下ろす。
「避けろっ!!」
レオ伯爵の大きな声に従い、僕はセイヤを担ぎ兵士達は振り下ろされる右腕を避けた。
振り下ろされた右腕は城門の壁を一部だけど抉った。
抉られた城門の壁は帝都への新しい入り口になり、そこを狙っていたかのように白い悪魔達が侵入しようとする。
大変だ!
僕は白い悪魔達を止めるべく、入り口の所へ行こうとする。
「行カセナイゾ、勇者ヨ。」
僕の行き先に“黒い悪魔”が現れた。
“黒い悪魔”は白い悪魔を黒くしたような風貌で、目がない白い悪魔と違って“人間でいう白目が紅く、黒目が金色に染まった異形の双眸”が僕を睨んでいた。
「そこを退いてくれ!!」
僕は剣を構えて“黒い悪魔”との距離を縮めて、首へと剣を振った。
ガキッ!!
まるで、硬い金属どうしがぶつかった音が響く。
僕の聖剣ジャスティスは確かに“黒い悪魔”の首に刃を当てた。
しかし、“黒い悪魔”には“傷一つついていなかった。”
「終ワリカ?」
“黒い悪魔”はソッと手を僕の胸に触れる。そして…
『悪威』
掌手を放ち、僕は吹き飛ばされて壁に叩きつけられた。
「げほっ!!」
僕が意識を取り戻すと同時に咳をした。
胸が苦しい…
そうか、黒い悪魔に掌手をやられて…
おえ…気持ち悪い……。
「ホウ、心臓ヲ止メタト思ッタノニ…勇者ハ普通ノ人間ト違ッテ丈夫ダナ?」
黒い悪魔は感心したように腕を組んで僕を観察していた。
「次ハ“頭”ヲ潰ス。」
そう言って黒い悪魔は地面を蹴り距離を縮めてくる。
僕は動こうとするけど、体がまるで何かに纏わりついているようで上手く動けなかった。
黒い悪魔が僕の前に来ると拳を突き出してきた。
『悪華』
目の前に黒い拳が迫ってきた。
ああ…駄目だ……マオさん………
僕は目を閉じる。
「やらせねぇよ。」
リュウの声がして目を開けるとリュウが槍で黒い悪魔の拳を受け止めていた。
リュウは黒い悪魔の拳を払うと直ぐに構えて槍で突いた。
ガキッ!!
しかし、リュウの槍でもっても黒い悪魔の肌に傷を付ける事はできなかった。
「硬いな。」
リュウが蹴りをくり出すが黒い悪魔は避けて、リュウと僕の距離を開ける。
「おい、ユウキ大丈夫か?」
「なんとか…リュウ、悪いけど崩れた壁の所に行って白い悪魔達を……」
「その点は大丈夫だ。“光の騎士”と俺の奴隷、そしてリュンクス伯爵が食い止めている。」
リュウに言われて見ると光の騎士のガブリエルさんとラファエルさん達が魔導武器でリュンクス伯爵は兵士達に指示しながら応戦している。
「まずはあの“黒い悪魔”のと“白いゴーレム”を何とかしないとな…。」
リュウは改めて黒い悪魔と対峙する。
僕もようやく動けるようになったので立ち上がる。
「オイ、勇者共…私ハ“黒イ悪魔”トイウ種族ジャアナイ。 私ハ“マーガ”ヨリ“進化”シタ“マガーラ”ダ…」
黒い悪魔マガーラは自分をそう呼んだ。
そして、マガーラは白いゴーレムに向かって…
「命令ダ疫病泥巨人ヨ…“城門ヲ破壊シロ”。」
なっ!? 城門を破壊しろだって!
止めないと!!
「オット、勇者共…私ガイルゾ?」
マガーラはそう言うと、マガーラの背中にフォルテの足下にあった時と同じ紋章が浮かびあがる。
『強化・附加』
紋章に“強化”という文字が刻まれる。
コイツか、フォルテを消したのは…
「“悪ノ加護”ニヨリ頂イタ能力、“呪言”ノ力ヲ見セテヤル。」
マガーラは口を三日月のようにニヤリとして歪めた。




