戦いの始まり
あの後、アイは詳しい話をする為に皇帝陛下のいる城へ向かい、僕は帝都アルカイダの南城門前に来ていた。
リュウとセイヤは準備があるからと言って自分達の部屋に戻り、マリアは皇帝陛下に呼ばれていない。
戦いか…怖いな。
「ユウキ殿、大丈夫ですか?」
リンさんが心配して声をかけてくれた。
何をしているんだ僕は…皆を守るって決めたのに!
僕は顔を叩いて気を引き締める。
「わりぃ、遅くなった。」
リュウがやってきた。リュウはトイレに行った後なのか、ズボンのなかなか締まらないベルトに手をかけている。
リュウの後ろには獣人の女の子2人がいて、奴隷である首輪を着けている。2人共運動をした後なのか顔を真っ赤にし、服が乱れて 呼吸が荒かった。
大丈夫かな?
「ごめん遅れた。連れてくるのに時間がかかった。」
次にセイヤがやってきた。
セイヤの後ろにはギルド“光の騎士”の人達が整列をしている。
光の騎士は皆、鎧に魔導剣や魔導ランスなど最高級の装備をしていた。
リーダーと思う人がもう一人を連れて僕達の所にやってきて膝をついた。
「我ら“光の騎士”、セプンテント帝国に災いの魔物が来ると連絡を受けて参上仕った!」
なんと、ミカエルさんがいた“光の騎士”のメンバー全員が応援に来てくれたのか!?
「ありがとうございます! ミカエルさんの件で忙しい筈なのに申し訳ありませんでした。」
「いえ、ユウキ様が気を病むことではありません。我々は“弱い人”の“盾であり、剣でもある”ことが存在意義ですから。 ミカエルが居ないのは辛いが、光の騎士の創立した私“ガブリエル”と後ろにいる彼女“ラファエル”がいればどんな困難だって乗り越えられます。」
ガブリエルさんは笑顔で大丈夫だと言ってくれた。
光の騎士 の人達が手伝ってくれるなら勝てる!
「私達もいますよ。」
後ろから声をかけられて振り返ると、貴族代表の人達がいた。
声をかけたのはセプンテント帝国の二大
貴族の1人、“ツカ・エナイ伯爵”だった。
貴族達は豪華な鎧を装備しており、沢山の従者を連れていた。
「この度、我々“貴族”も勇者様と共に戦います。」
ツカ・エナイ伯爵はお辞儀をしながら言ってくれた。
彼の後ろには貴族とは違って体がデカく覇気を感じざる存在をして、使い古された鎧をした人が嫌な顔をして立っていた。
「“リュンクス”伯爵、貴方も挨拶を…」
リュンクス? 確かマオさんも同じ名前だった…マオさんのお父さんかな?
「エナイ伯爵よ、戦う事より。民を避難させるのを優先にした方がいいと思うが…」
リュンクス伯爵がエナイ伯爵に提案をだす、しかしエナイ伯爵は鼻で笑い首を振った。
「リュンクス伯爵、まずは敵を倒す事が優先です。 民も自分の身は自分で守る義務がある。 それに貴方の部下は半分しかいないようですが?」
「息子を筆頭に民の避難を先導させている。」
「まったく、すぐに連れ戻して下さい。 貴方の隊が我々貴族の中で半数以上を占める戦力なんですから。」
そう、二大貴族であり国民に一番支持が多い“レオ・リュンクス伯爵”は、貴族の中で多くの兵を持ち、さらに一番広い領地を持つことを許された人物である。
息子は“タイガ・リュンクス男爵”で、彼もまた国民からの支持を受けており、戦略・戦闘に優れており将来は父と同じ“元帥”になるのではと噂される。
「国民があっての国だ。 民の前に立って動く事が帝国から授かった地位“貴族”の務めであり“誇り”だと儂は思う。
それに、民を守らず自分を守る人間に誰がついて来る? この際はっきり言っておくが、儂らは貴族の“誇り”を重視しているが、お前さんの“誇り”とやらは自分の糞くだらない“プライド”を守る為の物だ。
だから、無理だエナイ伯爵よ。」
リュンクス伯爵は当たり前の事を言ったようにエナイ伯爵を睨みつけながら言った。
「い…いや、私は…」
「確かエナイ伯爵の息子は“騎士”だった筈だ…どこにいる? 儂が聞いた情報では“避難する民を押しのけて逃げて行った”と聞いているぞ?」
「…!?」
言葉を詰まらせたエナイ伯爵に追い討ちをかけるリュンクス伯爵だった。
「大丈夫です! リュンクス伯爵、僕が必ず“皆さんを守ります”!」
横槍をいれるようだけど僕は誇らしげにリュンクス伯爵に言った。
リュンクス伯爵は僕をまじまじと見て口を開いた。
「いいか小僧、“必ず守る”と言うからには必ず“証明”しろ。
口で言うのは簡単だ…「大丈夫です! 僕が全身全霊で守ります。」……まぁ、いい。」
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なんだこの小僧は…
勇者として召喚された事にいっさいの苦情を言わずにまるで、それが当たり前のように言いやがる。
正直、信用できん。
(父上…)
お! タイガからの念話か…
(どうだ避難の方は…)
(完了しました。 “マオ”も避難させました。「私も戦う」と言ってましたが眠らせて母親と一緒に“船”に乗せるように手配をしました。)
(そうか、すまないな…お前も避難してもいいんだぞ。)
(いえ、僕はまだ貴方に試合で一度も勝ってません。 僕が父上を倒すまで生きてもらわないと。)
(がはははっ!! ならお前も生きておれよ!)
儂は笑いを噛み締めながら列に戻った。
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「見えてきたぞぉ!!」
日が沈み夕食を食べていた時に、望遠鏡を見ていた兵から知らせる声が上がった。
城壁を登り目をこらして見ると地平線に白い人型がいる。 あれが“ゴーレム”か…
「嘘だろ…」
まだ、望遠鏡を覗いている兵の声があがった。
そして、次の瞬間彼は大きな声で叫んだ。
「“白いゴーレム”の後ろに大量の“白い悪魔”です!! 数はおよそ一万っ!!」
白い波と思える大群が帝都アルカイダに迫ってきた。
〈戦力〉
・帝都アルカイダ
勇者3人(一名待機)
兵士8,900人
・魔物side
疫病泥巨人1体
マーガ10,100体(近くの村より補充した)
???1体




