目覚め
【“怪物工場”を獲得しました。】
【“貪欲な野望”を獲得しました。】
【“混沌の使者”を獲得しました。】
【肉体に異常を感知、修復します。】
頭の中でそんなメッセージを聞いて目が覚める。
生きてる…
そういえばと思い胸元をみると矢や剣でつけられたはずの傷後がなくなっていた。
立ち上がり周りをみると兵士達はおらず村人の死体だけだった。手元には黒かった筈のガラス玉が割れて透明になっていた。
【特別サービスで衣装“学ラン”を獲得しました。装備しますか?】
再び頭の中でメッセージが聞こえる。
“学ラン”ってなんだ?
「とりあえず“承認”」
そう言うと僕の服装が変わりあっちの“彼”と同じ服装になった。
「さぁ、世界征服を始めようか…」
僕は服を軽く叩き、笑みを浮かべ兵士達がいるであろうコト村へ歩き始める。
村に向けて歩いていると村の方から此方に来る気配を感じた。
魔法に気配を感じる術があるらしいが、僕は魔法が“使えない筈”だ?
少し考えたが直ぐに答えが分かった。
【スキル“混沌の使者”:身体能力を上げる。】
おそらくこのスキルというもののせいだろう。念の為 に他のスキルも確認しよう。
【スキル“怪物工場”:ポイントを使用して魔物を作る。または生物を“凶化”する(凶化には噛みつくか掴んでください。)】
【スキル“貪欲な野望”:殺した相手の才能を奪う事が出来ます。“怪物工場”で作成した生物が殺しても奪えます。】
……うん、反則レベルだね。
おや…どうやら本当に前から誰か来るな。
僕は姿を隠して見学することにした。
「まったく、なんでこんな事をしないといけないんだ?」
兵士が2人、愚痴を言いながらやって来た。
「なんでも、領主様が気に入った女が村を出たのを止めなかった報復らしい」
「あんなに女がいるのにか? 羨ましいな。」
「まぁ、いいじゃあねぇかあっちに殺した村人がいるんだ金目の物でも拾って売れば奴隷でも買えるじゃねぇか?」
「ああ…そうだグシャ!!」
しまった、ムカついて頭を“踏みつけて”しまった。
それにしても人間ってこんなにも脆かったか?
「えっ? ジョンっ!! てめぇ何者だっ!!」
兵士が剣を抜き僕に向ける。
「名乗る必要があるのかい?」
おそらく僕は笑っているのだろう…凄く“楽しい”
「ひぃ…ヒャアアアアアアアアっ!!」
兵士が悲鳴を上げ背を向けて走り出した。
「おいおい、逃げないでよ。」
僕は足に力を入れて地面を蹴り距離を縮めて彼の腕を“掴んだ”。
「離せっ!!」
「酷いな〜君は友達が殺されたのに仇をとらないのかい? まぁいいや…実験に付き合ってよ。」
そう言って僕は…
「“怪物工場”」
彼にスキルを使った。
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俺達は領主様の命令でコト村に火を放ち村人を皆殺しにした。
村人達の死亡を確認した後、火が森に移り山火事にならないように消火活動をしていた。
その時、部下の悲鳴が聞こえて俺達は悲鳴がした方を見た。
確か逃げた村人達を待ち伏せした場所の方角だ。生き残りでもいたのか?
俺は部下2人に調べるように命令し、部下は剣を構え松明を持ち行く。
部下2人が森の奥に進むのを見ていると、突然彼等が持っていた松明が“消えた”。
「何かいるぞっ!! 構えろっ!!」
俺は部下達に命令をし、兵は弓や剣を構える。
俺は息を飲み込み先程の出来事は“生き残った村人の反撃”か“魔物の襲撃”かと予測をする。
魔物ならこの地にはゴブリンか狼しか生息しない筈だと考える。
その時だった。
部下が消えた森から“それ”が出てきた。
“それ”は全身が白く全長2メートルぐらいで人の形をしていた。口には犬歯のみで涎をたらしていて目がなかった、“それ”は俺が見たことがない魔物だった。
「………ギ……」
部下達も見た事がないらしく戸惑いの表情をしていた。
先程の部下2人をコイツが襲ったのか?
そしてコイツはなんだ?新種のゴブリンかオーガか?
俺は頭の中で様々な憶測がとぶ。
「さぁ始めようか…」
森から声がした。
「ギゃっハハハハハハっ!!」
その声が聞こえると同時に目の前にいた“それ”は不気味な声で笑いながら襲ってきた。
「放てっ!!」
すぐに俺は弓兵に命令をした。弓兵は弓を放ち矢は“それ”に刺さるが“それ”は止まらなかった。
“それ”は弓兵の一人を襲い周りの兵士は剣を“それ”に振る。
一人の兵士が“それ”の首を切り落とし“それ”は動きを止める。切られた首からは赤い血が噴水のように吹き出ている。
襲われた弓兵は噛まれただけらしく手当てするようにと指示をした。
しかし、急に噛まれた弓兵が苦しみだした。
“あれ”には毒があるのか?と首なしの死体を見ていたが異変が起きた。
弓兵の髪がどんどんと抜け体格が大きくなる。そして肌が白くなっていく。“あれ”のように…
「ギ…ギャハハハハっ!!」
元弓兵だった者はついに“あれ”と同じ化け物になってしまった。
「嘘だろ…」
俺は思わず呟いた。
何故なら元弓兵の背後の森から化け物が“2体”現れたからだ。
化け物達は笑いながら俺達を襲い始めた。
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僕は離れた場所で兵士達が僕が作った怪物“マーガ”に襲われているのを見ていた。
“怪物工場”のポイントは何ポイントあるのかと初め見た時は1000ptだったが、現在は510ptだ。
どうやら凶化したらポイントは増えないのだと分かる。
【“マーガ”500pt
スキル“感染”:人間を凶化した怪物、噛みつかれた生物は凶化される】
これを見るとポイントについては初めに踏みつけた兵士が+10ptで凶化した兵士で-500ptっていう計算だ。
一人のポイントは10ptなのか?
それを検証しようとマーガ“達”に兵士の捕獲を命令する。
しばらくすると増えたマーガ達は笑いながら兵士を3人連れてきた。
「助けてくれっ!!」
「止めてくれっ!!」
「殺してくれ…」
うん…1人目は昼間に領主の後ろにいた奴で2人目は僕に止めれを差した奴、3人目は指揮をしていた兵士長かな?
「お…お前はっ!!」
「やぁ、兵士さん君に殺された村人だよ〜、ジョナって呼んでね。」
2人目が僕に気づいて驚愕の顔をしたので軽く冗談を混ぜた自己紹介をする。
「じゃあ、さっそく…」
そう言って僕は1人目の肩を掴む。
「ひっ…」
掴まれた兵士は怯えるが僕は…
ゴキっ!!
「……っ!!ギャアアアアアアアっ!!」
兵士の鎖骨を握力でへし折った。かるく握ったのに凄い馬鹿力だな。
しばらく観察をしていると兵士は動かなくなる。
【10pt獲得しました。】
メッセージを確認すると僕は確信をする。
「ちゃんと死んだら加点されるんだな〜」
口に出して確認し、残りの兵士をみる。
兵士は先程の出来事を見ていた為、表情は完全に恐怖の色に染まっている。
「さて、君達に聞きたい事があるんだけど。」
「「はいっ!!」」
うわハモった。
「君達は領主であるピッグ・レッド男爵の兵士で間違いないね?」
2人は頷く。
「じゃあ、君達にチャンスをあげよう。2人で戦って生き残った方を僕は殺さない。」
そう言って僕は彼等を見て笑顔を向ける。
兵士長は何かに気づいたようで、兵士の 方は希望に満ちた瞳をした。
「じゃあ、始めて…」
そう言うと2人は行動に移った。
決着はすぐについた。兵士長が動かなかった為だ。彼は合図と共に目をつぶり、兵士は彼の首を切り落とした。
「やったっ!!」
兵士は歓喜の声をだす。それを僕は拍手で讃える。
「おめでとう」
「本当に殺さないんだよな?」
「ええ…もちろん殺しはしない。」
「えっ…」
兵士の表情は固まる。
「ギギギ…」
兵士の後ろで唸り声がする。
「君は“殺さない”」
そして、僕は“マーガ”に襲われる兵士を観察するべく座る。
森に悲鳴が響きわたる。