聖光教会
それにしてもどうやったんだ?
見たところ剣を持ったショートは右腕しか斬っていない…
ロングの少女が持つ籠手か?
しかも兵士達が傷一つ付かなかった岩ゴリラを簡単に倒したし、ていうか歌を歌う意味あるの?
武器も魔導武器じゃないみたいだし…
様々な疑問に持ちながら観察していると人々が集まって来たようだ。
僕は野次馬の如く人々の中に溶け込む。
「皆さん安心してください。魔物は我々“可憐聖歌隊”が倒しましたっ!!」
ロングがアピールを始め、さらに聖光教会の神官がやってくる。
神官は三人いて明らかに「あなた達の寄付金で食ってますよ〜」という顔をしている。
神官達の後ろには白衣を着た女性がついている。
神官の1人が口を開き言う。
「皆さん、ここにいる“可憐聖歌隊”は我々“聖光教会”の者達です。
“聖光教会”は信者である皆さんの平和を守る為にあります。
聖なる光を信じる者だけが……」
糞長い話をする神官の話を簡単に言うと…
“聖光教会を信じる者が救われる”
“さらに教会に寄付をすると良いことあるよ”
“信じないと後悔するよ?”
と、遠まわしに言う。
すると、それを聞いた人々はちらほらと教会へ行き始める。
この世界の一番強い宗教“聖光教会”
過去に勇者を召喚し世界を救った業績を認められ、“聖光国”という“聖光教会”の国を作る事を認められた宗教だ。
しかし、時が経つにつれ教会は沢山の信者を増やし巨大な力を持ってしまった。
教会の一言が国を滅ぼす程に…
過去にとある国を聖光教会が邪教国と決めつけその国を除く連合軍作り滅ぼされたという。
何故その国を邪教国と決めつけたのは不明だ。
まぁ、たぶん聖光教会の言うことを聞かなかったせいだろう。
僕は教会へ行く彼等を見て
「「哀れな羊だな…」」
と呟いた。
あれ? 誰かとかぶった?
声の主を探すと岩ゴリラの遺体を調べている白衣の女性がいる。
彼女も自分と同じ事を言った僕を見る。
「君もそう思うかい?」
「ええ…」
そう言うと彼女は岩ゴリラの方へ視線を向ける。
「ふむ、皮膚は岩のように固く血は赤い…服を着ているのを見ると亜人…いや…」
彼女はブツブツと言いながら岩ゴリラを調べている。
「博士。」
神官の1人がやって来る。
「これが“博士”が作った魔物ですか?」
「いや、私のはまだ完成していない…」
「と言う事は、これは“本物”ですか。まぁ、“可憐聖歌隊”が倒せて良かった。おかげで、また“信者が増える”」
おっと…ヤバい話をしてる。
僕はコッソリと隠れ彼等の会話を聞く。
「じゃあ、私の“魔物”は要らないですね?」
「いえ、まだ作ってください。このような“演出”をしないと人々の財布の紐が緩みませんから。」
「分かった。じゃあこの魔物の遺体を私の研究室へ持っていくようにしてくれ。」
“ヤバい”会話が終わり神官は戻っていく。
神官がいないのを確認した女性は僕の方へ顔を向け、
「“そこの少年”」
彼女に呼ばれる。
ヤバい会話を聞いたから口封じかと思ったが(返り討ちにするけど)
まぁ、神官と話している時に僕の事を言わなかったし大丈夫だろうと思い彼女の前に姿を出す。
「大丈夫だ。神官が現れる前に君が認識されない魔法を使っているから、神官は君がいた事すら知らない。」
「へぇ〜、じゃあなんで僕を助けたの?」
「君だろ? “情報屋を使って『私』を探していて”“ラエティティアの卵が手に入るルートを持っている”のは。」
「え…探しているのは“Dr.ルーナ”なんですけど…」
「私が君が探している“Dr.ルーナ”だ。」
え…嘘だろ?