歌の街ルアーノ
【“豚野郎”が人間に戻りました。】
【“ラエティティアの卵”が孵化しました。】
【条件を満たしましたので“魔虫系統”のモンスターが作成可能になりました。】
【“ラエティティアの卵”を孵化させたので、“ラエティティア”を作成できます。】
そのメッセージを聞いた瞬間、思わず口に入っていた珈琲を吹き出してしまった。
僕の毒霧をもろに受けたタクヤは「目がっ!!目がっ!!」と言って転がっている。
それにしてもラエティティアが孵化するなんて…始めは“ピッグ・レッド男爵”を“欲望の書”でモンスターにして、“豚野郎”(命名僕)がやられたら自爆させるつもりだったのに……
【“ラエティティア”1000pt
スキル“歌姫”
一匹が国を滅ぶ力を持っている恐ろしい魔虫系統で最強に分類されている。
スキル“歌姫”は声を歌にすると、魔法を使う事ができる。】
だけど、“豚野郎”を人間に戻すなんて、勇者の能力か? それとも、無理やりモンスターにしたからか?
その場にいなかったから分からない…
ここに来る途中で勇者が乗った馬車に遭遇した時は、勇者を見て「コイツ本当に勇者か? 使えるの?」と思ったけど〜…
まぁ、いいか口封じを含めてラエティティアの卵を着けたんだし、しかも、何故か孵化もしたから男爵は死んだだろう…
「おい、ジョナ…」
「どうしたんだい?」
「俺に何故珈琲を吹きかけた?」
「何だよ、昨日サリーと一緒に寝た癖に。」
「なっ!? 」
そう、実はタクヤとサリーは付き合い始めたのだ。隣でいちゃいちゃされると凄くウザい。
しかも宿で男女別に部屋をとったのに夜中にタクヤがサリーの部屋に行ってアンアンするんだぜ。
「もう、死ねよと思う。」
「全部口に出てるぞ。」
「わざとだっ!!」
「わざとかよっ!!」
とまぁ、タクヤに対する妬みは止めておいて。タクヤにメッセージの内容を伝える。
「ラエティティアかよ…」
「あの勇者死ぬんじゃない?」
「いや大丈夫だろ、ユウキはどんなピンチでも“覚醒”して強くなって何かかんだでどんな強敵でも倒すからな〜」
「何それ怖い…」
む〜それだと僕相手でも負けるんじゃないか…
「ちょっと“作戦”を変えるか…」
「“作戦”?」
「うん、まぁ内容は今は秘密だね〜。
そういえばサリーは?」
「寝てる。」
寝てるって…今昼だよ?
「それでジョナ…いつ“帝都”に行くんだ?」
そう、実はまだ帝都アルカイダに着いておらず、途中の街“ルアーノ”にいる。
ルアーノ…別名“歌の街”と呼ばれ聖光教会の支部がある街だ。街角で聖光教会の“聖歌少女隊”が歌を歌って寄付を貰っている。
“聖歌少女隊”は基本的に5人一組で行動しており、彼女達が歌う声には不思議な力があると言われている。
彼女達は全員16歳までの少女で元“孤児”らしい。
裏の情報では聖光教会の上層部が彼女達を使って有力な貴族達に集金活動…売春をさせているらしい。
そんな街に僕達はいる。
「うんとね〜、“実験”と“スカウト”かな〜
1人だけ仲間にしたい人がいるんだよね。」
「誰だ?」
「それはその時までお楽しみに〜」
その時だった…
きゃああぁぁぁっ!!
外から悲鳴が聞こえてきた。
それを聞いた僕は顔を笑顔にしながら立ち上がり“見学”をするべく外へ出る。