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世界征服を始めました。  作者: 袋烏
第2章 勇者編(ユウキ)
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勇者ユウキの大冒険(2)

マオさんが一時的に仲間に加わり僕達はピッグ・レッド男爵の城を馬車に乗り目指している。


「そうか、君達は魔物退治に行く途中だったのだな。」


「そうなんだ。危険でも魔王の軍勢を食い止めるのが勇者の義務だからね。」


僕はマオさんにこれからの説明をする。


マオさんもそれに同意してくれる。


「マオさんは武器を持っていないのですか?」


「持ってるぞ、ほれ。」


そう言って彼女はショベルを僕に見せる。

ショベルって…


「私はたいていの物なら武器として扱える。」


「あはは…すごいですね。でも貴方は僕が守りますので僕の後ろにいて下さい。」


僕はマオさんを真っ直ぐ見つめる。

マオさんは複雑そうな顔をして他の皆は


「(強敵っ!!)」


僕はよく聞こえなかったけどヒソヒソと話していた。





ようやく男爵の城門前に辿り着く。

僕達は馬車から降り武器を構える。


「すごいな…ここに着くまで一度も魔物に遭遇していない」


マオさんが呟いた。


「あらいつもの事ですわ。」


「皆、僕の後ろに…行くぞっ!!」


僕達は城門を開け城内に入っていく。


見ると情報通りの姿をした魔物がいた。


「コイツらが“白い悪魔”…気持ち悪い…」


リンさんが率直な感想を言う、僕もそれに同意する。


「ギャハハハハハっ!!」


“白い悪魔”が襲ってくる。


「ルナっ!!」


「……分かった…『聖なる矢よ、敵を貫け“ホーリーアロー”』…」


ルナが詠唱をすると無数の光の矢が現れて、“白い悪魔”目掛けて放たれた。


次々と“白い悪魔”は光の矢を受けて動かなくなっていく。

しばらくすると、動く“白い悪魔”がいなくなった。


「…終わった……撫でて…」


ルナが近寄りおねだりをしてきた。


「ありがとうルナ。」


マオさんの前で少し恥ずかしがったけど撫でてあげる。


「ムー…」


ルナは少し不機嫌になったなんでだろ?



「ユウキ様っ!! あれっ!!」


マリアが前方に指を差す。

見るとそこには沢山の女性達がいた。


彼女達は虚ろな目をしており、さらに露出が高い服装をして槍や剣を持っている。


「なんだ? 他の村の連中じゃあないか。」


マオさんが言う。

どうやら、捕まった村の人達みたいだ。

しかし、マオさんは構えを解いていなかった。


ブツ…ブツ……


ん? 耳をすませると彼女達は何かを呟いているみたいだ。

彼女達が近づいてくるうちにその声はよく聞こえるようになる。


「「「ピッグ・レッド様の為…」」」



彼女達は男爵の名前を呟きながら襲い掛かってきた。


「うわっ!?」


僕は彼女達が振り下ろしてきた剣を聖剣で受けながら後退するがさらに槍で突いてくるという連携プレーに驚く。


「何ですの!? 平民がこんなに強いなんてっ!!」


マリアやリンさんとルナも苦戦する声が出る。


「…ムー……」


ルナは攻撃魔法を使おうとするが、僕がそれを止める。


「駄目だルナ! 彼女達は操られているんだっ!!」


それを聞いたルナは防御魔法に切り替える。


マオさんはっ!!


僕はマオさんを見る。


「はっ!!」


マオさんは目の前にいる女性に掌手を打ち込んでいた。


掌手を受けた女性は倒れ口から何かを吐き出す。

それは拳くらいの大きさの芋虫だった。


確か、マリオネットワームっていう魔虫で寄生された人物は鳥のすり込みみたいに初めに見た生物を愛人と思い込み、その生物の為に行動させる別名“奴隷虫”と呼ばれた恐ろしい魔虫だ。

確か絶滅した筈だ…


「ここは私に任せろっ!!」


マオさんが叫ぶ。しかし僕は


「駄目だ! マオさんを置いていけないっ!!」


「私ならマリオネットワームを吐かせる事ができるから行けっ!!」


「う…分かりましたっ!! すぐに助けに行きますので頑張って下さい。」


僕達はマオさんと別れ階段を上った。









僕達がピッグ・レッド男爵を探していると食堂から音が聞こえてくる。

そーと食堂の中を覗くと、“巨大な生き物”が食事をしていた。


洗脳された村人達で忙しそうに料理を運んでいる。


「何だ…コイツは…」


僕は思わず口に出してしまい、それを聞いた“巨大な生き物”が食事を止める。

そして、こちらに顔を向ける。


「豚ですわ…」


マリアが呟く。

確かにその“巨大な生物”は豚の顔をして腹には沢山の脂肪がついた巨人だった。


「……気をつけて…」


ルナが僕に言う。


「…あれは、『邪神の遺産』の…一つ…『欲望の書』で…魔物になった…“元人間”……強力な邪悪の力を感じる。」


あれが人間だって…


「ていうことは“あれ”が“ピッグ・レッド男爵”だっていうのかい?」


僕は豚巨人を指差してルナに聞く。


「たぶん…そう……」


「ピッグ・レッド男爵っ!! 帝国を裏切り魔王の手下になったかっ!!」


リンさんが剣を豚巨人に向ける。

すると豚巨人は体を此方に向けて…


「ブヒィィィィっ!!」


鳴き声をあげて机を持ち上げ振り回しながら此方に走ってくる。

リンさんは豚巨人の攻撃を見切り懐に潜り込み

お腹を一閃にした。


「なに!?」


しかし剣は豚巨人の腹を斬らずに脂肪に埋まってしまった。


「ブヒャァァァッ!!」


その一瞬の隙をついて豚巨人はリンさんを張り手で吹き飛ばす。


「危ないっ!!」


僕はリンさんを受け止め声をかける。


「大丈夫? リンさん」


「あわわわわ…ユウキ殿…」


「どうしたの!? 顔が赤いよ?」


「だ、大丈夫で、です…」


リンさんはそう言って僕から離れる。

大丈夫かな?


「ブヒャハハハハッ!」


豚巨人は僕達を見て笑いだす。


許さない…僕の仲間を笑うなんて…


僕は聖剣を強く握り締める。

すると聖剣は僕の心を察したのか輝きを放つ。


「ブヒ?」


「うおぉぉぉっ!!」


僕は聖剣を構え走りだし、豚巨人の近くで飛び上がり聖剣を上段に構える。


「食らえっ!! 『ジャスティス・ブレイカー』!!」


聖剣を豚巨人に振り下ろす。


しかし、


「ブヒャっ!!」


「なっ!?」


僕の『ジャスティス・ブレイカー』は豚巨人の白刃止めによってふさがれた。


強いっ!!

豚巨人は白刃止めをした腕をひねり蹴りをくり出そうとしていた。


「ユウキ様、危ないっ!!」


マリアがレイピアで攻撃してくれたおかげで豚巨人は聖剣を離し、僕は蹴りを避ける事ができた。


「ありがとう、マリア!!」


「えっ、(えへへ褒められた〜)」


マリアが最後に何を言ったのか聞こえなかったけど、僕は聖剣を構え豚巨人と対峙する。


「ブブブヒ〜ブヒャァァァッ!!」


豚巨人が吠える。あまりにも大きな声だった為、つい耳を塞いでしまう。


「……『聖なる癒やし』」


ルナが回復魔法をかけてくれる。


皆で戦えば勝てる!!


僕がそう確信すると、食堂に人の気配が増えてきた。


見ると村人達だった。今マオさんが相手している人達じゃなく全員裸で武器を持たずに豚巨人に集まる。


「なっ…」


思わず驚きの声が出る。

豚巨人に集まった女性達は豚巨人にしがみつき、まるで鎧のようになっていく。


最後に巨大な斧を運んできてそれを豚巨人が持つ。

そして、ついに女性達でできた鎧が完成する。


「ブッヒッヒ〜、ブヒャァァァッ!!」


人鎧を纏った豚巨人は笑いながら此方に走ってくる。


「なんて悪趣味な…」


マリアの言葉にリンさんとルナが同意するように頷く。

リンさんが構える。

もし、攻撃をしたら彼女達がっ!!


「皆攻撃は駄目だっ!!」


「しかし、ユウキ殿!」


「ルナ、防御魔法を頼む!」


「…分かった……」


ルナの防御魔法が僕達を包み込む。

それを見た豚巨人は…


「ブヒッヒッ〜!」


笑いながら斧を振り回す。

斧のラッシュを防御魔法が防ぐ。

しかし、この防御魔法は長くは保たない。

ルナの表情がどんどん辛くなっていく…


もし、防御魔法が消えたら僕は鎧の彼女達を殺さないといけないのか…果たして僕はできるのか?



「もう…壊れる……」


ルナが辛そうに言う。


僕は決心をして聖剣を構える。



その時、廊下側から扉が開き誰かが入ってきた。


「なんだコイツ…“男爵”の気配がするぞ?」


マオさんだった。


豚巨人はマオさんを見て、


「ブヒャァァァッ!!」


声をあげながら彼女に向かって走り出した。



「マオさんっ!!」


僕は叫び豚巨人を追う。


豚巨人がマオさんに斧を振り下ろしす。


ドシンっ!!


斧が地面にめり込む音を聞き


「マオさぁぁぁん!!」


僕は……マオさんの名前を叫んだ。


「なんだ、呼んだか?」


マオさんの声がして見上げる。


豚巨人の頭にマオさんが立っていた。


「さてと、まずはその邪悪な気配を消すか。」


「ブヒャっ!?」


マオさんは頭の上で空手みたいな構えをする。

そして…


『空龍掌っ!!』


豚巨人の頭に掌手を放った。


「ブ…ヒ」


すると豚巨人の耳や口、鼻など穴という穴から黒い煙が出てくる。


それと同時にどんどん体が小さくなっていく…


「マオさん…何をしたんですか?」


「ん? 私の“気”をアレに打ち込んだだけだが?」


「“気”ですか?」


「まぁ、実は初めてギルドの依頼で行った遺跡に“神器”みたいのがあって、それが私の体に入っているせいで私の“気”が“浄化”したんだろ…

まぁ、直感で出来ると感じたし。」


「うぅ…吾が輩は……」


黒い煙を出し切った豚巨人はピッグ・レッド男爵に戻った。

男爵の周りには鎧だった女性が倒れている。


「ピッグ・レッド男爵っ!! あなたを国家反逆者として逮捕します。」


リンさんが男爵に剣を向ける。


「なっ!? 違う!! 吾が輩は反逆者ではないっ!!」


「では何故、貴方は魔物になったのですか? 証拠として“マリオネットワーム”がありますよ? “魔虫の所持”は許可がないと極刑ですよ?」


「“マリオネットワーム”だと!? それは絶滅した筈だっ!! それに吾が輩は“あの男”に……」


男爵が突然動かなくなる。


「アバババババババ…」


ついには痙攣し口からは泡を噴く


「男爵?」


リンさんが心配そうに声をかけるが次の瞬間


ピキッ…


男爵の背中に亀裂がはしり男爵の中から脱皮をするように“それ”は誕生した。


“それ”は虫の羽が背中にあり上半身は美しい女性で下半身は虫の腹をした生物だった…



それを見たマオさんは、




「“災厄の歌姫”…」


とその生物のあだ名を呼ぶ。




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