勇者ユウキの大冒険(1)
セプンテント帝国の帝都アルカイダにある帝国皇城の訓練所で僕は剣の訓練を受けていた。
「ユウキ様〜」
僕を呼ぶ女性の声がして振り向くと、そこには綺麗な金髪に可憐な女性が走ってくる。
「どうしたのマリア? そんなに慌て。」
だけど、マリアは慌てながら僕に告げるそれは驚愕の内容だった。
「大変ですわ! “光の騎士”の“ミカエルさん”が行方不明になったようですの!」
「ミカエルさんが行方不明だって!?」
ミカエルさんとはよくギルドで会い、たまに一緒に依頼を受けた事がある。
「何でもピッグ・レッド男爵が管理する領地に怪物が現れて調査に行ったきり戻ってこないらしいですの。」
「怪物だって!?」
「ええ…先程お父様が連絡を受けてユウキ様を呼ぶようにと…」
「皇帝陛下が…分かったすぐに行く。」
大変だ…すぐにでも行きたいけど皇帝陛下が呼んでいるから…くっ!!
無事でいて下さいミカエルさん…
(ジョナ「死んでるけどね〜(笑)」)
僕はすぐにでも行ける準備をして皇帝陛下の下へ向かう。
謁見の間に入ると知り合いがいた。
リュウとセイヤにアイがいて裏切り者の僕の親友タクヤを除きこの世界に召喚された勇者が揃った。
「よう、ユウキ。」
茶色の髪をしたリュウが話しかけてくる。
「やぁ、リュウ…あの子達は元気?」
あの子達というのはリュウが買っている奴隷の女の子の事だ。
「ああ、性奴隷達か? 毎晩可愛がっているぜ。」
「僕達は勇者なんだだから…」
「また説教か?」
「あんた達静かにしなさいよ。」
黒い髪をポニーテールにしたアイが僕達を叱る。
「静かにしてよ…」
僕らの中で一番若いセイヤが呟く。
「皇帝陛下が参られる、皆の者頭を下げいっ!!」
大臣の皇帝陛下の登場の合図を受け僕達は頭を下げる。
「よい、頭を上げなさい。」
皇帝陛下の許可を得て頭を上げる。
王座には白くなった髪と髭をした50代の男性が座っていた。
皇帝陛下からは威厳を感じる。
「さて…勇者達よ。聖剣のユウキは娘から聞いたと思うが、ギルドの“光の騎士”の創立者の1人である“ミカエル・ママッケネン”が行方不明になった。」
「「「何だって!?」」」
僕以外の三人が驚き声をだす。
「ふむ、実は亜人の娘からの話によれば見たことがない魔物が現れピッグ・レッド男爵の城を襲ったようだ。後で魔物の詳しい外見について大臣に聞くがよい。
でだ、それを聞いたミカエルが部下を連れて調査に行ったきり戻ってこないのだ。
そこで君達の内の誰かがピッグ・レッド男爵の城へ行き、魔物を討伐して来て欲しい。
おそらく、魔王の出現の前触れだ…
報酬はたんまり出す。」
「僕に行かせて下さい。」
僕は真っ先に名乗りをあげた。
それから1時間後、僕と仲間は馬車に乗り男爵の城へ向かった。
馬車にはマリアの他に聖光騎士であるリンさんとギルド長の娘であり皇帝魔術士(皇帝陛下に認められた者にしか与えられない称号)であるルナが乗っている。
「ユ・ウ・キさん」
「マリア近いよ〜」
「………私も…」
「ルナ殿っ!! うぅ…えいっ!!」
「わっ! リンさん危ないっ!!」
うぅ…ミカエルさん待っていて下さい今助けに行きますっ!!
(ジョナ「ミカエルさんは死んでいます。ミカエルさんは死んでいます。大事な事なので二度言いました(笑)」)
次の日、僕達を乗せた馬車はピッグ・レッド男爵が治めていた領地のコト村に辿り着いた。
途中で出会った旅人三人に領地の現状を聞いていたが…
僕はコト村を見て思わず呟いた。
「酷い…」
村の家は燃えた後で所々に村人だった物が転がっている。
「全滅ですね。」
リンが呟いた。
「………誰かいる…」
ルナが言うと指を指す。指を指した方向には人影が一ついた。
「生存者かな?」
僕はそう思い近づいていく。近づいていくにつれ人影の人物が見えてくる。
その人物はこちらに背を向けており分かる特徴は長く綺麗な黒髪をした女性が道具で穴を掘っている。
「あの〜すいません。」
「何だい?」
彼女は作業を止めこちらを振り返る。彼女の顔を見るとあまりにも美しい女性だったので僕は思わず見とれてしまった。
彼女は僕の世界でいうと大和撫子のイメージが印象的だ。
「おい、私に何か用か?」
「……えっ? ああその…お名前は…?」
「名前を聞くなら自分から名乗るべきだぞ。」
彼女に指摘され顔が熱くなるのを感じる。
「ちょっと、そこの平民っ!! ユウキさんが聞いたんだから名乗りなさいよっ!!」
マリアが彼女に叱る。
「何で赤の他人に自分の名前を言わなければならないのだ?
敵かもしれないのに」
そう言って彼女はショベルをマリアに向ける。
「ちょっとマリア落ち着いて、今回は僕に非がある。
すいません、僕はセプンテント帝国で勇者をしているユウキです。
彼女はマリアでこの帝国の皇女です。
次にそこにいる赤い髪をした人はリンさんで聖光騎士です。
そして、水色の髪の女性はルナで皇帝魔術士です。」
「これは皇女様とは知らず申し訳ありません。」
僕の説明を聞いた彼女はマリアに頭を下げる。
「では私も名乗ろう。私の名前はマオ・リュンクスだ。ギルドランクはCの冒険者だ。このコト村出身だ。帝都にいる時にコト村が襲われたと聞いてやって来たんだ。」
「そうなんですか…」
「もし“ジョナ”っていう男を見つけたら教えて欲しい。」
「兄弟ですか?」
「いや、私の想い人だ…」
それを聞いた時、僕の胸が苦しくなるのを感じた。
「あの、もし良かったら僕達と一緒に行動しませんか?」
そう僕はマオさんに気づいたら言っていた。