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雨宿り

作者: 尚文産商堂

「なんなのよ、もー!」

私は、急に振りだした雨に向かって悪態をつきながら、運良く見つけた駄菓子屋へ入った。

「いらっしゃい」

そこにいたのは、同級生の男子だ。

「あんた、そこでなにしてるの」

私がハンカチで濡れたところを簡単に拭きながら聞くと、困った顔して答えてくれる。

「まあ、店番かな。親が買い物から帰ってくるまでの間は、ずっとここで店番さ」

パイプ椅子に座った彼は、近くに漫画の雑誌を置いて、私をじっと見つめていた。

「そこにいても、また雨にぬれるだろうし、中入れよ」

そういうと、私を中へと引き込んで、それから白いタオルを投げてきた。

「ほら、これで髪拭けよ。それに、ついでに何か買っていって」

「…それが狙いか」

「もちろん」

私は彼の目的を聞いて、すこしほっとしてしまった。


買ってと言われても、何も買いたくはなかった。

「雨あがるまではさ、店の中好きに見て回ってて。どうせこの雨だから近所の小学生も来ないだろうし」

「ん、わかった」

私は彼の提案に素直に従うことにした。

適当にぶらぶらと店の中を歩いていると、昔よく食べた駄菓子を見つけた。

「これいくら?」

「それは10円」

つまみ上げたものを彼に見せてみると、すぐに答えてくれる。

「じゃあ、これもらうね」

「10円な」

手が出てきたから、そこに10円玉を一枚置く。

「ありがとうございます」

外は相変わらずの大雨だから、店の中で食べる。


「…いつになったら止むのかなぁ」

外の大雨を見ながら、私はつぶやいていた。

「今日はずっと振り続けるんじゃなかったかな」

「マジで」

携帯を取り出し、彼が確認をしてくれる。

「そうそう、午後6時ぐらいまでは降る予定だね。あと1時間ぐらい」

「そっかぁ…」

1時間ほど店中を見ていてもいいが、もう見飽きるほど見てしまったため、暇になっていた。

「まあ、なんだ。もうちょっと見て行けよ」

彼に言われたから、私は雨が上がるまで、店の中にずっとい続けた。


「上がった?」

「そうみたい」

6時少し前、きれいな夕焼けを目にすると、私は店をやっと後にすることができた。

「また明日」

手を振ってくれている彼に、私は手を振りかえす。

「また明日ね」

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