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ただいまと帰る場所  作者: 霜波音葉
和葉の事情。
19/28

和葉の事情。2

久しぶりの『ただいまと帰る場所』です。



「舞台のチケット?」


夕食を済ませ片付けも終わり、まったりとした時間が流れている時、

智尋はさっそく和葉に話を切り出した。


「はい。母も和葉さんが作った曲の舞台を見てみたいと言ってたので、

 迷惑じゃなければチケットを取って頂けないかと…。」


「マジ? 取る取る、何枚でも。大歓迎っ。」


和葉は嬉しそうに智尋の願いを承諾した。


「ありがとうございます。」


「いやいや、礼を言うのはこっちの方。

 劇団側の人間としては、一人でも多くの人に見てもらいたいからね。」


和葉はさっそく仕事部屋からスケジュール帳を持ってきて、

日程の確認を始めた。


「今月末に公演予定があるんだけど、その時でいいか?

 智子さんと智尋の都合のいい日のチケット取るから、智子さんに確認してくれるか?」


「わかりました。聞いときますね。」


「おう。この舞台、再演なんだけどさ、結構評判が良いやつなんだ。

 美咲もこの舞台は好きで何回も見に来てる。2人も気に入ってくれたら嬉しいなぁ〜。」


和葉の口から美咲の名前が出たことで、智尋は昼間、穂波から聞いた話を思い出した。


「そういえば、和葉さん。」


「ん?」


「和葉さんの恋人ってどんな人なんですか?」


智尋は軽い気持ちで聞いてみたのだが、和葉は鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。


「なんだ、それ? 俺に恋人なんていないぞ?」


キョトンとしたまま和葉は答えた。


そんな和葉を見て、そういえば…、と穂波の言葉を思い出す。


『本人はそんな関係じゃないって否定…、』


聞いてはいけないことだったろうか?


突然、不安そうになった智尋の顔を見て、

どうしていきなり智尋がそんなことを言い出したのか、和葉はなんとなく思い当たった。


「その話、千華子姉さんか穂波から聞いたのか?」


「え、はい。今日、穂波さんから…。」


和葉は予想通りの智尋の返答に溜息をついた。


「あの2人は、俺と『あいつ』を恋人だと決めつけてるからな。

 事実無根の話だよ、それ。」


「そうなんですか?」


「そう。じゃなかったら美咲が大人しくしてるわけないじゃん。」


自分で言ったことに苦笑しながら和葉は言ったが、納得してしまったら美咲に失礼だろうか?


「ま、今、俺が劇団で働いてるきっかけは確かに彼女だけどな。

 でも、特に異性って意識したことないし、そんな色恋沙汰な仲ではないよ。」


なんでもないように言う和葉は嘘は言ってないだろう。

そして智尋の興味は別に移った。


「劇団で働くきっかけ?」


これって結構、和葉の人生に置いて重大なことじゃないだろうか?

和葉の『今』を決めたのだから。


「ああ。俺、中学の頃からボクシングジムに通ってたんだけど、」


「あ、それ、今日聞きました。その他にも色々習ってたって。」


「うん。なんか色んなことしてたな、あの時期は。

 まぁ、それで夜、よくロードワークとかもしてたんだけど、そのコースの路上で歌、唄ってたんだ。」


それが彼女との出会い。


「ひと休みとして彼女の歌を聞いて、それからまた走る。

 そんなこと繰り返してたら、顔なじみになっちゃって、それでなんとなく音楽に興味持って、

 それでこんな職業についてしまったわけだ。」


ヘラっと和葉は言ったけど、路上で歌を聞いて、それで作曲家にまでなるってすごすぎないか?


「劇団の看板女優やってるだけあって、穂波みたいに人を引き付けるものがあると思うよ。

 そして俺もまんまと引き付けられちゃったわけだ。

 智尋も会ってみれば、たぶんわかるよ。それが彼女の力だ。」


和葉は今、自慢をしている。智尋はその事に少し驚いた。


いつも家族のことを考えて愛情を注いでいる和葉は、家族の自慢をする。

智尋も家族の一員だと認め、智尋のことも誇りに思ってくれている。

これは智尋の自画自賛ではなく、本当にそうなのだ。


そんな和葉が家族以外の人に興味を引かれ、認め、自慢している。



和葉は顔が広いと思う。


突然、和葉が連絡をしても、表向きに文句を言う人もいるが、

最後は結局和葉の頼みを聞き入れ、本気で嫌がる人を聞いたことがない。


それは和葉の人望だ。

和葉にも間違いなく人を引き付ける力がある。


そんな和葉が一目置く人物。


和葉の特別な人間だと思ってもおかしくない。

穂波が『和葉の恋人』と言ってもおかしくない気がした。


どんな人なのか、智尋はますます興味を持った。

次回から、和葉の学生時代の話が書けたらなと思ってます。

それから出来ればもっと早く続きをUPしたいと…(汗)


読んでくれている方々、申し訳ありません。

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