第3話 叫ぶサンコンの母
次の話から、歴史編です
「ヂリリリリリリ!ヂリリリリリリ!」
鳴り響く目覚まし時計が、俺を夢の世界から現実の世界へ引き戻した。
「・・・・うぅ・・・」
「カチッ」
目覚ましを止め俺は再び布団へ入る。
「ねみぃ・・・」
しばらく、そのまま布団の中でうずくまっていた。
時は一刻一刻と進んでゆく。
チク、タク、チク、タク・・・
時計の針がリズミカルに動く音が俺の耳に入って、俺はすこしうざったい気分になり、布団を頭まで被せた。
「うああああああああああああああああああああああああ!!!」
突然、俺は上体を上げた。
そしてそのまま時計の方へ、ゆっくりと首を回した。
「・・・え?」
普通、この状況でベタなのは時間がどんどん進んでいって、遅刻しそうになるパターンだ。
それは、普通のベタだ。
今、俺の身に起こっているのは、
普通にそのベタな状況だよ!!!!!!!!!
何期待してんだお前等!!!!!!
「やべええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!」
少女漫画でありがちな遅刻遅刻と言いながらパンを咥え走る。
まさにその状態であった。
俺が今日起きることが出来なかったのには理由があった。
・・・いや、普段も起きられないのだが、今日は特別な理由があるのだ。
どんなコトにも理由があるのだ。
屁理屈、言い訳、などと言われるが、理由なのだ。
昨日。
行列と戦闘し、大量の汗が流れた俺の体を洗い流す為に風呂に入ったんだ。
俺が浴槽に顔をつけ口からブクブク吹いていた時だった。
ガシャン!ドン!!タッタッタッタッタ!
いきなりドアが開く音がし、閉まる音がする。
そして廊下を誰かが走る音が耳に入った。
俺は、すぐに誰か予想はついた。
泥棒でもない、怪盗でもない、強盗でもない。(全てだいたい同じような気がするが、気にしないようにして頂きたい)
そこにいるのは・・・・
我が母親だ。
確信があった。
何故か?
俺の名前を叫んでいるからだ。
「悟うううううううううううううううううううううううううううう!!!悟うううううううううう!!!」
「ママ泣いちゃうよ!早く出てきてよ、悟うううううううううううう」
そう、何というのか、マザコンの立場を逆転したような・・・サンコン?(Son Complex)
そのような意味の言葉が本当に存在するのかもしれないが、面倒なので調べたりはしない。
そのような言葉を我が母親が知ればどうなる?そう、その言葉を誇りにして、叫ぶ。
そう、ただただ
叫ぶのだ。
母親の問題点
その1,叫ぶ
その2,叫ぶ
その3,叫ぶ
なのだ
サンコンは別に良い、悪い気はしない。
しかし、叫ぶのだけは止めてもらいたい。
「さっとるううううう」
ほら、今もまだおれの頭の中でリピートされている。
そろそろこの騒音を止めさせたいので、風呂から出ようとした。
扉を開けたその瞬間だった。
脱衣所に、
いた。
我が母親は気付いていたのだ、俺が・・・風呂場にいると言うことに。
どおりで叫ぶだけだったんだ。
俺が家にいないというだけで、警察を呼ぼうとするこの母親が、俺が見つからないのにまともでいられるはずがない。
迂闊だった。
この先は・・・・話したくはない。
本当に、話したくない。
先ほど、家から出るときも俺にしがみついてきたのだ。
そのせいでかなりのタイムロスを食った。
そのような母親の醜態。話したくない。絶対に。
ちなみに、母親は月に何度か帰ってくる程度で、すぐに仕事に行ってしまう。
何の仕事をしているかは教えてもらえないが、かなりすごいコトをしているらしい。
そして、久しぶりに帰ってきた母親は・・・たまっている「悟に会えないよー」という哀しみを一気にぶちまけるのだ。
そんな母親のせいで、俺は、今日、大寝坊した。
ちなみに、コミケに行っているので、社会人という考えは止めてもらいたい。
俺はまだ高校生だ
高校2年生。
このような話をしているうちに学校へ着いた俺は、見事に遅刻した。
「松田」 「はい」 「坂本」 「へーい」 「小港」 「ほーい」 「里田」 「はーい」
「桐谷」
「桐谷-」
「桐谷?いないのか?」
「はああああああああああああああああい!」
出欠席を確認している時に扉を開けそっと入ろうとしたが、ものの見事に俺の名前が呼ばれたのだ。
俺は返事せざるを得なかった。
そのような、みんなの視線が俺に集まっている空気の中で、授業が始まった。
一時限目 歴史
「その時だな、アメリカの領事ハリスが日本に来たんだ」
ちょうど横浜開港の所をやっていた。俺は歴史の授業を聞くよりも、
先ほどまでの俺の失態を歴史から消したい気持ちだった。
「みんな覚えてるかな?前回少し話したが・・・」
先生と、生徒が会話しながら授業するスタイル。
それが歴史の山野口先生のやり方だ。みんながたのしく授業をできるように、すこしギャグもまぜながら、授業をサクサク進めていくこの人のテクニックは尊敬に値した。
だから、俺は歴史が好きだ。
歴史の授業を聞くよりも、失態を歴史から消したい、などと俺はほざいていたが、歴史は好きだ。
歴史が好きになった理由、俺の母親はただただ叫び、俺に異常な程までの愛情表現をしてくるが、いろいろと格言と呼ばれる物を残しているのだ、俺は母親の論理的で合理的な話を何回も聞かされていた、その中に歴史の話が出てきた。
母親は俺にこう問うた「悟さ、歴史って何で学ばなきゃいけないと思う?」俺は母親のその答えがすごく心に染みた。
「そう、ここで、日米修好通商条約が結ばれたんだ、が、しかしこの条約、日本に不利だったわけだ」
山野口先生が歴史の授業を陽気にやっていると、いきなり窓際にすわっている小谷が文句を言い出した。
「先生、歴史つまんないです。授業変えて下さい」
「暗記するだけのつまんない授業、さっさと無くなっちまえばいいのに、ったく校長は何考えてんだ」
小谷の言葉で俺の怒りをゲージのMAXを越えさせるコトなど、簡単だった。
俺は、小谷に果たし状を出した。