4、新たな一日。
更新停滞ー。眠いんだよー。
世界はよくできている。人が死のうがロケットが落下しようが、はたまたどこかで大量殺人が起きようと、地球は回り時間は過ぎる。
そうやって日々は動き、絶えず変化する。
まあ、なにが言いたいかと言うと、俺程度がいくら足掻こうが世界は痛くも痒くもないってこと。
悟りたくなかったが、悟るしかなかった事実。
でも、そんな当然知っていて、目を背けて生きていた。
それを再認させられて、俺は――
とりあえず、学校に行くことにした。家の中にいたまま腐っていたところで事態は一向に好転しないだろうし、いや外に出たところで好転するはずもないんだけど、動かずにはいられない感じなのだ。
とりあえず誰にも見つからないように家に帰り、忍び足で廊下を駆ける。途中何度か見つかりそうになりながらも、なんとか逃げ切り、自分の部屋でバッグを引っ掴んでいざ脱出開始!
「……って何をやってるんだ俺は」
そうだ。よく考えれば俺は悪い事をしたわけではないし、別にわざわざ隠れる必要もないじゃないか。
「よし。んじゃまあ」
まずは、腹ごしらえにでも行きますか。手に持っていたバッグをベッドに放り投げ、意気揚々と朝食が待つキッチンへと降りて行った。
キッチンからはジュウジュウと何かが焼ける音がしている。多種多様なメニューに心踊らせながら、キッチンに入る。
「おはようございま――」
朝の挨拶は途中までしか喉を通らなかった。その理由は……
「恭平……さん?」
俺の顔を見て呆然としている美佐子さんにあった。美佐子さんはいつも通りの朝食の支度をしていたようなのだが、手に持っていたフライパンの上には何やら朝食には相応しくない塊が焼けている。
「あの……美佐子さん」
ジュウジュウ。余熱効果でフライパンの上の塊は未だに焼かれ続けている。
「はい。なんでしょう?」
「一つ訊いてもいいですか?」
「はい」
ジュウジュウ。ジュウジュウ。
「その……なんで朝からステーキなんですか?」
「食べたかったからです」
即答。有無を言わせぬ速度で、美佐子さんは言い切った。
いや、言い切られても困るのですけど美佐子さん。
「……わかりました。ステーキの件は不問にしますので、どうか俺に朝食を作ってください」
「はい。それじゃあ急いで作りますね」
パタパタとスリッパを鳴らして、キッチンに消えた美佐子さんを見送り、イスに腰掛けた。
キッチンからは美佐子さんの鼻歌が聞こえてくる。ローレライとは美佐子さんもなかなかマニアックですのう。
彼女は一体何に魂を移したのだろう。使えるのは私の体しかないから、と言っていたところを見ると、士郎はオンナノコになったのだろうか。と、残された貴重な時間を無駄に過ごしていると、美佐子さんがウエイトレスさながらに、肩上まで朝食が乗っているトレイを掲げて戻ってきた。
「お待たせしましたお客様。今朝のメニューはお味噌汁と、ぬか漬け、最後にステーキと目白押しなラインナップでございます」
「……えらく節操ないメニューですね。なにかあったんですか?」
「えぇ、せっかく今日、私が毎月楽しみにしているステーキデーだったのに、恭平さんがいつもより二時間も早く起きてきやがるので、熱々ステーキを食べ損ねて思いっ切り不機嫌なわけです」
「……そして冷めたステーキは俺行きというわけですか」
「ええ、冷めたステーキほど悲しくて美味しくない物はありません。恭平さんが責任を持って片付けるべきです」
そのわりにはえらく楽しそうに料理作ってたよなぁ、とは口にしない。別に朝から肉を食べることに不満があるわけでもないし、他人の好物を奪ったような申し訳ない気分になりながら、まずは肉の解体に取り掛かることにした。
朝食を平らげた後も、俺はキッチンに止どまって、美佐子さんと話込んでいた。一晩起きていたためか、眠気は全く感じない。
「それにしても、いつもより早く起きてくるなんて、寝起きが最高に悪い恭平さんらしくないですね」
「あ……実を言うと、昨日出て行ってから、一睡もしてないんです。なんとなく考え事してたらいつの間にか朝になってて」
俺の話を聞いた美佐子さんは、呆れたように溜め息をついた。
「はあ、徹夜するのは若気の至りだとは思いますが、ほどほどにしないと次の日がきついですよ」
「わかってはいるんですけど……」
わかってはいるんだけど、せざるを得なかったというか、そもそもそんな考え、頭になかったというか……
美佐子さんは厳しい目線で俺を見ている。そして、
「やはり……将来のことですか?」
俺の中でもまだ整理のついていないことを、口にした。
「将来、ですか。美佐子さん、その話は――」
「ダメです。恭平さんは自分の嫌な事はすぐはぐらかしてしまうので、ちゃんと聞いてください。じゃないと今日は学校に行かせません」
有無を言わせぬ迫力と言葉、そしてそれを実行に移せるだけの実力を持った美佐子さんに歯向かうのはいささか無謀だ。
「はあ、それ本気ですよね」
「ええ、とっても」
不敵に微笑む美佐子さん。どうやら、この調子じゃ学校に行くのは昼過ぎになりそうだ。
「げ、なんか起きてる」
でも、とりあえず。キッチンに入ってきた不躾な妹と決着をつけてからにしよう。
最近は寝不足で小説を書く余力がなくなり、更新停滞してすいません。
そんな状況でも、読んでくれた方には感謝です。
あ、最近公開した短編もオススメなので、是非読んでくださいね。