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遠い希望  作者: 桜舞姫
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不幸な恋人争奪戦

第二部です。

「恋人が二股してるから、自分と相手のどっちが本当は好きか調べてほしいぃ?」


明らかに、脱帽した感じのキリカさん。

確か、トモミ先輩が付き合ってるのは…。


「ケイ先輩ですよね?生徒会長の…」


ミウの言葉に、トモミ先輩は力なく頷く。

ああ、あの人か…。

生徒会長、サッカー部の部長でありエースストライカー、成績優秀という、完璧な人。

顔もさわやかタイプのイケメンで、学校で一番モテモテ。

でも、私はあの人が苦手。

何か、あまりにも完璧すぎて人間じゃないみたい。


「めんどくせぇな。何で中学生なのに恋人とかできるんだ?」


キリカさんが心底信じられない目でトモミ先輩を見る。

多分、キリカさんは恋愛とか全然興味ないんだろうな。(私もだけど)


「何言ってんのキリカ!女は生きてるからこそ恋をする!いや、恋をするために生きている!

女はねぇ、恋をしないと魂が死んじゃうの!枯れちゃうのよ!なのに、ケイ先輩ったら…信じられない!」


カナの熱弁に、キリカさんは珍しく唖然。

カナはああ見えて、私より乙女だ。


「キリカが調査しないなら、私がする!直接、ケイ先輩に聞いてこれば――」

「門前払いだろうな」


キリカさんの言葉に、カナがピシッと石のように固まる。

それでも、負けじと次の言葉を言う。


「なら、周りの人から情報を集めれば――」

「そいつ、完璧な人間なんだろ?そんな人間が、「自分は二股してます」とバレるような行動や言動をすると思うか?」


こうして、キリカさんの説得力ある言葉によりカナは完敗。

真っ白に燃え尽きて、屋上の隅に行ってしまったカナをひとます無視。


「まぁ、確かに人間関係の調査も探偵の仕事だが…」

「本当にお願いキリカさん!私、ケイに「別れよう」って言われたの!でも、私別れたくなくて、それでそのことを伝えたら、「俺が悪かった」って…。でも、それだけじゃ安心できない!本当はどっちが本命か知りたいの!」


トモミ先輩の剣幕に、私とキリカさんはちょっと引く。

しばらくの睨みあいで、キリカさんが諦めのため息をついた。





それから、学校でもあちこちで聞き込みしたけど、ケイ先輩が見事に隠してるのか誰も知らないらしい。

ミナの情報では、ケイ先輩と付き合っているもう一人の女子生徒の先輩は、アヤメ先輩。

ただし、ミナがどうやってその情報を掴んだかはキリカさんですら解けなかった。(だって、「どうして分かったの?」って聞いたら、ミナったら腹黒い笑みを見せるだけなんだもん)

あと、ミナはもう一つの情報を持ってきた。

今日、土曜日はケイ先輩はアヤメ先輩とデート。

そして、明日の日曜日はトモミ先輩とデート。

ただし、ミナがどうやって情報を掴んだかは恐ろしくて聞けなかった。


「アヤメ先輩とケイ先輩、何話してるんだろ…」


そして、今はカフェの中でケイ先輩とアヤメ先輩を尾行中。

ミウとミナは、塾があるとかで来れないらしい。

私はむしろ、ケイ先輩とアヤメ先輩の関係よりもカナの今の服装の方が気になる。

カナの服装は、黒いサングラスにマスクに黒いジャンパーに黒いズボン。

思いっきり怪しい人物だ。

何でそんな恰好なの?って聞いたら、「尾行と言えばこれでしょ!」って即答された。

カナのセンスは、キリカさんでも解明できないだろう。

私は薄い青のジーパンに裾の先に花びらが点々と模様付けされている七分袖という、シンプルな恰好。

この中で一番おしゃれといえば、キリカさんかな。

いつもは下ろしている背中まである長い髪を、後ろの高い位置でおだんごにしている。

おだんごにできなかった残りの髪を後ろに流して、すごくいい感じ。

恰好も、短い薄ピンクのスカートと黒い膝までのスパッツ。上は綺麗な空色のチュニック。

ちなみに、先輩たちの尾行中にもキリカさんは5回も同い年くらいの男の子に声をかけられ、

あげくの果てには、ある有名なアイドルプロデューサにも声をかけられていた。

同じ女の子として、かなり憧れます…。



*    *    *    *    *



カフェを出たケイ先輩とアヤメ先輩を追いかける。

ちなみに、私もキリカさんもカナから離れた場所にいる。


「それにしても、あのケイ先輩ってデレカシーってものがないよね!」


カナが突然言い出した。

私的には、そんな怪しい恰好で道を堂々と歩けるカナの方がデレカシーがないと思う。

キリカさんがカナの方を振り返る。


「どこがないんだ?」

「だって、普通人混みだったら道の端っこに行って好きな人を人混みではぐれないようにするでしょ?ケイ先輩、堂々と真ん中で歩いてるもん。ほらアヤメ先輩もケイ先輩についていくのがやっとって感じ」


カナに言われて気づいた。

確かに、アヤメ先輩は人混みのせいでケイ先輩から少し後ろにいる。


「信じられないよね!あんなの、「はぐれたいです」って言ってるようなものだよ!」


カナって、恋愛系になると鋭いね。

キリカさんが顎に手を当てる。


「…もしかしたら、あの男、恋人が嫌いなんじゃないか?」

「「え?」」


私とカナの声がハモる。

確かに、トモミ先輩と「別れたい」って言い出したのも嫌いになったからかも?

でも、それだったら何で…。


「『何でキッパリ言って別れないんだろ?』って顔してるな?」

「う…。はい、図星デス」

「カナ、もし好きで好きでたまらない男に「嫌いだから別れよう」って言われたらどうする?」


突然質問され、カナはうーんと首を傾げる。


「えっと…。自分は好きなのに、相手に嫌いって言われたら、多分気が狂って友達に泣きながら打ち明ける気がするなぁ」

「やっぱりそうか。多分、あの男はそれを恐れてるんだよ」


……ああ、そうか…。

完璧主義のケイ先輩は、二人を振ったことで自分たちが付き合ってたっていうのをバレるのが嫌なんだ。

二股かけてるってバレる可能性があるし…。


「まぁ、それは明日に他の先輩とのデートを見れば分かる話だけどな」


キリカさんがそこでニヤッと笑う。

そこで思い出した。

私…。明日、親戚の家に行かなきゃ…。

二人にそれを言うと、カナが早速文句を言う。


「えー!?そんなの、行きたくないって言えばいいじゃん!」


カナ、私の親は、我が道を進むタチの悪い天然な人って知ってるよね?

キリカさんが唸る。


「残念だな…。サヤカの冷静な判断力があれば、他のことも分かったかもしれないんだが…」


えーと…。

それって、私はキリカさんに期待されてるってこと?

……何か、すっごく嬉しい!





「で、どうだった?」


月曜日、放課後に屋上に集まる。

トモミ先輩は来ない。

ミウとミナは、どうやら昨日は一緒だったらしい。


「トモミ先輩も似たような感じ。本当にケイ先輩ってやな奴!」


カナが拳を握って怒り出す。

ミウとミナもその横で同じように怒っている。


「まぁ、あの男は二人の恋人のことが嫌いというのは分かったな」


キリカさんが結論を出す。

そうか…。何か、二人の先輩が可哀そう。

くっそー!あの先輩、二度と生徒会選挙で当選してやらない!


「それにしても、何でトモミ先輩は来ないんでしょ…?」


ミウが不思議そうに首をひねる。

私も、さっきからそれが気になってた。


「えー?忘れてんじゃないのー?」


カナがあくび混じりに言う。(あんたじゃあるまいし…)

だけど、キリカさんも特に気にしてなさそうだ。

それよりも、何か別のことを考えてる感じ。

…キリカさん、何か隠してるのかな…。





次の日、私達は信じられないものを見た。

トモミ先輩の彼氏、ケイ先輩が二股していたもう一人の先輩が、自殺していた。

ここからじゃよく見えないけど、血は周りに広がっていて、死体は仰向けに倒れている。

教師はキリカさんに気付いて駆け寄る。

キリカさんは教師を押し退け、死体に近づいた。


「…違う。これは自殺なんかじゃねぇ。殺人事件だ」


キリカさんの言葉に、空気がザワッとする。

カナが疑問をぶつけた。


「どうして!」

「自殺だったら、落ちた時は普通うつ伏せなんだよ。でも、誰かに突き落されると死体は自然と仰向けになるんだ」


その言葉に、何人かの視線がトモミ先輩に集まった。

まるで、「犯人はトモミ先輩」というような目で…。



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