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遠い希望  作者: 桜舞姫
3/4

*その3

オープニング、その3です。

そして、昨日のようにミウとミナの家へ。

キリカさんは「分かった!」って言ってたけど、私達には全く分かんない。

しかも、犯人はやっぱりおじさんだって言うから、ミウとミナの表情が暗い。

家の中に入ると、またおじさんが出迎えてくれた。


「おお、今日も二人の介護か?本当にありがたいねぇ」

「おっさん。これから誘拐犯を捕まえようと思うんだ」


キリカさんの言葉に、おじさんの目が一瞬泳いだ。

でも、すぐに大笑いする。


「君、探偵ごっこのつもりかい?そういうのは警察に任せとくものだよ」

「任せられないから、私が調べてるんじゃないか」


キリカさんの挑戦的な口調に、おじさんの表情から笑顔が消える。


「…話して御覧なさい」

「簡単だ。まず犯人はどうやって身代金を手に入れたか…。普通、身代金を渡すときに警察は誘拐犯を捕まえる。なのに、今回の誘拐犯は捕まらなかった…。私もそうだったが、大抵の人間は「頭のいい誘拐犯」と思うだろう。でもよく考えてみろ。警察に捕まらず身代金を簡単に手に入れる方法なんて、たった一人でできっこない」


キリカさんの言葉を、頭の中で解析する。

……あ!


「もしかして、警察に共犯者がいるってこと!?」

「そうだ。知らないかもしれないが、あの大きな警察署には元・ヤクザや不良もいるんだよ。おっさんと手を組んでたやつらもな!身代金の残りの1000千万でもエサにすりゃ、口封じにもなるだろ」


そういえば、ミウとミナのおじさんはヤクザや不良と手を組んで暴力団とトラブルを起こした…。

どんどんピースが埋まっていく。


「そして、犯人が分かる大きな行動が、一つだけあるんだ」


キリカさんがおじさんを見てニヤッと笑う。

誘拐犯の行動で、犯人が分かる…?


「誘拐犯は、ヘリウムガスを使ってミウにこういった。『逃げたり叫んだりすれば、妹を殺す』

そして、ミナにはこういった。『逃げたり叫んだりすれば、姉を殺す』

…明らかにおかしい事が一つだけあるんだ」


えっと…そうかな?

必死に考えるけど、全く分からない。


「ミウとミナはそっくりな双子だ。声も、成績も、背格好も、顔も、性格も…。まるで鏡に映したように。

なのに、どうして誘拐犯は、そっくりな双子である姉と妹の区別がついたんだ?」


……!

そうだ!誘拐犯は、そっくりなミウとミナの区別がついていた!

ってことは…。


「そういう風に考えると、親でも難しいミウとミナを簡単に見分けられるおっさんしか犯人にはならないんだ!」


キリカさんがビシッと容赦なく言う。

おじさんは、その場に崩れ落ちた。


「おじさん…」

「…どうして…?」


ミウとミナの目から、大粒の涙があふれている。

おじさんは頭を抱えた。


「仕方なかったんだ!借金取りに追われ、もうこうすることでお金を手に入れることしか…!」

「……カナ、悪いが警察を呼んでくれ」

「う、うん…」


カナは部屋の奥に入って行った。

その足取りが、少し重い。

キリカさんがおじさんの前に立つ。


「おい。この二人を無事に逃がせば、誰かにバレルかもしれない可能性も高くなるだろう。普通、顔を見られてなかろうが誘拐犯は誘拐した子供を殺すもんだ。何故、ミウとミナを殺さなかった」

「…殺せるわけないだろう。小さいときから、俺を慕ってくれた、可愛い姪を殺せるはずがない…」


おじさんの言葉に、ミナがワッと泣き出した。

ミウもミナを支えながら泣いている。


それからしばらくして、パトカーのサイレンが響いた。

おじさんは涙を流しながら、パトカーに乗り込む。

ミウとミナは、キリカさんの後ろでおじさんの可哀そうな姿を見ないように、ずっと泣き続けた。













今回の事件は、おじさんの姪に対する愛情が命取りになって、幕を閉じた――










*   *   *   *   *



ミウとミナのおじさんが逮捕されてから一週間――

中学生が誘拐犯を捕まえた、というニュースは、あっという間に日本中に伝わった。

だからか、取材者や記者の人たちが学校に押し寄せるし、私とカナも当時一緒にいたからターゲットにされてるし。

しかも、キリカさんの噂はもちろん学校中にも伝わり、キリカさんは一躍有名人になった。

休み時間なんか、キリカさんのファンの子達が一斉に教室になだれ込んでくるもんだから、大変なんてもんじゃない。

しかも、キリカさんの事を快く思ってない子達もいるし…。

でも、本人は全く気にしてない。

前と変わらず、屋上で昼寝をしたりしている。


「キリカ!」

「……なんだ、サヤカとカナか…」


カナはキリカさんを呼び捨てにするようになった。

あと、キリカさんはファンの子達にほとほと疲れてるのか、いきなり話しかけると予想以上の反応を見せる。


「見て見て!キリカのファンの子達に、『キリカ姉様に渡してください!』ってラブレター預かったよ!」


「見る?」とカナが言う前に、キリカさんは手紙を奪い取って屋上から落とした。

…よっぽど嫌なんだねェ…。


「最近、「手紙」って単語だけでダメなんだよ…。家にもファンレターがいっぱい来るし…」

「…大変だね」


私は心底、同情の眼差しを向ける。

カナがKYな発言をする。


「ちなみに、今まで捨ててきた手紙を集めたらどうする!?」

「…これ以上手紙を見たら…吐く」


青ざめた顔でいうキリカさんからは、前のような狼の面影は一つもない。

そんなにいやなんだねぇ。

まぁ。私も目の前にたくさんの手紙があったら読む気失せるけど。

そんな時、屋上の扉が開いた。

そこにいたのは、ミウとミナ。それから私とミウの委員会の先輩。


「ミウ、ミナ。大丈夫か?」

「はい。ショックだったけど、おじさんがちゃんと罪を償うって言ってたので…」

「あと、ちゃんと私達はおじさんに愛されてるって事も分かってますから」


二人の言葉に、キリカさんは満足そうに笑う。

笑うと、どこかのお嬢様みたいに気品がある。

でも、その笑みはすぐに消えてしまった。


「ところで、後ろのそいつは?」

「私とサヤカ先輩と同じ委員会の、トモミ先輩です」


トモミ先輩はキリカさんに軽く会釈する。

トモミ先輩は、私とミウが入っている図書委員会の委員長だ。

お姉さんみたいに優しくて、一人っ子の私の憧れの存在。

でも、トモミ先輩はいつもみたいな元気がない。


「どうかしたのか?」

「…キリカさん。ちょっとお願いがあって……」




――こうして、私達はまた新しい事件に巻き込まれることになる――





オープニングはこれで終了です!

これで、三人のキャラ、あとキリカさんの名探偵ぶりが分かったかと思います!

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