オープニング
3作目ー!
そして、初めてのミステリー!
変なところや理屈に合わないところがあっても、皆様のスルースキルで回避してください!
「聞いて聞いて!誘拐された双子の後輩が、空き地で気絶してるのを発見されたんだって!」
登校していきなり、大親友であるカナが私に飛びついてきた。
どうりで、廊下にいる人たちもザワザワしてたのか…。
さて、急に始まったこの物語ですが、まずは私の紹介を。
サヤカって言います。中学二年生です。
親友のカナと違って、冷静でクールだと、自分でも自覚してる。
親友のカナは、私を正反対。
突っ走りまくって、明るい子。悪い子じゃないんだけど、ちょっと空回りしすぎている。
そして、”誘拐された双子の後輩”っていうのは…。
2週間前、私達の学校の後輩である、双子の女の子が誘拐されたという事件が起こった。
テレビでも取り上げられ、犯人は2000万円を要求してきたらしい。
双子の女の子は、長女がミウ。次女がミナ。
二人共、双子というところ以外はごく普通の女の子だ。
ミウは私と同じ委員会。ミナはカナと同じ部活。
だから、二年生の中では私とカナが結構衝撃だったと思う。
「へぇ、ミウもミナも無事?」
「えーと、結構衰弱してるけど、特に怪我もしてないらしいよ。犯人は、2000万円を見事手に入れたんだって!普通はありえないよねぇ!」
「まぁ、誘拐って時点でありえないけど…」
私とカナが話してると、隣を誰かが通った。
目を追うと、それはこの学園で一番不良の女子生徒、キリカさんだ。
制服じゃなくてジャージを着用してて、ウォークマンを堂々と授業中にも使用している。
もちろん、先生たちの最大の敵。
でも、後輩や女子生徒からの受けはいいらしい。
まぁ、かっこいいしね。
今日は、どうやらサボる様でめんどくさそうに教室を出て行ってしまった。
「キリカさんって、かっこいいよね!」
「カナもそんな事いう…」
「だってだって!私もキリカさんのファンだもん!」
「はいはい…」
きゃあきゃあ言い始めたカナをよそに、私は授業の準備をはじめた。
でも、ミウとミナが戻ってきてよかったよ…。
この時は、私もカナも、まさか事件の真相を知ることになるとは思ってなかった。
全ては、キリカさんと関わってしまったことから始まる…。
* * * * *
昼休み、弁当を持って中庭に向かったけど、困った事に人がいっぱいで座れそうにない。
「何でこんなにいっぱいいるんだろ?」
「フフフ…。この名探偵カナ様に任せなさいっ」
「あんたの場合は、”迷”探偵じゃない?」
「だまらっしゃい!あれを見て!」
カナの指さす先には、ミウとミナがいる。
どうやら、誘拐について興味津々の生徒たちに囲まれてるみたいだ。
「このカナ様にかかれば、これくらいの謎!」
「うん、確かに見れば誰でも解ける謎だね。じゃあ屋上行くか」
「ちょ、他に感想はないのかぁ!」
一人で勝手に盛り上がってるカナを無視し、屋上に向かう。
今日は天気が悪いわけでもないし、中庭が人でいっぱいなんだから仕方ない。
それにしても、何で屋上って人気ないんだろう?
「ねぇ、何で屋上って、人気ないんだと思う?」
後ろからついてくるカナに質問してみる。
まぁ、期待はしてないけど。
「何言ってんの、サヤカ。名探偵でもない私がそんなこと分かるわけないじゃん」
「あんた、一分前までなんて言ってたっけ」
そんなくだらない事を話してる間に、屋上についてしまった。
重たそうな扉を開けると、涼しい風が頬を撫でる。
こんないい所なのに、何で誰もいないんだろ。
「サヤカ。お腹空いたよ」
「じゃ、食べようか」
適当に隅に行ってカナと並んで座る。
誘拐事件なんて、あまりにもあっさり終わってしまってるし、私達が誘拐されたわけじゃないから、どこかニュースで見たような感覚なんだよなぁ。
屋上から下を見下ろすと、パトカーが丁度通りかかった。
「なんか、最近パトカーをよく見る気がする」
「私もー。誘拐事件があったばっかだしね」
「誘拐事件?何だそれ」
「「うわああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」
突然声をかけられ、私とカナの絶叫が見事にハモった。
バクバクいう心臓をおさえながら見上げると、そこにはキリカさんが立っている。
あ…。今気づいたけど、キリカさん、すっごく美少女…。
「誘拐事件なんてあったのか?」
美少女な顔とは裏腹の、男らしい口調に戸惑う。
無神経で単純なカナが、私と話すときみたいにキリカさんに説明し始めた。
「キリカさん、知らないのー?この学校で、双子の一年女子生徒が誘拐されたんだよ」
「へぇ…。犯人は捕まったのか?」
「ううん。犯人は行方不明。その誘拐された双子のミウとミナは、空き地で気絶してたのが見つかったんだって」
カナがキリカさんに説明してる間、私は疑問に思っていた。
何で、キリカさんはあんなに大騒ぎになったのに知らないの…?
それはカナも思ってたのか、質問する。
「ああ、私、あまり周りに興味ないから」
あっさりと言ったあと、顎に手を当てて何か考え込む。
そのポーズが、名探偵っぽくてかっこいい。
それにしても、いつもやる気がなさそうなキリカさんがこんなに興味津々に誘拐事件の事を聞くなんて…。
そんな事を考えてると、キリカさんが顔をあげた。
「…犯人は捕まらないかもしれないな……」
「え、どういう事!?」
思わず、キリカさんの呟きに反応してしまった。
いつも冷静な私が、情けない…。
「考えてみればすぐ分かる。まず、双子は一応無事に帰ってきたんだろ?もし、誘拐犯の顔を見てたら殺されてるさ」
「あ、確かに…」
「それに、誘拐は成功するよりも失敗する方が多いんだ。なのに2000万円をまんまと奪ったということは、かなり頭の切れる持ち主という事だ。警察みたいにちんたら聞き込みしてても、解決するわけないだろ」
ほー…。すごいな、キリカさん…。
確かに、そんな風に考えれば犯人は捕まらない気がする。
カナが面白くなさそうな目で、キリカさんを見ている。
そりゃそうか。自称といえど、カナは名探偵に憧れてるから、目の前で説得力のある謎解き(?)をされれば面白くないだろう。
「……その双子って、お前たちの知り合いか?」
「う、うん。ミウは私と同じ委員会で、ミナはカナと同じ部活なの」
「じゃあ、今日の放課後に屋上へ来るよう言っておいてくれ」
キリカさんはそれだけ言うと、屋上の扉を開けて校舎の中に入ってしまった。