トリの柔らか煮込み9
話を聞きながら食事をしていたエドにレオが声を掛けたのでエドのスプーンが止まった。
「アリシャがなんとか力を使いこなせるように手を貸してやりなさい」
スプーンから白い液体がポタリと落ちた。
「なんで俺が?」
迷惑そうに眉を寄せるエドにアリシャは傷付いた。
(そんなに嫌そうにしなくても……)
「それなら僕がやろうか」
「いい、やるから!」
ウィンが代わってくれようとしたらエドはそれを跳ね除けた。不機嫌に器の中身を食べきると無言で立ち上がりお替りし、またガツガツとエドは食事を続けた。
「防御の主が居るなら村は安泰だ。ワシは長いこと生きているがまさか本物の能力者に会えるとは思わなんだ」
そんなにすごいのかとリアナが祖父ジャンの顔を見つめると、ジャンはシワだらけの顔で微笑む。
「そりゃ、ほとんどの人間が能力者を見ることなく死んでいくからな。ワシらは見るだけじゃなく、その方の作ったものまで食べているんだ」
「あら、今日は私が作ったのに!」
「そうだな。お前の作った物もうまいぞ」
リアナとジャンのやりとりはそれだけでなんだかとても微笑ましかった。
アリシャも自分の降って湧いたような能力に戸惑いながらもリアナの作った料理を口にした。
滑らかなミルクに舌で潰せそうなほど柔らかい肉。胡椒が利かせてあり臭みはまるっきりなくなっていて、適度に塩気と甘みが口の中に広がっていく。
「美味しい……」
先のことはどうして行けばいいのかなど、アリシャにはわからない。ただ、今こうやって美味しい食事に気心の知れた人たちに囲まれて、漠然とだが幸福だった。
(なるようにしかならないし、やれるべきことをしなきゃ。不幸せな出来事より幸せな事を積み重ねていきたい)
ふとリアナと目が合った。もう一度「美味しいわね、本当に」としっかり言うとリアナの表情が溶け出していった。アリシャも釣られて笑顔が溢れていく。
(もし、本当に防御の力があるならば、私は皆を守れるんだわ。この幸せな生活も守っていけるってことよね)
ジャンとレオとドクが最近の情勢について語り合う横で、レゼナがココを撫でてやっていた。ウィンとエドも会話を交わしている。なんでもない日常が営まれていた。
生まれ故郷の惨事はもうどうにも出来ないが、ここを守るなら出来るのだと思うと戸惑いが少しずつだが緩和されていった。




