アイスグラスのリンゴ酒9
ユーリの視線がリアナに向いたが、そんなリアナはエクトルを見つめていた。
「今年の冬は長くなりそうだ。暇を持て余すのが一番良くない。ああ、そちらの方々も何かされるか?」
話を切り替えたレオが兵士たちに問い掛けた。確かに暖炉の火を見るだけでは一日も持たずに飽きてしまうだろう。
「俺たちは読み書きも出来るんで必要ないかと」
一人が言うと違う兵士がそんなこと言ってないだろうと可笑しそうにちゃちゃを入れた。
「この者たちも元々は農夫の子だったりするから、仕事はなんでも出来るはずです」
イザクがレオに答えると笑っていた兵士が言う。
「俺は山岳地帯で生まれ育ったんで、雪は慣れてますよ。雪が降っても家畜の世話は絶対だ。それを手伝わせて貰います。ああ、あと──」
そこでキョロキョロと辺りを見渡して何かを探す素振りを見せた。
「ロープがあるなら馬小屋とここ。あとはここと家畜小屋まで腰の高さに張っておくといい。吹雪いた時にそれで帰ってこれますから」
ボリスが立ち上がり「ロープなら倉庫に。今やりましょう」と話していた兵士を誘った。
「お食事は?」
肉のパン包みのフリッターはまだ出来たてだ。でも、作業をしたら冷めてしまう。出来れば温かいものを食べてほしかったアリシャだったが、ボリスはすまなそうに「やれることは直ぐにやっちゃわないとね」と返した。
ボリスと数人の兵士が手に松明を持ち出て行った後、レゼナがアリシャにそっと大丈夫よと声を掛けてきた。
「また作ればいいんだし、どうしても気になるなら油を温め直して揚げてあげればいいわ」
二人の声が届いていたようで、ドクが「さぁさぁ、とりあえず温かいうちに我々はこの旨そうな食事を腹の中におさめようじゃないか」と、フリッターを手持ちのナイフで刺して掲げた。
「あ、そうだわ! エクトルさんがリンゴ酒を用意してくださったの。今、器を持ってきます」
「リンゴ酒か! そりゃあいい!」
ドクが大いに喜んで、器を取りに行くのを手伝うと率先して動いていく。アリシャより先に料理部屋に向かってしまってアリシャが慌ててついていく始末だった。
氷の器で飲むリンゴ酒は大好評だった。暖かな部屋で和気あいあいと飲み交わすフルーティな酒に皆、頬を染めて和やかな夜だった。




