視線
「お早う。」
「うん、おはよう。」
クラスメートと挨拶を交わす。ただそれだけだ。そこには愛想も何もない。
実際、私はただの女子高校生だ。
自分で言うのも何だが、私は世間一般で言うところの美人ではないか、と思っている。無論、自惚れなのは分かっている。しかしこれは事実なのだ。だからこんな無愛想な女でも周りから一目おかれて、いじめにも逢わずに今日まで生きてこれたのだ。
こんなつまらない私だが、実を言うと普段から退屈はしていない。何故なら・・・。
日常的に私は性的な目に晒されている。そんな視線を私は、ただ見下すのみなのだ。
私は電車通学だ。この中で常に誰かに見られている、と感じているのだ。それも私の全身を眺めなぞっている様子だ・・・。
そして私は、その視線を送る相手を見つけ出し睨み付けるのだ。そうすれば大概その相手は、ビビって顔を反らすのだ。
勿論、この様な行為に対しては迷惑千万である。ハッキリ言って気持ち悪い。しかし・・・。
最近上手くは説明できないが、自分の中からまた別の感情が沸き上がって来るのを感じていた。
今日も電車の中で視線を感じた。
例によって私は誰に見られているのか、突き止めようとする。自分の勘は中々鋭いモノを持っている様子だ。
そしてついに、その視線の主を捉えた。
(おっ・・・。)
ちょっと意外な結果だった。私が見据えていたのは・・・。
とても可愛らしい顔の少年。しかもキョトンとした、真に純真無垢な表情の持ち主であった。どうやらこれは、この子の視線ではなかったようだ。何故なら、その視線は明らかにこの私を性的な対象と捉えていると感じたからだ。どうやら私の勘は外れたようだ。ちょっと私は残念なような、寂しいも気持ちになった。
走行自分の脳内で格闘しているうちに、目的の駅に辿り着いたのだった。
ところが今日の冒険は、ここでは終わらなかった。
駅を降りた私は登校すべく歩いていた。
(ん・・・・?)
またしてもこの私のレーダーが動いた・・・。
率直に言うと、歩道橋の下から強い視線を感じた。私は自分の脚の間に熱く刺さるものを感じた・・・。
(・・・・・。)
気が付くと私は脚を止めていた。
それ程だろうか・・・、実際は数十秒くらいかも知れない。
ジッととしたものが滴る感覚を得た・・・。そこで・・・。
「ハッ!?」
ふと我に返った私は首をブンブンと振った。
(こんなのいけない・・・!)
私は全速力で歩道橋を駆け降りた。こう見えても私は脚には自信があるのだ。そして・・・。
その男性は80歳前後だろうか。老人が私を見て怯えていた。
多分私の勘は正しかったのだろう。だが実際に相手を知ってしまうと・・・。
とたんに私は興ざめした。
この老人に私は何も告げずに去って行った。
どうやら私の妄想だったようだ。うん。そう言う事にしておこう。
果たして翌日からも、私は視線を感じていた。
やはり視線の出所にこだわるべきではないのだろうか。もしこのまま正体不明の相手に一方的に観察されたら、と思うと私はゾクゾクした。
~~~「視線」~~~ <完>




