一寸法師の敵
村の中心に土俵が作られていた。
その縄は目線と同じ高さ。
巨大な足が凄まじい勢いで現れ、つぶてを飛ばす。
「一寸!」
遥か上空から声が上がる。
「お前みたいなチビ! 勝っても嬉しくねぇ! 踏み潰されん内にけぇれ!」
太陽の傍にある赤ら顔を見る。
痩せても太ってもいないが、ムカつくほどの、巨体。
しかし、ただの子供。
隙を付けば転ばせるのは簡単だ。
考えるあいだに、巨大な足が迫る。
つぶてが舞い、全身に襲いかかった。
成人の儀が執り行われた日。
俺はただ、駆けた。
雑草を掻き分け、逃げ出していた。
「ははははははは!」
声を張り上げる。
鬼がいた。
姫が食われそうだ。
強大な足を見て、かつての後悔がよぎる。
それを上回る高揚に、勢いよく針を抜いた。
何も考えず、
毛むくじゃらに駆ける。
――千載一遇の、好敵手
岩のような足が迫った。
勢いよく飛び上がる。
剛腕が霞め、体が吹き飛ぶ。
小枝が眼前に迫り、それを蹴る。
反動で鬼の体に。
腕を駆け上がり、針を振りかぶる。
振りぬく先で、大口が視界を埋め尽くし、
闇に閉じ込められた。
ずるずると体が引き込まれる。
(くさい)
胃の腑の中だ。
暗闇を見回し、手を付く。
肌がピリつき、草履が溶け落ちた。
逃げ場がない。
喉が震える。
笑いがこみ上げた。
巨大な手足はここには届かない。
高揚のまま、全身に力を込め、
目を見開いた。




