第21話 太陽と北
主人公――太陽の神も、
確かに意識を失っていた。
だが、
あのときとは違った。
長く、深く、沈むようなものではない。
ほんの一瞬、光が途切れただけのように。
半刻も経たぬうちに、
彼女は目を覚ました。
その顔には、
混乱よりも、驚きと――
そして、はっきりとした高揚があった。
二代前の太陽の神とは、
違う。
そう、頭では理解できた。
それでも、
身体は正直だった。
怖さが、残っている。
自分の力が、
また誰かを壊すのではないかという感覚は、
簡単には消えない。
それなのに。
彼女は、
それまでに味わったことのない感覚だったと、
そう告げた。
言葉を選びながら、
恥じるように、
それでも隠さず。
もう一度、
望んでいるのだと。
その日は、
それ以上のことはなかった。
ただ、同じ寝台で眠った。
だが翌朝から、
彼女の様子は明らかに違った。
視線が、
無意識にこちらを追う。
会話の合間に、
ふと黙り込む。
考えていることは、
分かりやすかった。
昼食を終えたあと、
彼女は、
思い切ったように言った。
月の神との体験が、
頭から離れない、と。
欲情が過ぎる気がして、
恥ずかしいとも。
最初は、
断った。
理屈は、
もう何度も自分に言い聞かせてきたことだ。
だが、
彼女は引かなかった。
その熱意に、
押されたというより――
確かめたくなったのだと思う。
結局、
寝台へ向かった。
そこで、
これまでの経緯を話した。
二代前の太陽の神のこと。
力が強すぎて、
制御を失ったこと。
一度始めたら、
途中で止められる保証はないこと。
それでも、
彼女は頷いた。
だから、
条件を出した。
出来る限り、
ゆっくり進めること。
少しでも異変を感じたら、
迷わず止めること。
そして――
万が一のために。
寝台の脇に、
小さな釘のようなものを置いた。
自分を刺してでも、
意識を保つためのものだ。
彼女は、
一瞬だけ目を見開き、
それから静かに息を吐いた。
「それでも、いい」
そう言った。
その声に、
覚悟があった。
北月は、
深く息を吸い、
力の流れを、
いつも以上に抑え込んだ。
ゆっくり。
慎重に。
かつてないほど、
細く、静かに。
――今度は、
壊さない。
その一点だけを、
強く意識しながら。




