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触れられるたび、月は満ちる。 神であることは、拒めないということだった。  作者: Carrie
北月編

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19/22

第18話 言葉のない朝

目を覚ましたとき、

すでに日が高かった。


たぶん、十時くらい。


身体は休んだはずなのに、

頭だけが少し重い。


――眠れなかった。


理由は、

分かりきっている。


隣で眠っていた、

北月のせいだ。


夜のあいだ、

ずっと、

どきどきしていた。


自分に、

こんな感情が残っていたこと自体が、

意外だった。


前の世界でも、

こんなふうに誰かの存在を意識して、

眠れなくなったことなんて、なかった。


寝台で、

すぐ隣にいる。


それだけで、

呼吸の音が気になる。


寝返りを打つ気配に、

心臓が跳ねる。


……見たい。


でも、

万が一、目を覚ましたら。


「気持ち悪い女」


そう思われたら、

それだけで、

胸がきゅっと縮む。


だけど。


少しでいいから、

触れたい。


声が、

聞きたい。


そんな気持ちが、

胸の奥から、

じわじわと溢れてくる。


昨日、

会ったばかりなのに。


どうして、

こんなに強く惹かれるんだろう。


一目惚れ?


……いや、

確かにイケメンだけど。


こんな一瞬で、

ここまでおかしくなるのは、

普通じゃない。


月と太陽の、

力のせい?


それとも。


今までは、

他の月の神たちと

定期的に儀式をしていたから、

自然と力が循環していた。


でも今回は、

まだ一度も、していない。


太陽の力が、

溜まっている状態だから?


……ああ。


触れたい。


自分から、

儀式をお願いしようか。


でも。


寝てるし。


さすがに、

起こしてまでは……。


明日、

うまく儀式に持っていけるよう、

流れを作ろう。


そう自分に言い聞かせた。


夜が更けても、

全然眠れなかった。


でも、

外が明るくなり、

天窓から月が消えたころ。


不思議と、

気持ちが落ち着いて。


そのまま、

眠りに落ちたのだと思う。


――そして。


目を覚ましたとき、

隣には、

彼はいなかった。


胸の奥が、

すっと冷える。


……いない。


とりあえず、

彼を探す。


宮の中を、

ひと部屋ずつ見て回る。


いない。


風呂?

それとも、庭園?


どこにも、

気配がない。


ちょうど、

世話係の清掃の鈴が鳴った。


扉を開けに、

入り口へ向かう。


その間も、

北月の姿は、

一度も見えなかった。


少し落ち着こう。


そう思って、

食事を取るため、

食堂へ向かう。


――いた。


椅子に座って、

何かを食べている。


胸が、

一気に跳ねる。


向かいに座り、

思い切って声をかけた。


「……おはよう」


北月は、

こちらを見た。


視線が合う。


でも、

返事は、ない。


……やっぱり、

そういう人か。


気まずさを噛みしめながら、

私も食事を取る。


皿の音だけが、

やけに大きく響く。


沈黙。


耐えきれなくなって、

私は、

勇気を出した。


「……あの」


北月が、

わずかに視線を向ける。


「今日、

儀式をしたいんだけど」


声が、

少しだけ震えた。


「いつが、いい?」


言葉を投げた瞬間、

胸の奥が、

きゅっと締まる。


――さて。


この沈黙の神は、

どう答えるのだろう。

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