バス停で雨宿り中、元聖剣に「好きだ!」と叫ばれた元勇者
『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』参加作
1000文字のBLラブコメです。
青空の下、僕は大の字になって寝ていた。
勇者として戦い、魔物を全て倒したところだ。
その達成感に満たされ、腹の底から笑い出したかった。
ふと顔を横に向けると、折れて大地に突き刺さった聖剣がある。
僕は最後まで一緒に戦ってくれた聖剣に礼を言った。
「ありがとうな、相棒」
満たされた気持ちで目を閉じ、僕は勇者の一生を終えた。
という記憶があるが、今は日本の高校生だ。僕は英雄から陰キャに転生した。
ある日、ぼっちを満喫していた僕のクラスに金髪碧眼ハーフの転校生がやってきた。彼は僕を見るなり、号泣しながら抱きついてきた。
「お前、勇者だよな! 会いたかった!」
彼は聖剣だった。
なんで金髪なんだ。
柄が黄金だったからか?
色々とツッコミたかったけど、骨が折れそうなぐらい抱擁されて、僕は声を出す前に気絶した。
「ハッ、勇者! 死ぬな!」
いや、お前のせいじゃんと思った。
それから彼と話をしたけど、マジで聖剣だった。旅の記憶をすらすら言うんだ。
「野営の時、お前ずっと、俺を抱きしめてくれたよな」
「いつ魔物に襲われてもいいようにしてたな」
「俺の体を綺麗に磨いてくれたし」
「錆びないようにな」
「傷を負ったお前が心配で慰めたかった」
「無機物だったし、喋れないよな」
「今はお前と会話できて嬉しい」
チワワみたいな顔をされて、絆されそうになった。でも今の聖剣は、陽キャなイケメンだ。彼にはひとりの人間として全うに生きてほしかった。
「前世は前世。今は今だろ。僕に構う必要はないぞ」
「俺はお前と一緒にいたいんだ」
何度、説得しても聖剣は折れず、結局、僕たちは一緒にいた。
学校の帰り道、豪雨に遭った僕たちは走りながら人けのないバス停に駆け込んだ。
「大丈夫か?」
雨に濡れた聖剣は妙な色香を放っていた。ドキリとした自分が嫌で、そっぽを向く。すると、聖剣が僕の手を握ってきた。思わず振り払うと、聖剣はしょぼんとした。
「……俺のことが嫌いか?」
子猫みたいな顔をすんなよ。
僕が悪いみたいじゃんか。
「誰かに見られたら誤解される」
「他の奴なんてどうでもいい。俺はお前が好きだ」
熱っぽい目で見られ、再び手を握られた。
「俺はお前限定でBLだ!」
雨宿り中に愛を叫ぶなよ!
あーもー、本当にしょうがない奴。
冷えた体がじわじわ熱くなるのを感じながら、聖剣の手を握り返した。
「今世でもよろしくな、相棒!」
僕がそう叫ぶと、聖剣は最後の魔物を倒した時のようにパッと輝いて幸せそうに笑った。
なろラジでBLを朗読をしてほしい。その野望を叶えるために書きました!




