9、馬車はお尻が痛い乗り物です
馬車の旅。
一度は憧れたものではあるものの、実際にはかなり大変だった。
「お尻痛い……」
「まだ二日目ですわよ」
「お尻の痛さには関係ないじゃん」
ずっと木の床で揺れる車内に座り続けるのが耐えられなかった。
カバンに詰めていた布でクッション的なものを作りはしたものの、お尻の痛さはほとんど軽減されない。
「ノノは大丈夫なの?」
「あたくしは大丈夫ですわ」
「はえ……鋼鉄の尻だね」
「だから、そういう不名誉なあだ名をつけるのはやめてほしいですわ」
「ええー、いいじゃん」
私はそう言いながら、立ち上がる。
「ちょっと、危ないですわよ」
「大丈夫ー」
揺れる車内が危険だとノノが言うが、こう見えても、私は畑仕事で鍛えたりしてきた経緯があるのだ。
少し揺れる程度では、不動にして動くことはない。
「でも、少しずつ増えたね」
「そうですわね」
私の言葉にノノは頷く。
場所の中、最初は私とノノ、他の村から来ていた男五人の七人だったが、今では四人増え十一人になっている。
「後どれくらいかかるんだっけ?」
「今日は次の街でまた、泊まるので、明日からとなれば三日になりますわね」
「その間お尻の痛みに耐えないといけないんだ。キツイなぁ……」
そんな私たちが乗っている馬車というのは乗り合い馬車だ。行き先は王都であるゴルドキング。
乗っているのは、主に魔法学園へと入学するための子供たちだ。
毎日、乗り合いのところの村を経由しているものの、あまり人が増えるわけではない。
それは、王都までの馬車のお金が高いからだ。往復でも、普通の人たちが半年以上働いてようやく手に入るお金なのだ。
もう一つは……
「ねえ……」
「何かしら?」
「もう、勉強はいいじゃん」
「ダメですわ。数術も語学もできるのですから、後は歴史だけですわよ」
「そもそも、やりたくないの」
そう、勉強が必要だ。
既に街の中で泊まる宿の部屋で二人で教材を広げていた。
というのも、魔法学園に入学するのには試験が存在しているからで、試験に受からなければ、村へと戻らないといけない。よって、魔法が使えるだけでもダメらしい。
「やりたくないー」
「はあ……あなたは……なんで、こう面倒くさがるの?」
「面倒くさいんじゃなくて、歴史だけ多いの!」
私はノノに文句を言った。
だって、魔法についての歴史と書かれた本には、これまでの魔法についてと書かれていたものではあるが、長い。
どれほど長いかと言われたら、それだけで三百を超えるページがある。
「そもそも、書かれてるところにこれ!」
「詠唱ですわね」
「簡単な使い方が書いてあるじゃん」
歴史と書かれた中に、魔法を簡単に使う術が書かれており、それというのが詠唱だった。
詠唱をすれば、魔法を誰でも扱うことができると書かれていた。
「ですが、それにはちゃんと欠点がありますわよ」
「あー、魔力枯渇ね」
「ええ、魔力が枯渇したまま詠唱し魔法を扱うと死ぬ。それは確実ですわ」
「急にすごいことを言うね」
「仕方ありませんわ。あたくしは前世で見てきましたもの」
ノノはそう言って、少し寂しそうにする。
何を見てきたのだろう?って聞くのは難しいよね。
「ねえ、この詠唱する魔法って、今でも使えるの?」
「使えますわ。でも、簡単に使えるからこそ、魔法の威力というものは調整できませんわよ」
「それって、まずいの?」
「当たり前ですわ。魔法というものには魔力を使います。体に内包されている魔力は人それぞれなのですわ。そして、誰も自分の内包されている魔力がわかるわけではありませんわ。限界にきてようやく気付くのですわ」
「あー、なるほど」
そんな状況になって魔法を使うということは、極限の状態なのだろう。例えば、戦争とか……
チラッと歴史を見ると、魔法はやはり戦争の要素が強い。
今では研究のためにや、国を豊かにするためにと書かれているが、何かが起これば魔法は人を殺す道具となるだろうことはわかる。
ま、そんなことにはなってほしくないかな。
私はそう考えながらも、「勉強さますわよ」とブンブンと魔法の歴史が書かれた本を振り回すノノにやれやれと隣に並ぶのだった。
※
「どうだ?使えそうなやつらはいるか?」
「何人かいるみたいだ」
「よし、明日の街で決行だ」
「わかった」
男たちは不適に笑うのだった。
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