8、村を出るって今?
「眠い……」
「大丈夫ですの?」
「大丈夫じゃない。絶対に昨日、ちゃんとお風呂に入らなかったせいだ」
「はあ、そういう冗談を言えるのなら、大丈夫ですわね」
「ええ、酷い……」
私が苦しんでいるというのに、本当に酷いと思うのだけれど、ノノはむしろやれやれといった感じで仕事へと向かって行く。
そして、何かを思い出して言う。
「そういえば、明後日には村を出るんですのよ。ちゃんと準備をしましたの?」
「うん?うーん?」
「どうかしましたの?」
「ごめん、どういう意味?」
「ビビは魔法学園に入学するんでしたわよね」
「そうだけど」
「でしたら、諸々の手続きもありますし。一か月以上の前にはなりますが、明後日には魔法学園がある王都へと向かうという話は、あなたにも、あなたのご両親にも伝えましたのよ」
「うーん……」
おかしいな、そんな話あったっけ?
そこで私は思い出す。
少し前の会話、そうお風呂に入っていたときのこと……
「そういえば、ビビはもう用意を済ませましたの?」
「えー、何が?」
「明日には、一緒に王都へと向かう人たちが他の村から、この村へと集まってきますのよ」
「そなのー」
「ですので、ビビも準備も含めてちゃんとしてくださいね」
「わかってるよー」
言ってた!言ってたよ、確かにね。
最近はお風呂のことでいっぱいいっぱいだったし、本当に他のことについてはあんまり興味がなくなっていた。
その結果、ノノの話を全て右から左へと聞き流していたらしい。
「ビビ……あなた、今思い出したという顔をしませんでしたの?」
「そ、そんなわけないよ」
「はあ……こういうところは本当にわかりやすいですわね」
ヤバイ。
ということは、昨日から来ていた他の村の男五人というのも、なんでだろうとか思っていたけれど、その関係だったということに今更気づく。
「もう少し他人に興味をもちなさい、あなたは……」
「わかってるよー」
既に重要なことを聞き逃しているのだ、こうなってしまっているのはさすがによくないということをわかっているからだ。
最近になって、魔法というようやくの異世界の産物を使えるようになったおかげで、ほんの少しにはなるけれど、これまでは完全に諦めていたことができるようになったのはいいけれど、だからこそちゃんとしないといけない。
「ねえ、ノノ」
「なんですの?」
「何かあったら、私のことをちゃんとみてね」
「それって、あたくしに尻拭いをしろって言ってませんの?」
「ソンナコトナイヨ」
「そう思うのでしたら、あたくしのほうを見なさい!」
「ええー、ちょっと無理かな」
私はそう言葉にして逃げる。
ノノは、そんな私を追いかけながら、いつものように仕方ないと笑うのだった。
二日後。
「じゃ、行ってくるね」
「気を付けるんだぞ」
「嫌なことがあったら、帰ってきたらいいからね」
「大丈夫だって」
心配そうに言葉にする両親に挨拶をすると、私は馬車へと乗り込む。
既に乗り込んでいた他の村から来ていた子供たちが、私を見て少しコソコソとしているのは、最初のことがあるからだろう。
ま、あれから村のことも少し手伝っていたみたいだからいっか。
そんなことを考えていると、最後にノノが入ってくる。
「ごめんなさい。お待たせいたしましたわ」
「では、揃いましたね。出発します」
馬車の運転手が言い、進み始めた。
八年近く過ごした村から出ることに、少しワクワクしたのは言うまでもない。
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