7、新しい要素が増えた?
午後の手伝いは、気まずかった。
「うふふ……」
「お母さん、少し離れてほしんだけど」
「いいじゃない。ビビちゃんが誇らしいんだもん、お母さん」
どうしてこういうときに限って、昼からの仕事を確認していなかったのか……
あんなことを言った後にこんなことになるとは予想していなかった。
普段といえば、子供らしくないと言われていたとは思うものの、よかったのか悪かったのか、あのときはかなりカッとなってしまった。
「すごくかっこよかったですのよ」
「ほら、ノノちゃんもそう言ってるよ」
「あははは……」
私は愛想笑いを浮かべることしかできなかったけれど、芋を潰す手は止めなかった。
夕方。
一通りの作業を終えた私とノノは、お風呂に入れなくはなったものの近くに来ていた。
「これは、直りますの?」
「どうなんだろう……」
やったことがないから、正直わからない。
とはいうものの、学園が始まるまではもう少し時間がある、それまでに直せればいい。
そんなことを思いながら、うーんと直す方法を考えているとノノが話す。
「ねえ、ビビ」
「どうかしたの?」
「ビビは、子供なのかしら?」
急な言葉に、私は少しドキッとしながらもとぼける。
「何が?」
「ビビならば、そうとぼけるということはあたくしだってわかっています」
「そうなの?そもそも、私が子供じゃないってどうして思うの?」
「それは、あたくしが元々子供ではないからかしら……」
「ど、どういう意味?」
ノノのカミングアウトに、私はびっくりした。
だって、ノノは見た目も反応を見ても、どう考えても子供としか思えなかった。
「じゃあ、何歳なの?」
「元々が、十六でした」
「子供じゃないの?」
「え?」
「あ……」
しまったと思ったものの、時すでに遅しだった。
元々、この世界での成人というのは十四歳だから、十六といえば立派な成人となるが、もう面倒なのでこの世界ではない記憶を持つ私とすれば、十六といえばまだ子供といえる年齢だった。
とはいうものの、確かにノノには違和感があり、その最も感じるのが口調だろう。
村長の娘とはいえ、村の中にいるような子供が話すような言葉使いではなかった。私が知っているのであれば、あれは貴族とかその辺りの人が使うものだと考えていた。
「じゃあ、ノノは昔は偉い人だったり……」
「さすがは、ビビかしら、そんなこともわかるなんて」
あー、やっぱり予想通りだった。
こんな話し方をしているくらいだから、なんとなくそんな気はしていた。そもそもこんな田舎の小さな村でお嬢様口調で話すような人などいることがおかしいからだ。
「それで、転生者?でいいの?」
「いえ、記憶保持者。あたくしは自分のことをそう呼んでいますわ」
「ふーん、なんかカッコいい名前にしましたって感じね」
「そ、そんなことを言われると恥ずかしいですわ」
魔法でも中二病っぽかったというのに、さらなる中二病的設定があるとは思ってもみなかった。
確かに私には、過去の記憶がある。こことは違う世界の……
でも、一度も思い出そうとはしていなかった、どの年齢まで生きていたのだろう?私は、なんとなく昔のことを強く思い出そうとする。
「ぐ……」
「どうしましたの?」
「ううん、べっつにー」
「本当かしら?」
急に頭が痛くなったことで、思わず私は顔をしかめるがなんとか誤魔化す。
どういうこと?私は、死んでて、転生したかそのときの記憶が今あるんじゃないの?って、今はそんなことを考えても仕方ないじゃん。
今は……
「その記憶保持者である、ノノは私に何を言いたいの?」
「ビビはあたくしと一緒にこれから、この世界を変えてほしいのよ」
「世界を変える?うーん、私には言ってることがわからないんだけど」
「今はわからなくても大丈夫ですわ。でも、すぐにタイミングはやってくるわ」
ノノはそう言うと、ゆっくりと家のほうへと帰っていく。
私も、ノノが見えなくなったのを見て、同じように家へと戻る。
家では、母親が父親に今日のことを嬉しそうに話しており、のんびりと話を聞いていた。
「はあ……何を言いたかったんだか……」
ノノの言葉を思い出しながら、私は考えるけれどわからない。
何を言いたかったのか……
時がくればわかるってことを言ってたけれど、それがいつなのかもわからない。考えている間に、私は今日怒ったこともあって眠りについた。
「はあ、はあ……」
「何をしてるの?」
「○○のよ」
「ふーん、だったら異世界にでも行ってみれば?」
「はあ?何を言ってるの?」
「大丈夫、○○のと異世界に行くのは同じだから」
「なにを……」
「はあ、はあ……何?」
かなりの寝汗にびっくりしながらも、先ほど見ていたはずの夢を思い出そうとする。
だけど、何も思い出すことはできない。
「何なのよ、本当に……」
私は頭を抱えながらも、もう一度寝るべく目を閉じるのだった。
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