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異世界美の追求 ~綺麗になるために魔法を研究した私が賢者になるまで~  作者: 美海秋


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6、当然のことを言っただけ

 次の日というのは、うるさい音で目を覚ました。

 最初はいつものように、ノノが来たのかと思ったが、どうやら違ったらしい。

 騒がしいのは村全体のようだ。


「なに?」


 魔法を村のために活用し始めてから、朝の草引きもしなくてもよくなり、両親よりも遅く起きれるのは、特権ではあるものの。

 いつもとは違う雰囲気に、準備をすぐに済ませると家から出た。

 そこでは、五人くらいの子供が何かをしているようだ。


 何をしているのかはわからないが、ノノがその五人に話しをしているらしく、それが騒がしいと感じた。

 うーん、今日のやることも聞きたいし、面倒くさい気がするけど、近づいてみよう。

 私はそんなことを考えながら、ゆっくりと近づく。


「だから、どうして壊したのかしら」

「壊したってか壊れたんだよなあ」

「ええ、ちょっとゲゲ様が触れただけなんですがねえ」

「そういうことだ、仕方ないだろ?」

「この……隣の村から来たら、問題を早速起こして、ありえませんわ」

「おいおい、そんなことを言うなよ」


 どうやら、隣の村からやってきた男五人は何かを壊したらしい。

 うーん、何を壊したんだろ?それに、ノノがこれだけ怒るのも珍しい。

 まあ、いいや。


「ノノ、おはー」

「ビビ、おはようございます。あの……」

「どうかしたの?」

「いえ……」


 どうかしたのだろうか?

 ノノは何かを言いにくそうにしている。

 だけど、ノノの話しが中断されたことで、説教は終わったといわんばかりに、五人はその場を離れていく。


「あ、こら!」


 ノノが怒るが、止まることはない。

 私も面倒なことに巻き込まれるのは嫌なので、ノノに言う。


「まあまあ、いいじゃん。とりあえず行こ」

「ええ」


 少し気まずそうにしているノノと、昨日出来上がったお風呂を見てから次の仕事へと行こうとしたのだが、そこでノノが気まずそうしている理由がわかった。


「は?もしかして……」

「ごめんなさい、あたくしが気付いたときには……」

「ううん、ノノは気にしないで」


 そう言葉にしながらノノは少し涙目だ。

 ノノの反応から、やったのは絶対にあの五人だということがわかった。

 後で覚えておけよ……

 心の中で怒りを燃やしながら、ノノをゆっくりと慰めるのだった。


 その後、午前の作業を終えてお昼に、五人はさらに問題を起こした。

 村ということもあり、お昼は作業場の近くでご飯を食べることが多い私たちのもとに、その声は響いた。


「結局芋かよ、まっずいなあ」

「ええ、お客様なんですからもっといいものを持ってこいってもんです」


 バカにしたようなもの言いに、カチンときたものの、気にしないでおこうとしたが、ゲゲと言われた男が持っていた芋を投げ捨て言う。


「ちっ、食えたもんじゃねえ……」


 その瞬間、私はゆっくりと立ち上がると、男に向かっていく。


「ビビ?」

「うん?」

「その、なんでもありませんわ」


 怒っているということがわかったのだろう、ノノは何かを言おうとしたもののやめる。

 私は近くまでいくと、ゲゲに向かって言い放つ。


「おい、ガキ」

「ああん?ガキってお前もだろうが」


 ゲゲは言われた言葉に腹が立ったのが言い返してきたが、そんなゲゲを私は蔑むような視線を向けてさらに言う。


「お前は、どれだけ偉いんだ?ああん?」

「は、だからお客様だ……」

「へー、お客様だと言うなら、ほら接待料(せったいりょう)払え」

「何を言って……」

「対価を払わずに、いろいろしてもらったんだろ?だったら金を払え、当たり前のことだろ?」

「そんなもんは……」

「持ってないなら帰んな!」


 私の本気の怒りで、ゲゲは完全にたじろぐ。

 だけど私には関係なく、さらに詰め寄る。


「子供だからって、何をしていいとでも?それともあれか?常識を教えてもらってないガキなのか、ああん?」


 下から睨みこむようにする姿は、言ってしまえば、(やから)そのものだが、見た目が子供なのでそこまでの怖さはないだろう。

 とはいえ、ゲゲは何も言えなくなっている。


「あんたが捨てた芋。これだって、この村の人たちが頑張って作ったものだ。わかるか?」

「……でも……」

「でも、なんだ?」

「まずいんだよ!わかるだろ?同じものだ、どの村でも蒸した芋がメインなんだからな」

「はあ……これ、食ってみな」


 私は持っていたものを差し出す。


「これは、なんだ?」

「芋を潰して、しっかり焼いたものだけど」

「う、うめえ……冷えてるのにカリッとしてる」


 そう、記憶の中にあるものの一つに、ハッシュドポテトというものがある。

 この村には、というよりも世界には片栗粉がなかったものの、昔の昔。嫌々ながらもさせられた自由研究で、一から調味料を作ってみようなどというのが、未だに頭の片隅にあったのがこれを作ることになったきっかけだった。

 まあ、私だって芋を蒸すか茹でるかくらいでしか食べれないことには飽きていた。

 その中で思いついたことだとして、お母さんに教えた後、家だけでなく村でも作ってはいるものだったが……


「あんたたち以外はたまにこれを食べてるの、わかる?」

「どういうことだよ。こんなにうまいものがあるならくれれば……」

「だから、そのためにあんたたちは何かしたの?」

「それは、何も……」

「だったら、最低限なものしか与えられないって当たり前のことじゃないの?」

「そうか……」

「わかったらほら、村長の元へ行って、仕事がないか聞いてきな!」

「は、はい」

「ゲゲ様」


 五人は慌てて離れていく。

 これだけ言えば、村長に仕事をもらえるだろう。

 任せて大丈夫だよね。


「あ……」

「ビビ、どうかしましたの?」

「私のご飯……」

「もう、あたくしのものを半分あげますわ」

「ありがとう」


 先ほどの怒りから、元の私に戻ったことでノノも笑顔になって持っていたものを差し出すと、私はパクっと手ごと優しく噛む。


「ひゃ!こら!」

「いひひひ、ごめんごめん、ありがとう」

「こちらこそ、ありがとうですわ」

「何がー?」


 私は言いたいことを言えたことに満足しながらも、午後からの仕事に備えるのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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