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異世界美の追求 ~綺麗になるために魔法を研究した私が賢者になるまで~  作者: 美海秋


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5、ようやくの癒し

 土の箱を直してから数日後の休み。

 私はまた浴槽を作り始めていた。


「どうして、あたくしが手伝わないといけないのかしら?」

「ええー、いいじゃん。一緒にお風呂も入りたいし」

「それは……」

「あ!今、何かエッチなことを想像したな?」

「しておりませんわよ!」


 顔を赤くして否定するノノをいつものようにからかいながら、二度目の浴槽は少し小さめに完成した。

 ちょうど、私とノノの二人でなら入れるくらいの大きさだ。


「いい感じだね」

「最初よりは少し小さくしましたわね」

「うん、大きすぎると土の箱に収まらないじゃん」


 最初よりも小さくしたのは、そうした理由があった。

 ノームのおっちゃんのところで見させてもらった土の箱。たぶん記憶の中であれば、窯になるのだろう。

 あれは焼くもの全体を覆う必要がある。

 通常、鍋などであれば、大きさを考えると毎回取り出せるけれど、人が入る浴槽となれば話しは別だ。


 先に浴槽を作り、その周りを覆うようにして土の箱を作る必要がある。

 浴槽のように形はそこまで気にしない。

 あそこで見た土の箱を真似して作っていくとあっという間に一日は過ぎた。


「おつかれー」

「本当に疲れましたわ」

「ありがとうー感謝してるよー」

「そういう適当な感謝の言い方をしなくていいですわ」

「ええー」


 そうはいったものの、二人ともかなり楽しみだったのは言うまでもなく。

 さらに日は早く過ぎていった。

 その間も、二人が作った土の箱は、それなりになんだあれとはなったものの、ノノが魔法の練習でと言えば、簡単に信用された。


「よし、火加減もオッケー」

「それはよかったですわね」

「何ー?何か気になるの?」

「明日から、隣村の子供たちが来ると聞きましたの」

「ふーん」

「その中に厄介なものがいるのは知ってるかしら?」

「ええー、知らない」

「はあ……いつもそうおっしゃりますわね」


 ノノはため息をつきながら、少し頭を抱えている。

 なんでかというのはわかっているものの、私にはそんなことよりも大事なこと、この浴槽作りをやっているからだ。


「それで、あとどれくらいですの?」

「ふふん、あと少しだよ」


 私は楽しさを噛み締めて言う。

 完全に土が乾くのに一日。浴槽に火入れを一日。そして、冷却に今日の朝までかかり、ようやく今は水を溜めた浴槽に火をかけていた。


「どうですの?」

「これだけ大きいから、ゆっくり温度を上げないと」


 そう、これと同じ素材で作られたお鍋を使うときに注視していたところ、ゆっくり温度をあげる必要があるのを知った。

 最初のときのように割れてしまうわけにはいかない。

 さあ、ゆっくりゆっくり……


「ふへへへへ」

「なんでそこまで気持ちの悪い笑顔を見せられるのかしら」

「気持ち悪い?しっつれいな!楽しんでいるんだから、むしろ気持ちよさそうって言ってよ」

「むしろそっちのほうが気持ち悪いと思わないのかしら」

「ええ、そういうことを言っちゃう?」


 ぶーぶーと口を尖らせてノノに不満を口にする。

 そんな姿を見たノノは相変わらずのため息をつく。

 他愛のない会話をしながらも、ゆっくりと温めていった浴槽の水はお湯になった。


「よし、これならいけそう」

「いけそうって、下の火があたっている場所は熱すぎるのではありませんの?」

「ふふふーん。大丈夫だよ。これを持ってきたからね」

「そ、それは木の板ですか」

「そうそう、これをこう……」


 私は持ってきていた木の板を沈める。

 本当はすのこがよかったが、浴槽の火があたっている部分に直に触れなければ、大丈夫だろうとわかっていたため、これで大丈夫だろう。


「なかなかやりますわね」

「うんうん、もっと褒めていいよ」


 私はそう言葉にしながらも、待ちきれなくて服を脱ぐ。


「ちょ、ちょっと」

「なにー?」

「恥かしさとか、ないのかしら……」

「何を言ってるのさ、私たちはまだ子供だよ。見られても減るもんじゃないじゃん。そのために、一応バリケードみたいなものも作ったんだし」

「それはそうなのですけど……」


 バリケードを作ったというのも、周りから見えなくするというのもあったが、この浴槽を作るときに使った土の箱だった。

 ただ破壊するのではもったいないと考えた結果、こちらを隠してくれるものにしたのだ。


「ふふふーん……おお、ふおおおおお……はあ……」

「な、なんですの?!」

「気持ちいい……」

「はあ、何をとろけたような顔をしておりますの……」

「まあ、入ればわかるって」


 呆れたように私に言うノノではあったが、恐る恐る隣に入ってくる。

 最初はお湯というものの熱さに少し戸惑っていたものの、少しすれば慣れてきたようで……


「ふう……」


 そんななまめかしい声が出る。


「な、なんですの?」

「べっつにー」


 思わず笑みがこぼれてしまいながらも、ようやく完成したお風呂に、癒されるのだった。


 ようやくお風呂に入れた私は、いつもより気持ちよく眠りにつく前に考えていた。

 今度の快適化計画といえば、何かと……

 一番に考えるのは、この髪と体だった。

 この世界では、自分の体を洗う石鹸というものがない。

 多くは自然の中にある、アワの実と呼ばれるものを潰すことでできる泡を使って洗っているが、あまり綺麗になっている感じはしない。


「肌にもちょっと刺激があるし」


 そこも問題だった。

 食べた後のもの、食器などを洗うときに使うことが多く、あれで体を洗うなどといえば、強すぎて私みたいな子供だと肌荒れをするだろう。


「あー、気になるところがありすぎる」


 思わずそんな言葉が口をつく。

 仕方ない。

 お風呂に入れた、まだそれだけなのだから……

 でも少しだけやりたいことができるようになった。それは進歩だった。


「とりあえず今日は寝よ……」


 そんな言葉を口にしながら、気づけば眠っていた。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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