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異世界美の追求 ~綺麗になるために魔法を研究した私が賢者になるまで~  作者: 美海秋


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3、共犯者を作ろう

 魔法の本を読み始めて二週間がたった。

 あれから眠たいのを我慢しながら、人の中二病日記を読む毎日を過ごしている。

 半分ほど読み進めたところでわかった内容というのは、魔法というのは世界にある自然を理解することで、扱うことができるものらしい。

 自然を理解すればするほどに、扱える自然エネルギーが増えて、魔法は強くなる。


「中二病すぎる……」

「何度も何をいってるのです?」

「え?魔法が難しいって話……」

「ああ、それはあたくしもわかりますわよ。魔法は難しいですわよね」


 難しいんじゃなくて恥ずかしいんだよ!

 そう大声で言いたいが、中二病という言葉がない世界では、何を言ってるんだと思われるのが関の山であることはわかっていた。

 そもそも自然を理解するっていう、曖昧な表現はなんなの?原理がわかっても、どうやってなったのかがわかんないんだって……


 私の指に火が灯る原理というのは、予想していた通り指パッチンの摩擦によって火をつけているみたいなのだけれど、ノノに同じようにしてもらっても、火がつくことはなかった。

 よって、魔法は本が書いているように、自然を理解できているかどうかで使えるかどうかが決まることがわかってしまったため、絶望していた。

 あー、本当に私の過去の記憶を消してくれ!

 こんな頭脳は大人、体は子供状態でこの世界の魔法原理を知ってしまうことは絶望でしかない。


「やだ……辛い……」


 思わず再度口にしてしまうが、私は自然を少しずつ理解することがわかってしまった。

 一度違う人生を体験しているから、その経験が生きているのかもしれない。

 かなり詳しいわけではないけれど、一通り元の世界で学んでいる人からすれば、自然の中にあるものはなんとなくわかる。

 水ができる化学式、水素と酸素。

 合わせると水ができるくらいのことは知っているけれど、水素と酸素を知覚などできない。

 そんなことをいえば、指パッチンでできる火花も全く見ることはできない。


 あーあ、こういうところは本当に異世界って感じなんだけど……

 一応、魔法をもう一つ使えるようになったんだよね。


「土魔法とは、やりますわね」

「ありがと、ありがと……」

「どうして、そうやる気がないのよ」

「えー、土魔法って……何かとは言いずらいけど、使いにくいじゃん」

「確かに、発動までは少し遅いですわね」

「でしょ」


 次に使えるようになったのは土の魔法だった。

 先ほどの会話の通り、土魔法というのは発動までに時間がかかる。

 土に触れてないと発動しないことは私でもわかるけどさ、発動までかかる時間がこんなに長いの?魔法って、ある程度は思った通りにすぐに発動するものじゃないの?後、触ってある程度土の感じがわからないと発動しないとか、条件が厳しすぎるんだけど……

 この世界で草引きだったりをしていたおかげで土のことについても、わかってきたことによって、土魔法が使えるようになったと考えると、それをしなかったら魔法は使えなかっただろう。


「もう少し使えるいい魔法がほしいんだけど……」

「何を言っていますの?土魔法は、この村ではかなり有用な魔法ですわよ」

「そうなんだけどさあ……」


 土魔法を習得したおかげで、魔法の扱いにも慣れたと思われた私は、魔法練習のためにノノと魔法でできることを少しずつ手伝うことになった。

 土魔法でできることが、地面をボコボコと操ることができるというもので、これによって地面を耕すことに成功している。

 そして、このころには最初に使えるようになった火の魔法は大きさを自分で調整できるようになっていた。

 今では頑張れば自分と同じくらいの大きさまでの火を扱うことはできるものの、安心して使うためには手の大きさくらいのものが一番身の丈にあっている。

 今では火を使って家のものに火をつけるのは私の役目となっていると考えれば、火を扱えるようになってよかったのかもしれないけれど……


「なんとなく、これじゃないんだよね」


 部屋の中で考えることは、そのことばかりだ。

 魔法といえば、攻撃したり防御したりの戦闘系が思いつくが、どれも戦闘には向かない。

 じゃあと今度は、魔法で何かすごいものが作れたりするのかといえば、わからない。


「あー、こういうときに前世でもっと知識つけてたら……」


 よって考えることは、それだ。

 物語ではよくある、前世の知識を活かしてとあるが、前までいたのが全て検索すればある程度のことがわかる世界となれば、便利なものと言われてもわからない。


「でも、一つだけ気になることはあるんだよね」


 そう、魔法を覚えたおかげというよりも、ノノの家に行くようになったおかげになるが、一つあるものを見つけた。

 それは陶器と呼ばれるものだ。

 普段つかっている食器や桶などは、全て木でできていたこともあり、特に桶に関してはつなぎ目から水などが漏れるため中身がなくなっていったりする。

 家でもお鍋に関してだけは同じく土で作った鍋が使われていることを最近知ったからこそ、注目していた。


「ほんとは鉄があればいいけど、貴重すぎるし、だったら陶器……あ、土鍋か!あれを作ってみるしかないよね」


 明日からやることの一つというのに、それがあった。

 事実、今日は土をこねて焼いて作る鍋や茶碗の手伝いである土を混ぜるのに土魔法を使った。

 あれで、粘土質というか、そういうものの感覚は掴んだんだよね。


 そして翌日、私は土魔法を使いながら、土の状態を確認していた。

 どこが使える土かなー……

 あのときの土の感覚を思い出しながら、探していると、上から影がさす。


「毎回思いますが、何をしてるのかしら?」

「ノノ、気になるの?」

「あたくしは別に気になったわけではないですわ。時間ですわよ」

「ええー、ここ最近毎日勉強してるじゃん、休憩がいるって」

「何をおっしゃるのかしら?あたくしたちが通う魔法学校まで、あまり時間がありませんのよ。やれることはやらないとダメですわ」

「ええー……」


 これだけ毎日やっているというのに、まだやるのだという。

 子供だというのに、働きすぎはよくない。本当にそのことをわかってない。

 これは少しそそのかす必要がありそうだ。


「ねえ、ノノ」

「何かしら?」

「温かいお風呂に入ってみたくない?」

「温かい?お風呂?」

「うーん、簡単に言ったら水浴びを温かいお湯でしないってこと」

「ええ?やけどをしません?」

「しません。何度のお湯に入るつもりなのよ」

「いえ、ですが、考えたことがありませんでしたが、それは気持ちいいものなのかしら?」

「当たり前じゃん、温かい布で体拭くと気持ちいいでしょ?」

「それはわかっていますわ」

「だったら、それも気持ちいいと思わない?」

「そうなのかしら?」


 気持ちいいという言葉に、かなりの堅物であるノノも反応を示している。

 これはもう一押し。


「それに、こんなこと、魔法じゃないとできないよ」

「そ、そうですわね。聞いたことがありませんもの」

「でしょ?」


 勝ったな。


「魔法の練習にもなるし、作ってみない?」

「そこまで言うのであれば、仕方ありませんわね」


 キター。

 思わず小さなガッツポーズを取るとともに、私は何をやらせようかとワクワクするのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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