10、物語は予想通りにいかない
次の日もお尻にダメージを受けながら、馬車に揺られる。
「今日も痛い」
「後少しの我慢ですわ」
「わかってはいるけどさ……」
痛いものは痛い。
こんなことをしていれば、お尻が四つに割れてしまうかもしれない。そんなことを考える。
後少しで次の街へとつく。
気づけば馬車の中にいる人数というのも十を超えた。
「ヒヒーン」
「うお!」
だが、トラブルは突然に起きる。
馬車前方の驚いた声と、馬の声から、何かが起きたのは明白だった。
中で持っていれば、運転手が説明をしてくれるだろう。
「何か起きたね」
「そうですわね」
私はノノにそう言いながらも、周りを確認するために馬車に覆われた天幕から少し外を除く。
馬車は動きを止めたらしく、動いていない。先ほどの声から、車輪などが何かに挟まった可能性が一番高い。
その予想通りで、前方の天幕が勢いよく開けられると、運転手の男が顔を出す。
「すまない。どうやら、適当に街道を直したやつがいて車輪が嵌った。ここから街までは歩いて三十分ほどだ。誰か歩いて先に行って人を呼んでくれるだろうか?」
申し訳なさそうに口にする男に、私は少しの違和感を覚えた。
「ねえ、ノノ」
「なんですの?」
「こういうときって、後ろから押したりするんじゃないの?」
「言われてみればそうですわ」
「でしょ?どうして、すぐに街へ人を呼んできてになるんだろ?」
私は気になったところをノノに話す。
ノノも、私の話しで疑問に思ったようで、少し考える仕草をみせる。
そのタイミングで、運転手の男は私とノノを指さす。
「えっと、君たちいいかな?」
よくはない。
私はそう言いたかったけれど、選ばれた理由はすぐに理解していた。
馬車に乗っている子供の中で、女性というのは私とノノしかいなかったからだ。
村を出るときにあったように、魔法学園というのは王都にあるが、そこまで行くのに必要なお金はかなりかかる。王国の重要機関とされている魔法学園では、衣食住は確約されているものの、全ては入れなければ意味はない。
よって、道中に危険があることもないとは言いきれない馬車の旅で王都へと向かうのをよしとする親がいるかどうかの違いがあった。
ノノのように落ち着いているか、私のように親が私のことをとにかく何かへ導こうとするかのどちらかだ。
よって、二人しかいない女性である私たちを指名するあたり、確実によくないのではと考えしまう。
「どうだろうか?」
「ま、いいんじゃない」
「ビビ?」
「まあまあ、お尻が痛いし、歩くのもいいよー」
「でも……」
「大丈夫」
私はノノにだけ聞こえるようにそう言葉にする。
思っていることだろう、本当に大丈夫なのかと……
確かに言いたいことはわかるし、この後の展開というのもなんとなく予想はできる。子供だからというよりも女だからにはなるだろうが、捕まえて娼婦にでもさせたりするのだろう。
普通に犯罪じゃんとは思うものの、異世界であれば、あるあるな出来事なのかもしれない。
「さてと……」
「どうしますの?」
「まずは、ゆっくり歩こうよ」
「わかりましたわ」
ノノは少し周りを警戒しながら一緒に歩く。
私としては、まだ警戒しなくていいと考えていた。
ここの街道は、左右に木が生い茂るいわば森に囲まれた場所だったりする。
「古典的だろうけど、隠れてるなら、森の中だろうね」
「簡単に言いますわね」
「まあね」
「では、来るタイミングはわかりますの?」
「それも、わかるよ。声と目が届かないタイミングだね」
そのタイミングでくる理由は、私たちの声が馬車に届かないから……森のような木には人を隠すという効果もあるし、声の反射も少し和らぐはずだからだ。
ま、欠点もあるけど。
「何をしていますの?」
「ちょっと秘密道具をね」
カバンから取り出したのは、少量の油が入った瓶と勉強するための書類を取り出す。
書類の一部を破り、そこに油を垂らす。
「何をしていますの?」
「うーんと、松明を作ってる」
「それで何をしますの?」
「もちろん、燃やすんだよ、森をね」
私はやるべきこをするべく、さっさと用意を済ませてしまう。
「ちょっと、お待ちなさい」
「なに?」
「えっと、ビビはなんていいましたの?」
「えっと、森を燃やそうかと」
「いやいやいや、おかしいですわよ。どうしてこうさらっとそんなことを言いますの?」
「そんなことって、先手必勝だよ?」
「先手必勝といいましても、何もなければ、無駄に森を燃やすことになりますのよ!」
ノノがそう言葉にするの、私は指を口にあてる。
「ちょっと、ノノは声が大きい」
「す、すみませんですわ……」
「怪しまれるとまずいし、歩こうよ」
「はいですわ」
馬車の運転手が、こういう手の込んだやり方に関与しているかはわからないが、警戒をしておいて損はない。
最初に少し立ち止まったのも、靴に入ったゴミをとるためにという仕草をして怪しまれないようにしてからやっていたりする。
「なんだか、ガキ大将みたいですわね」
「えー、そう言われると恥ずかしいんだけど」
手に持っていた丸めた紙を振り回しているのを見てそう言ったのだろうけれど、言われたほうからすれば、かなり恥ずかしい。
とはいえ、気にしていても仕方ない。私は周りを警戒する。
後少し進んだところで、馬車から私たちは見えなくなるだろう。
「ねえ」
「なんですの?」
「どう思う?」
「どういう状況か、わかりませんわ」
「だよね……」
予想通りに展開は進まない。
わかっていたことだけれど、ここまでとは思わなかった。
馬車から姿が見えなくなった街道まで進んだ結果、見た光景は盗賊の恰好をした男たちを連れていく純白の鎧を着た騎士たちだった。
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