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異世界美の追求 ~綺麗になるために魔法を研究した私が賢者になるまで~  作者: 美海秋


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1、え?魔法って、これ?

 転生。

 物語でいえば今はありきたりなものでありながらも、あったらいいなと一度は考えることだ。

 だが、転生した世界が元いた世界に比べて、あまりにも何もない世界であった場合は、憧れよりも絶望が勝ってしまうだろう。


「すごい、すごい子よ!ビビは、ねえあなた!」

「ああ、見た、俺もすごいものを見た!さすがは俺の子だビビ!」

「火を出せるのがすごかったの?」

「ええ、魔法の才能があったなんて!」

「ああ!本当にな!来年には魔法学園へ行かせないとな!」

「ええ、来年には!」


 ふーん、これがねえ……

 両親が喜ぶのを見ていても、私は特に嬉しいとは思わない。

 なんでと言われたら、この世界の文明レベルが低すぎるからだ。

 よく、異世界に転生できたらやりたいことをするんだ、キリ!みたいなことを言っている人が多くいたりするが、前までのような手元でやりたいことが完結する。

 そして、周りに頑張っている人がいるからこそ、便利なものが使えていたときの便利さを考えると異世界に来ることで不便しかないということを思い知った。

 両親から解放されたビビは部屋でベッドに寝転びながら独り言を口にする。


「あー、温かいお風呂に浸かりたい」


 まずはそこに不便していた。

 転生か、前世の記憶を引き継いだかをしたおかげで赤ちゃんの頃からの記憶もしっかりと残っている。

 唯一お風呂と呼ばれるものに入った記憶があるのは、本当に小さい頃で、お風呂というよりも湯浴みと呼ぶほうがいいだろう。

 大きくなった今では、多くの湯を沸かすことはできず、温めた布で体を拭いたり、水浴びをするかのどちからだ。

 完全に体が綺麗とは全く言い切れず、ベッドに寝転んでいれば、余計に体がベトベトなのが気になってしまう。


「火くらいしかでない」


 両親が喜んでいた魔法で、できることは、小さな火を指に灯すくらい。

 こんなもので何ができるの?簡単に火をつけるくらい?


「せめて風なら、木を切れたりできるのに」


 この世界で明かりといえば、木に火を灯したもので、私が知っている名前でいえば松明を使っている。

 松明を作るには簡単なものであれば、木の棒と油を少量浸した布だ。

 夜に外に行くためには、そういったものが必要で、家の中では暖炉に火を灯すことで明かりとしている。

 ロウソクもあるが、村ではかなり貴重な品だったりする。


「不便すぎるのよ。スマホでもあればやり方くらいは調べられるのに……」


 ない以上はどうしようもない。

 だったら木を切れる風の魔法でもあれば便利なんだけど……

 使えないよね。そもそも火が出たのも偶然みたいなものだし……


 両親が喜んでくれたものはいいものの、私には魔法の使い方などわからない。

 火が手に灯せたのも、実のところはわかっていない。

 両親からの説明というわけでもなく、火を見ていたら手から出せるのではと、火について思いを寄せていた。

 火をもし人の身で起こすのであれば、摩擦だ。

 よって火を起こすときには……


「指パッチンっと」


 指を鳴らすと、そこに体からの何かが流れ込み火が指に灯る。

 火を起こす魔法というのはこれだ。

 うーん……


「もしかして、こう?」


 私は手を振る。

 記憶では大人とはいえ、今は少女の手だ。

 来年から八歳になる身なので、どれだけ勢いをつけても腕を振ってほんの少しの風しか起こせない。


「風が強くなるとかあるかなって思ったけど、全く変化がない」


 そこから考えられるのは魔法が発動していないということだ。

 魔法……

 これは使えるのだろうか。

 そんなことを考えながらも眠りにつく。


 日が昇って、改めて今住んでいる村を見る。

 周りは木々に囲まれているこの場所は、田舎だ。

 子供とはいえ、やることはしないといけない。

 よって、朝の時間には食べ物を作る農業を手伝ったりもする。

 こんなことをしたのは本当に昔におばあちゃんの家でくらいで、綺麗になっている作物を収穫することばかりしていて、休憩前にやっていた草引きなどの作業はほとんどしたことがない。

 だから、つい文句が口をつく。


「あー、(らく)したい」

「もう、またそんなことを言ってますの?」

「あ、ノノ。やっほやっほ」

「やっほやっほではありません。どうしてあなたはいつもそう、子供なのに物言い含めて適当なのですか!」

「えー、仕方ないじゃん。私は、ここの生活が不便だとしか思わないんだもん」

「何を言っていますか?ちゃんとご飯を食べていける。これだけでいいとは思いませんか?」

「わかってるよ。けどさあ、同じご飯ばかりだとやだ。後、この時期は体が汗でベトベトになる」


 私はそう言って、汗をかいた服をバサバサと動かす。


「こ、こら!そんなことを淑女(しゅくじょ)がしてはいけませんよ!」

「えー、暑いんだから仕方ない」

「あー、もう」


 ノノは呆れたように口にすると、手で仰いでくれる。


「涼しいですか?」

「うーん、もうちょっと強くしてほしいかな」

「ここまでやってもらっておいて、まだそんなことをいえますか……」

「仕方ないでしょ、ほんとのことだもん」

「はあ、本当にビビは……」


 ノノが本日二度目のため息をつくのを聞きながら、私は少し考える。

 この村にいるとすれば来年。

 期間にすれば後三か月くらいになる。


「ねえ、ノノ」

「なんですか?」

「ノノは来年から大きな街の初等部に通うんだっけ」


 私は今更ながらにそう聞く。

 でもノノは三度目のため息をつく。


「わたくしは、すでに魔法が使えますの!」

「へえ、すごい」

「全然驚いていませんですの。というか、これに関しては、あなたに何度も話しましたのに」

「そうだっけ?」


 覚えていない内容に、私は頭をかしげて考える。

 ノノとはよく話をするから、思わず生返事をしていたこともあった。なるほど、そのときに……


「何を納得した顔をしていますの?まあ、来年からは魔法が使えるあたくしと、あなたは離れ離れになりますから、今しかちゃんとした注意をできませんの、わかります?」

「ええー、そんなことを言わないでよ。私だって、魔法使えるようになったんだよ」


 私は気だるい感じで言うと、さすがのノノも四度目のため息は少し大きい。


「はあ……何を仰っているのですか?あたくしだって、魔法を使えるようになるまで、何度も練習をしてきました。本も買って勉強をしてきました。それなのに、あなたのような面倒くさがりができるわけが……」

「パチン」

「火、火ですわね……」

「ほらね……まあ、これができたところでなんだって話なんだけど」


 昨日やったように、指を鳴らすと、小さな火が起こる。

 私とすれば、こんなものができたところで、ほとんど生活の役には立たないことはわかっている。こういう世界に転生するんだったら、もっとこうチートな能力が欲しかったんだけど……

 思わずそんなことを考えていたが、ノノはかなり驚いたようだ。


「ほ、本当に使えるんですわね」

「うん、一応ね。これが魔法ならね」

「どこからどう見ても魔法ですわよ。何もないところから、何かを生み出すというのが魔法ですので」

「ふーん。だったら、これは魔法であってるんだ」

「独学でこんなことが……であれば、すごい才能が?いえ、才能であればあたくしのほうが……」

「あれ、おーい。ノノ?草引きもう少しだけやるって……おーい、ノノ?」


 どうやらもう少し仕事をやるらしく、声が聞こえている。

 でも、ノノは自分の世界に入っているのか私の声が聞こえないらしい。

 うーん、ほっといていくか……

 立ち上がると、伸びをするとゆっくりと草引きを再開するのだった。

読んでいただきありがとうございます。

よければ次もよろしくお願いします。

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