異世界転生
男主人公の話を書きたかったので、もう一つ連載作品を上げました。
どちらも完結まで書き上げられるよう頑張ります。
大好きだったゲーム、『Savior of Journey』ことセイジャニに転生していると気づいたのはなんかあの子見たことあるな、と思った時だった。
ゲームジャンルはRPGで、ある小さな村に産まれた主人公こと救世主が神の啓示に導かれながら聖女達を仲間に加え、その力を借りて世界を救うというストーリーだった。
世界には穢れが蔓延し、その穢れに汚染された生き物は穢物と呼ばれ、世界を脅かしていた。人の集まる場所やよく使われる街道には聖女の力を込めた聖結晶石が置かれ、それは穢物を寄せ付けず人々の安寧を守っていた。
穢物は誰にでも倒せるが、汚染の元となる穢れは聖女にしか浄化出来ない。聖女は世界中に存在するが、時には自分の持つ力に目覚めないまま力を失う者も居る。
救世主である主人公は神の声が聞こえ、神の啓示を頼りに聖女を見つけ出し、その力を目覚めさせるのが役目であった。
セイジャニのRPGでありながら少し変わった点は、主人公が一切戦わない点だ。あくまで主人公の役目は神の声を聞いて聖女を見つけ、その力を目覚めさせることである。主人公は戦う力を持っていないのだ。
タイトルに救世主と入っているものの主役は聖女達であり、主人公はその引き立て役に過ぎない。かと言って少女達だけ戦わせるのはどうかと思うが、ゲームなのでご都合主義である。
聖女は一人だけじゃないんだ、と最初は驚いた。それは聖結晶石と深く関係がある。聖結晶石は数年おきに聖女が力を込めないといけない。神様が穢れに対抗する手段として、聖女が各地に生まれるようにした、と作中では伝承として伝えられていた。
聖結晶石は一人の聖女が恋人の無事を願うために結晶石に祈ったことで出来た偶然の産物らしいけれど、そのおかげでこうやって人の生活が守られている。
人の集まる場所の大きさに比例して聖結晶石も大きいものになる。街道は細かくされた聖結晶石が道の中に埋め込まれているらしい。
そんな世界で主人公は聖女を見つけ時には仲間にしつつ、神の啓示に従い穢れに侵された場所を浄化しながら救済の旅をする。
最後は穢れが湧き出た始まりの場所である落土に向かい、そこで穢れを生み出していた全ての根源である夜魔を倒して世界に平和が訪れる。
主だった目的はシンプルながら、人同士の諍いや聖女の奪い合いなど、人の闇や醜い所もしっかりと描かれている。人類共通の敵が居るのに人同士が争うってリアルだな、とプレイしながら感じた記憶がある。
他にも作中では時間制限のあるイベントやクエストもあるため、それを出来なかった際のその後の展開も変わったりと細かい所まで話が作り込まれているのがセイジャニの魅力だ。
それに一口に聖女と言っても色々あって、光属性、闇属性を使える聖女は少なく貴重で、他には風、火、水、土、雷といった属性を使える聖女で分かれている。
普通聖女って光魔法使えるのがデフォでは? と思うかもしれないが、そこもゲームなのでご都合主義だ。
ちなみにDLCでは氷属性と木属性も追加されており、更にストーリーには出てくるものの、プレイアブルとして実装されていなかった大聖女も実装していた。大聖女しか持たない聖属性はとても強く、もれなく人権キャラと言われてた。
そして何故それを今思い出したかというと、目の前で奴隷として売られている少女がその大聖女の内の一人だからである。
「大聖女が売られてるとかマジ?」
思わず貴族にあるまじき口調で呟いてしまった。とはいえ馬車の中には自分しか居ないため、誰にも聞き咎められることがなかったのが幸いだ。
小窓から御者に停まるようお願いすると、すぐに停まってくれた。護衛が馬から降りて後をついてくる。その行き先が奴隷商であることに気づいて慌てて止めてくるが、それで怯むはずがない。
「その女の子、僕が買います!」
人集りのざわめきに負けないよう、大声を出した。大人達が何事かとこちらを見て、まだ幼いこちらを見て嘲りを浮かべる。けれど懐に入れていた家紋の入った指輪を掲げると、ぎょっと目を剥いた。
「ガルマン男爵家の四男、リアム・ガルマンがその子を買います!」
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