星詩と君の指
2025年、東京の星稜大学。桜並木が春風に揺れるキャンパスで、桜井美咲、20歳の文学部生は、図書館の窓辺で詩集を手に静寂に浸る。先天性両側感音性難聴の彼女は、補聴器でかすかな音を捉え、手話と唇読みで人と繋がる。詩で心を表現する夢を抱く。「私の言葉、誰かに届くかな」。そこへ、星野陽太、20歳の経済学部生が現れる。「桜井さん!久しぶり、詩書いてるんだ!」。中学の同級生、陽太の笑顔は、美咲の静かな世界に光を投じる。
中学時代、陽太は美咲の手話を真似て笑いを誘い、彼女の心を温めた。高校で離れ、美咲は女子高で仲間外れにされた。廊下での囁き、「変な声だね」。傷ついたが、優しい友人もいた。陽太の笑顔だけが、特別な光だった。大学での再会、陽太は手話で話す。「詩、めっちゃいいな!」。美咲の指が滑らかに動く。「星野くん、変わらないね」。彼女の瞳が揺れる。陽太の唇がゆっくり動く。「夢、応援するよ」。美咲の心が、かすかに響く。
文学サークルの朗読会が迫る。美咲は詩を朗読し、心を届けたい。だが、過去の傷が胸を締める。「私の声、笑われるかな」。陽太が手話で言う。「美咲の詩、絶対届く。俺、そばにいる」。二人は図書館で向き合う。陽太の手話が上達し、「『星』はこう、指を広げて光を掴む」。美咲が真似ると、指が触れる。陽太の顔が赤い。「あ、ごめん!」。美咲の手話が微笑む。「心、ドキドキしただけ」。彼女の頬も熱くなる。陽太の指は、音のない詩を紡ぐ。
練習の日々。陽太は唇を大きく動かし、「ゆっくり話すよ」。美咲は補聴器越しに彼の声を捉え、手話で返す。「『ありがとう』、きれいになった」。陽太の努力が、美咲の不安を溶かす。彼女は詩を書き、陽太に渡す。「君の笑顔は、星の歌」。陽太の手話が答える。「この詩、俺の心に響くよ」。視線が絡み、美咲は思う。「陽太くんは、私の音」。陽太の指が震える。「美咲の笑顔、俺の光だ」。
朗読会前夜、美咲は震える。「また、囁かれたら…」。陽太は屋上で星空を見せ、手話で言う。「美咲の声、星より輝く。俺、信じてる」。指が夜空を指し、力強い。美咲の目が潤む。彼女の手話が囁く。「陽太くん、いつも私の世界を照らす」。陽太が手を握る。「これからも、ずっとそばに」。美咲の心が、静寂で歌う。
当日、講堂に学生が集まる。美咲は補聴器を外し、舞台に立つ。手話で陽太に囁く。「見てて」。震える声で、「星は、静寂で歌う」と朗読。発音は不完全だが、心が響く。陽太の手話が動く。「美咲、最高だ!」。拍手の振動が伝わり、美咲の涙が落ちる。
桜並木で、陽太の手話が言う。「美咲、めっちゃ輝いてた!」。美咲は答える。「陽太くんがいたから」。陽太の指が震える。「美咲、好きだよ」。美咲の手が動く。「私も…陽太くん」。桜の花びらが舞い、二人の笑顔が春の光に輝く。
END