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赫月の奇夜   作者: 蒼山 太一
平穏に潜む魔
4/7

黄昏

 『昨日未明、波葉県(かんぱけん)麦神市(ばかんし)の廃ビルで二十代と見られる男性ニ名が死亡しているのを発見されました。


 警視庁によりますと、二名の死因はいずれも“溺死”とされますが、現場には“水場”が一切なく、死因との因果関係は不明だということです。


 さらに、両遺体の頭部には動物の咬傷を思わせる様な破損が確認され、警察は事件と事故の両面から捜査を進めています。


 遺体を発見したのは、肝試し目的で廃ビルを訪れた大学生三名で、いずれも強いショック症状を訴えているということです。

 

 また、現場近くの路上では、負傷している意識不明の外国人男性が倒れており、病院に搬送されましたが、命の別状はないとのことです。


 警視庁は関連を調べ不審な人物の目撃など、犯人の特徴に繋がる情報の提供を呼びかけています。』


 朝に流れる報道番組は今日も人々の不安を掻き立てる。


 /04


 1998年12月25日、午後17時56分、夕暮れの放課後、下校時間は()うに過ぎ教室に二人の少女達が話をしている。

 一人は椅子に座りながらガラケーを片手間に、顔を話し相手に見上げてはメールに目を通すの繰り返し、もう片方の一人はその席の机上に尻を付き見下ろしながら談笑を続けていた。

 ガラケーに書かれている文字を目で追いながら話題を変える。

「ねぇ、聞いた?また“あいつ”やらかしたらしいよ」

「“あいつ”って?」

 疑問を浮かべた少女はさっきまでケタケタと笑っていた顔が消え、素っ頓狂な表情に変わっていた。

 その質問に対してため息が漏れ、カチカチと操作していたガラケーをパタリと閉じた。

「はぁー、瞳護(とうご)よ、瞳護(とうご)黎領(れいりょう)瞳護(とうご)

「あー!“萌果(もえか)”と同じクラスのとうご君ね!“部活の救世主”で有名だよね!」

 机に座っていた少女はぴょんっと飛び降りこちらに顔を向けた。

 で?そいつは何をしたの??と、言わんばかりの顔が見え見えだったのでそのまま話を続けた。

「そう、“私”の隣の席のとうご君。彼、他校のヤンキーに集団に絡まれボコボコにして返り討ちにしたんだってー」

 少女は、「え?」と云う言葉が出た直後、ぷっと膨らませた空気が頬から溢れ出す。

「ぷっ、ぎゃははは!それマジ?ヤンチーボコすとか最強じゃんよ、てかそもそもなんで絡まれたんだよぉ」

「私もそれ気になって聞いたら、『目付きが気に食わないって言われた』だってさ」

「そんな理由で?漫画じゃねぇんだからさ、まじウケんだけど。てか、とうご君フィジカルチョベリグすぎね??」

「確かにね」

 事実、私の知る限りでは彼の身体能力は凄まじいと前から思う所はあった。

 サッカーを始め、その大活躍っぷりから野球、バスケ、水泳と凡ゆる部活動から助っ人を頼まれ結果を残してしまうで有名だ。

「そんな有名人を笑っちゃって申し訳なかったけど、とうご君の方は怪我は大丈夫なの?」

 その疑問に対して萌果は「また笑っちゃうかもよ?」と返した。

「どういうこと?」

「無傷よ」

 間髪入れずに出した返答に言葉が詰まっていた。

「彼、8人に囲まれたにも関わらず無傷で全員倒しちゃったわけ」

「それ本当?盛ってない?」

「さてね、本人が『怪我しなかった』と言うんだから本当じゃない?」 

「それ流石にヤンチー側弱すぎね?」とツッコミを入れると二人しかいない教室の中で、再びあははは!と二人の笑い声が交差する。


 しばらく経ち、「ふぅ」と呼吸を落ち着かせ指で涙を拭きながら、少女は話題を変えた。


「それにしても、やっと冬休み入るのにどこにも行けないなんてマジ最悪よね」

 萌果はガラケーを開きメールを打ちながら答える。

「しょうがないよ、最近ここら辺で人死んでるし、しかもその殺人事件の犯人まだ捕まってないわけでしょ?そりゃ外も出れないし出たくもないわ」

「そうだけどさぁ。だったら何で学校はあるのさ!自宅待機とかするでしょ普通。」

 確かに疑問ではあるが、そんな事子どもの立場である私達に納得いく答えなど見つかるはずもない。

「さぁ?集団下校とか最初はやってたけど、もう安心しちゃってんのかね?大人の考えることなんてよく分からん」

「もー、早く犯人捕まえてほしいよー、どこにも行けないのつまらないー。」

 まぁね。とカチカチとガラケーを弄りながら、どこか納得できない部分の感情を隠しきれていなかった。



     ♢


 暫くの沈黙が続く中、机に肘をつけながらため息を吐く少女。誰も居ない校庭を窓から覗きながら呟く。


 ────。


「ねえ、あの噂本当かな?」


 夕日が沈んでいく。


「噂って......、最近流行ってるあの噂のこと?私はあんまり信じたくないけど......だって結構気持ち悪い話じゃん」

 

「でもさぁ、殺人事件の犯人が未だに捕まってないのも、あの噂と繋がると思わない?今朝のニュースだって......」


「繋がるって、そんなの非現実的すぎない?ありえないよ。だってあの噂の正体って.....」


────ヒトじゃないんでしょ?


太陽が沈む影が教室を包み始め斜陽が少女達の横顔を覆う。

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