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蟻が侵略者達を食らい尽くすまで  作者: 未来
1章 地の神が住まう小島
3/19

3 捕食されるレッド

 一部修正しました。


 引き続き、よろしくお願いいたします。

 侵略から3日後。


  平和だった小島は地獄に変わった。


  現住人の男達は建築作業に回され、女子供達は男達や貴族たちの衣類作成や性欲を満たす労働力へ回された。


「ふぁ~、くそ。奴隷どもの監視なんて暇すぎるぞ」


  侵略者の男達は暇を持て余していた。奴隷達の心はすでに折っており、反抗する者はいなかった。たまに、暇つぶしで奴隷を痛めつけていたが、やりすぎて何人か殺してしまい貴族たちから暴行を禁止されてしまった。


  この禁止は現住人を保護するためでなく、奴隷の数が減ると自分達の生活に支障が出るからという侵略者の都合だった。


  「まぁ、ここの飯はうめぇし、言うことはないが…ぐぇ、ぺぇ!? くそぉ、また蟻かよ!! 」


  口にしたリンゴを地面に吐き捨てリンゴの欠片に蟻の死骸が混じっていた。

 

  「なんなんだよ、この島はぁ!! なんで蟻がこんなにいんだよぉ!! 」


  侵略に成功した日から蟻を見かけない日はなかった。食べ物に混じっていたり、寝ている間に耳や鼻に入り睡眠を妨害されたのは一度や二度ではない。日に日に増えていく蟻たちに男達や貴族は悩まされていた。


  「おぃ!! てめぇ、このリンゴ、蟻がついてやがったぞ!!」


  赤い豪華な服を着たレッドがリンゴを持ってきた奴隷少年を力強く殴った。

 

 レッドの周囲には周囲に銃剣をもった取り巻きがおり、他の奴隷達は目を背けて誰も少年を助けることができなかった。


「この、てめぇ!! 死ねぇ、死ねぇ!!」


 少年の腹部や手を固いブーツで強く踏みつける。少年の腹部には青あざができ、腕の骨が折れて大きな内出血ができていた。


「おやおや、レッド。また奴隷を殺すのですか?」


 レッドよりも小柄で単発銃を2丁腰に付けて青い豪華な服を着たブルーが冷めた目でレッドを見る。


「うるせぇぞ、ブルー!! こいつは俺に蟻を食わせやがったから、殺して当然だろうが」


「はぁ、また蟻ですか。一層のこと、巣穴に火薬や油を入れて根絶やしにしましょうか? 」


  せっかく果物も鉱物も豊富な島を見つけても蟻がこんなにいては生活しにくい。

  しかも、この蟻達は現住人達にはまとわりつかず侵略者達しか攻撃してこない。


「これでは、陛下に献上するときに僕の名声に傷がついてしまう」


「おい、何てめぇ一人の手柄みたいに言ってんだ」


  レッドとブルーがにらみ合う。いつの間にかブルーの取り巻きまで現れて、二人の派閥の間に嫌悪な空気が流れた。


 横暴な脳筋のレッド。


 陰湿で卑怯者のブルー


 極悪運のグリーン


  三人は始め資源が豊富な小島を見つけ大喜びしていたが、手柄の奪い合いで揉めていた。

 

 誰がいち早く国へ報告し名誉を得るか。


 ここで大船に乗り本国へ報告しても、自分達を探検隊と言う名の国外追放をした王や貴族達にまた何か言いくるめられて、再度探検隊をやらされる可能性がある。

 

 本国へ戻り贅沢三昧な生活に戻るためにはなんとしても「この島は自分が見つけた」と主張して手柄を自分の物にして発言力や地位を固める必要があった。


 二つの派閥がにらみ合う中、殴られた少年の口や鼻から大量の血が流れアリの巣に入っていく。奴隷にさせられた少年の血をすすり無数の黒蟻たちが巣穴から出てきたことに誰も気づいていない。


「ここで言い争っても仕方ないですね。まずは、その奴隷を始末しましょうか」


  レッドに腕を折られてもう労働に使えないと判断しブルーは腰にある単発銃の1つを抜き動作を確認する。


「奴隷を治療するために金も時間をかける必要などありませんね。まぁ、銃の的ぐらいにはなるでしょう」


「相変わらず、回りくどいやつだな。グリーンの奴はどうした? あいつ、また船の中にいるのか?」


「変な虫や来るのが嫌だからって殺虫粉を頭から被ってましたよ。まぁ、あの臆病者には何もできませんよ。船には僕とレッドの手下がいるので、船を奪い手柄を独り占めなんてできませんよ」


「虫ごときで船に引きこもりか? 本当に腰抜け野郎だな、っとおい!! 逃げんじゃねぇ」


  地面を這いつくばって逃げようとした少年の背中をレッドが力強く踏みつけた。


「てめぇら奴隷はそうやって地面に這いつくばっているのがお似合いなんだよ。そんで、俺らのために死ぬまで働け、働けねぇ奴は俺が殺してやる」


「まってくださいよ。殺すなら、僕の銃の練習に使わせてくださいよ」


 少年はブルーの持っている銃を見ておびえた。


 銃と言う物はこの島にはないが、あれのせいで仲間が殺されたのは知っている。


 レッド達の言葉はわからないが自分もこれから殺されると思い少年は涙を流して目を閉じた。


  痛く、苦しい、助けて、死にたくない。 少年の涙に含まれた思いが地面と蟻を濡らし、蟻達が動く。


 黒い蟻達はブルーやレッド、その取り巻き達の体を上っていく。


「ほ~ら、動かないでくださいよ。 弾は奴隷の命なんかよりも貴重なんですから」


  ブルーが少年のこめかみに銃口を押しつけた。


「ん?」


 いつの間にか一匹の蟻がブルーの手におり、蟻はそのままブルーの手にかみつく。


 グチャ


「いだぁぁぁ!!」

 

  蟻に手の甲を噛みつかれてブルーは単発銃を地面に落とした。


「うぁぁぁ!!  蟻が…血が…うぁぁぁ!!」


 手に噛みついている蟻を振り払うも蟻の牙が肉に食い込んで離れない。さらに、蟻は口から強酸を流しブルーの手の甲の肉や骨が溶けて大量の血が流れていく。


「お、おいどうした…っ!! っ!! いでぇぇぇぇ!! 」


  少年の背中を踏んでいたレッドの右足に激痛が走った。ブーツの中に無数の蟻達が入り込みレッドの足に噛みついていた。


「くそぉ!! 蟻がぁ!! 」


 小指の第一関節程の大きさしかない蟻のかみつきはまるで、熱せられた釘で刺されたような痛みだった。

 

 レッドは倒れこんで右足のブーツを脱ぎ捨てる。


 右足には靴下を食い破り無数の蟻が右足の皮膚に食らいつていた。


「ぐぞぉ!!  ごのぉ、蟻が!! しね、しねぇ!!」


 レッドは怒りに任せて右足に噛みついている蟻を平手でつぶした。


 だが、潰れた蟻の死骸から黒い染みが出て皮膚を溶かしていく。


「あぁ!! あづぃ!! 手がいてぇ!!」


 蟻を潰したことで体内にあった強酸が飛び散り蟻を潰した手が焼かれてしまった。


「うぁぁぁ!! 足が、俺の足がぁ!!」


 蟻達がさらにレッドに集まっていく。


 右足はさらに悲惨な事になっていき右足は骨や血管まで露出しており、レッドは二度と自分の足で立つ事ができなくなった。


「おい、お前ら!! 俺を助けろ!! この蟻どもをどうにかしろぉ!! 」


 力自慢のレッドがまるで子供のように泣きじゃくり助けを求めた。


 だが、取り巻き達も蟻に襲われていた。


「ぐ、ぐぇ…い、いだぃ、やめでぇ、だずげでぇ」


「い、いやだぁ。じにだぐない…」


 巣穴から出現した蟻達は倒れた奴隷少年を避けて侵略者達だけ攻撃していた。


 リンゴを食らい駄弁っていた男達は体の中に蟻が入りこみ、脳や眼球など溶かされて目や鼻やから大量の血を流し倒れた。


「いだぃ、やだぁ…たすけ…」


 鼻や耳、尿道や肛門など人体の全ての穴に大量の蟻が入り込む嫌悪感や恐怖。


 眼球を食い破かれて激痛のまま失明し、脳が強酸で溶かされて鼻から血と一緒に脳汁があふれ出ていく。


 人体の中で重要な役割を持つ物が破壊されていき次々と手下の男達は無惨な断末魔を上げて息絶えた。


「ひ、ひぃぃ!! た、たすけぇぇ!!」


  右足を溶かされ立つ事もできず泣きわめくレッド。


 蟻に殺されていった取り巻き達を見てブルーは落とした単発銃を拾わず逃げた。


(こ、こんなことが現実にあるわけなぃ!! そ、そうだ、これは夢だぁ!! 悪い夢なんだぁ!! きっと長い船旅で疲れて、悪い夢を見てるんだ!!)


  これは夢、これは現実ではないとブルーは言い続けたてレッドの叫びが聞こえなかった。


「お、おい!! ブルー逃げんじゃねぇ!! 俺を助けろぉ!!  あがぁぁ!!」


  今度は左足に蟻がまとわりつき皮膚が溶けていく。蟻を潰してしまうと死骸から強酸が出て足がさらに溶かされていく。既に蟻を振り払おうとして抵抗したレッドの両手は皮膚と肉が溶けて骨が露出していた。


「あ、あぁぁ…」


 力自慢のレッドは溶かされた手足の痛みと捕食者である蟻に恐怖して股間が濡れていた。


「お願いだぁ、だ、だずげでぇ!! いだぃ、足ががいたぃ!! 」


  耐え難い痛みにレッドの精神も壊れかけていた。蟻のように地面を這いつくばり小さな捕食者達から逃げようとするも蟻達は数を増やしレッドにどんどん群がっていく。


 恵まれた筋肉やこれまで人を傷つけてきた手や足も蟻達の酸により溶けて異臭を放ち無惨な形になっていく。


「うぁぁぁぁ!!」


  身を激しく動かして蟻達をつぶすも、蟻のつぶれた跡から皮膚と豪華な服が溶けていく。


  痛い、苦しい、死にたくない 誰か助けてと心の中で叫んでいるとレッドに殴られ踏まれていた奴隷の少年が折られた腕を支えて見下ろしていた。


「…っ、がっは~~」


 口の中にも蟻が入り舌も溶かされたレッドは少年に向け「助けて」と叫ぶもうまく話せない。全身から血を流し苦しんでいるレッドに向け少年は


「これが、神の裁きだ…」


 少年は小さくつぶやき折れた腕をかばいながらその場から去った。


(いや、だぁ、たすけぇ…)


 レッドの心の叫びは空しく誰にも聞こえる事はなく、レッドは跡形もなく蟻に食われた。


 蹂躙された人々の願いを受けて蟻さんたちは悪い人達を食べて、食べまくります。

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