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truth〜6人とある少女の秘密の記録〜  作者: 尋木大樹


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19/20

◯調査報告 ②

 自分で書いた報告書を読み終え、ボクは目を瞑る。


 調査は続いていたけど、この先は書けなかった。

 ボクはその時のことを思い出す。








 六人に共通するのは、ひとりの人物が大きく関わっているということだった。


 海外にいる渋谷やモリオも含め、ボクは彼等に直接彼女との思い出を尋ねて回った。

 それはある者にとっては甘酸っぱいもので、ある者にとっては思い出したくもないことで……。

 だからボクは報告書の続きが書けなかった。


 せめて、今の彼女のことだけでも調べようとしたがその足取りは掴めず、どこで何をしているかは不明だった。

 

 その彼女の名はーー


◯出席番号35番 山手マコト









 何度実家を訪れても、彼女の家族から情報は得られなかった。


 困り果てたボクはある時居酒屋で、かつて彼等の学年主任だった男を偶然発見した。








「あぁ、あの子かぁ。本当に申し訳ないけど、これといった印象がなぁ。問題を起こすような子じゃなかったしな。あ、ピアノは上手かったな。そういえば、成績も優秀だった。全く手のかからない子だったよ」

「そうですか。彼女が何を思っていたかなんて、流石の先生でもわかんないですよね」

「そうだなぁ。……いや、待てよ。確か……」


 何かを思い出した様子の新橋先生。

 ボクは急かさず静かに待った。


「そうだ! サプライズでもらった色紙に書いてあったんだ」

「何がです?」

「彼女が書いたメッセージにね、こう書かれてたんだ。嬉しかったから写真に撮ってあるよ。何で忘れてたんだろ? わたしももう歳だね」

「そんな。先生はまだ若いですよ」


 ボクはスマホを受け取ると、そのメッセージが写った写真を見た。


『先生は常に生徒を大事にしてくださりました。その愛情はしっかり伝わっています。先生が育てた若い先生方も、きっとその想いを受け継いでいくことでしょう。もし肩の古傷が痛みましたら、その度にヤンチャな生徒の顔を思い出してください。学校を離れても寂しくないはずです。先生の新たな人生を、心より応援しています』


 細かくて綺麗な字で、そこにはそう書かれていた。


「昔は時代のせいもあるけど、竹刀を振り回したりなんかして……あの頃は生徒を叱ってばっかりだった。でも、それは大事に思うからで。なかなか伝わらなかったけど、こうして教え子から言われるのは嬉しかったね。当時の自分も肯定されたみたいで」

「確かに、それは嬉しいですね」

「ね。それにしても……肩の傷のことなんて言った覚えはないんだけどなぁ」

「傷って?」

「まだ若かった頃に暴れる生徒を止めようとしてね、その時に。それから竹刀を持つのを辞めたんだ」

「何ででしょうね。どこで知ったんだろ?」

「本当だね。わたしが知らないとこでも、よく見ていたのかもね」

「そうなんですかね」








 その後新橋先生と別れたボクは、再び彼女の実家へと行ってみることにした。

 すると、家の前にひとりの男性が丁度玄関から出てきたところだった。


「こんばんは、お兄さん」


 ボクが声をかけると、彼女の兄は呆れた表情でこちらに向かって来た。


「また来たんだ」

「こういう地道なことをするのが仕事なもんで」

「妹は暫く帰ってこないよ。俺に訊かれても、あの子は極々普通の子で……。期待に添えるようなことは何も」

「うーん、そうですか。じゃあ、せめて今どこら辺にいるかだけでもーー」

「教えていい許可をもらってないから、俺からは言えないって。何度言わせるな」

「そうですよねー」


 仕方がない。

 迷惑をかけたいわけじゃないから、ここは引き下がろう。


「何度もすみませんでした。もう帰ります。でも、もし会ったら伝えてください。『()()()()今の仕事で頑張れている』って」

「あぁ、わかったよ」

「では、さようなら」


 そのまま振り返ることなく、ボクは事務所へと戻っていった。








 あれから何年経ったのだろう。

 彼女だけでなく、他のみんなもどうしているだろうか?

 また同窓会で会えたらいいなぁ。


 ボクは時計を見ると、クライアントに電話をかけた。

 あちらから言われた都合のつく時間に、いつの間にかなっていたらしい。どおりで、飲みかけのコーヒーがすっかり冷えてしまっているわけだ。


「もしもし。あ、そうです、あのことで。そろそろ直接ボクが行って話を聞くべきかなって。ずっとオンラインでの打ち合わせでしたもんね。……え、事務所にですか? まぁ、こちらはいいですけど。いつですか? その日なら問題ありません。場所はわかりますか? ええ、そうです。そこの三階の……。入り口に看板があるんで、すぐわかるかと。あ、そうです、『()()探偵事務所』って。では、お待ちしてますね」

 

 電話を終えたボクは、手帳に予定を書き込んだ。

 

 そう。

 いつか彼女に薦められた本が、今のボクを作った。

 物語の探偵のようには上手くいっていないけど、こうして依頼も少しずつ増えている。


 ボクはさっきまで手にしていた報告書を引き出しの奥にしまい、今ある仕事の調べ物を始めるのであった。

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