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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

男の娘が同級生に惚れる話

作者: 魔招き猫

気軽に読んでください。

誤字、脱字、至らぬ点があるとは思いますがご了承ください。

きっかけは些細な事だった。

小学生の頃からボクはこの見た目のせいで『男のくせに女みたい』と言われて、避けられてきた。

そして中学生に進級したばかりの時、体育の時間に2人組を作れって先生が言うものだから一生懸命に声をかけようとした。たけどどんどんみんなは二人組になっていった。

独りぼっちになっちゃったボクに話しかけてくれたのが、彼…神木 蓮くんだった。

 

「橘、お前まだペアいないよな?」


多分、神木くんは偶々ボクに話しかけてくれたんだと思う。

だけどボクは凄く運命を感じたんだ。


だって物心ついた頃には周りに友達がいなかった。原因は分かっていた。ボクが女の子みたいな容姿をしていたから。

女の子みたいなつぶらな瞳に長いまつ毛、整った鼻やぷるんとした唇。髪の毛は少し長め。

髪の毛に関しては、美容室に行くのが苦手なだけ…。

だってしょうがないじゃないか!友達ができないせいで美容師の人とどう話せばいいか分からないんだから!


とにかく、ボクの当面の目標は神木くんと仲良くなる事!その為には、ボクの信頼するお姉ちゃんに聞くべきだ。

ボクは椅子から立ち上がると、自室を出て隣のお姉ちゃんの部屋に行く。


「お姉ちゃん、ちょっといい?」


「お、どうしたの?ひなちゃん」


お姉ちゃんはボクのことを日向ではなく、ひなちゃんと呼ぶ。

最初の頃は「やめて」って言ったんだけど、何回も呼ぶから諦めた。


「ボク…仲良くなりたい人がいるんだ」


「え!?誰!もしかして、好きな人!?」


「ち、違うよ!ただ仲良くなりたい…だけ。」


お姉ちゃんは怪しいと言わんばかりの目でこちらを見ていたが、ため息をついて少し考えていた。


「まずはやっぱり連絡先を交換するとかかな?」


「連絡先…!でもなんて言えば…」


「そんなものひなちゃんなら、連絡先交換しよって上目遣いで言えばイチコロよ!」


そんなアドバイスと言えるのか難しいところではあるが、お姉ちゃんにお礼を言って自分の部屋に戻る。

明日の目標は決まった。


「明日、連絡先を聞く!」


ボクは部屋の電気を消して、布団に入る。時間は22時。

早寝早起きは習慣化している為、ボクはこの時間に寝ると決まっている。


「おやすみ。神木くん。」


机に置いてある写真に声をかける。

そこにあったのはボクと神木くんの体育祭の写真だった。

昼休憩に教室で撮られたとされる写真。真ん中には神木くんと他の男の子。その端にボクがいる。


ボクと神木くんが写っている写真だった。



次の日。

授業は終わり、放課後。

ボクは意を決して席を立つ。スマホを手にして教科書などをカバンに入れている神木くんの席に近づく。


「神木くん、ちょっといいかな?」


「橘?何か用事?」


緊張する。でも神木くんともっと仲良くなりたいんだ。


「神木くん、連絡先交換しない?」


ボクの体感時間はすごく長く感じた。実際は5秒ぐらいだったけど、ボクは10秒くらいに感じた。


「おぉ。いいぞ!そういえば橘の連絡先知らなかったわ。」


「本当!?嬉しい!」


早速連絡先が交換できちゃった…!

スマホの画面に映る神木くんの連絡先を見て、ニヤニヤしてしまう。


「じゃ、じゃあまた明日ね!」


神木くんにさよならを言って、学校を出る。

危ないと分かっているけどながらスマホをしてしまう。

『よろしく!』とか送ったほうがいいのかな。

でもさっき別れたばかりだしね。


家に着いて、ご飯を食べてお風呂に入り終わった。勉強の予習復習も必ずするのがボクの日課だ。


プルルルルルルル


ベッドに置いてあったスマホが鳴る。


「誰からだろう。」


スマホの画面を見ると『神木 蓮』の文字があった。

ドキッと心臓が跳ね上がった感覚がした。

一瞬の出来事だけど、頭の中では疑問で頭がいっぱいだった。

しかしそんな疑問は一瞬にして消え去り、スマホを急いで手に取り、電話に出る。


「も、もしもし?」


「あー、もしもし。橘ってテストの成績よかったよな?勉強で分からないところあって教えてほしくてな。いいか?」


「勿論だよ!神木くんの頼みならなんだって聞くよ!」


我ながら大胆な事を言ってしまった気がする。けど、そんな事よりも神木くんに成績がいい事を知ってもらえているというだけですごく嬉しい。


「まじ?じゃあ頼む!えっと、数学問題集の110ページの…」


勉強を教える事になってから恐らく1時間ぐらい経っただろうか。時計を見ると23時になっていた。


「そろそろ勉強終わるわ。橘、勉強教えてくれてありがとな!」


「いや、気にしないで!ボクも教える事で勉強になるから!それじゃあバイバイ。」


「おう。バイバイ!シコらずにさっさと寝ろよ。あはははは!」


ブチッ…


な、な、な、なんだって!!!

なんて破廉恥なんだ!


顔を真っ赤にしながら部屋の電気を消し、布団に入る。

先ほどの言葉が頭から離れない。

好きな人からセクハラされるなんて思っても見なかった。いや、男同士だからこんな話もするかもしれないけどっ!

そんな嬉しいような恥ずかしいような気持ちで天井を見る。


「寝れない…」


羊が一匹…羊が二匹…

古典的な方法で睡魔を呼ぶ作戦に出た。


翌日、朝を迎えた。

最悪だ。結局あの後全然寝れなくて、眠りについたのは2時を回っていたと思う。


「おはよう。日向…なんて顔なのよ。夜更かしは肌に良くないのよ?」


お母さんに注意される始末。

これも全部神木くんのせいだ。


「ボクは悪くない!朝ごはんはいらない!いってきます!」


「何ー?反抗期??」


お母さんの言葉を無視して家を出る。

学校まで距離はない…が、いつも通ってる道を歩く。このいつも通っている道、少し遠回りをする。理由は一つ。神木くんがいるからだ。


「おぉ!橘じゃん!家こっちの方角なんだな。昨日はありがとうな。てかどうしたのその隈?もしかして俺の勉強に付き合わせたせいか?」


「いや!違うよ!本を読んでて寝るが遅くなっただけで。」


必死に神木くんのせいではないと言い聞かせるボク。その様子に気付いてくれたのか、神木くんは納得してくれた。


「そういえば昨日勉強教えてくれただろ?お礼がしたくて。今度の週末どっか行かね?」


「え…行く!行こう!」


「お、おぉ。そんなに喜んでくれるとは思わなかったわ。じゃあカラオケでも行くか。」


「いいね!ボク、カラオケ久しぶりに行くなー!」


そう。神木くんはボクのことを男の子扱いしてくれるんだ。

そんなところも好きなんだ…て。

男の子として扱ってもらってもいいの?

多分、というより神木くんはノーマル。という事は今ボクは恋愛対象としても見られていないって事だよね。


そこからと言うもの、神木くんとの会話は頭に入って来なかった。

クラスに着いても、授業中もずっと考えていた。神木くんの攻略を。


今週末、結論から言うと楽しかった。

神木くんと合流し、カラオケに行き楽しんだ後に夕食を食べた。


「じゃあそろそろ帰るか。」


時刻は18時半。帰るのは心苦しいが夜遅くなってもお母さんに怒られるだけだから、ここら辺でいいだろう。


「そうだね!じゃあボクはこっちだから。」


そう言って自分の家の方向に指を指す。


「あれ?学校来る時、いつもこっちの方じゃなかったっけ?」


あ。まずい。いつも遠回りして学校行ってるの忘れてた。えーっと、えーっと。


「親戚の家にいくんだ。」


キタこれ!完璧な嘘!

ボクって天才だなー!


「そっか。じゃあまたな!」


笑顔で手を振りながら帰っていく神木くんを見届けようとした時、ふと考えが頭をよぎった。


このまま着いていけば、神木くんの家分かるって事だよね。


考えるより先に動いていた…。


こんなこと犯罪って事は分かっている。だけど恋愛ってのは犯罪と紙一重なのだ。

毎日メールをするなんて、ストーカーの所業。だけど相手が迷惑を感じてなかったら、それは会話の一つになる。

そう、これは観察。

神木くんは優しいから迷惑なんて思ってるわけない。ボクは自分に言い訳をしながら、内心はドキドキで神木くんの跡をつけていった。


「ただいまー!」


大きな声で帰っていく神木くんを見届けて、一息つく。跡をつける、なんて人生で初めてやったけど、案外バレないものだ。


こんな家に住んでるんだぁ。

そんなことを考えながら一枚だけ、家の写真を撮って自分の家に帰った。そして自分のやった事に心底後悔した。

でもしょうがなかった。恋愛は人を盲目にする。


「はぁ。ボクは明日、なんて顔して神木くんに会えばいいんだ。」


そう言ってため息をつき、スマホにあるインストを開く。今日の事を投稿しようとした時、ふと神木くんのアカウントが目に入る。


鍵アカじゃない!ほうほう…勝手に閲覧させてもらいますよー。


『今日は楽しかった!』の文字と共にボクと一緒に写ってる写真が投稿されていた。


うわぁぁぁぁぁぁぁ!


枕に頭を埋めて叫ぶ。

ひと通り嬉しい気持ちに浸った後に、コメント欄を見た。


『え?彼女?』


『違うww男だよ!』


と言う会話が見えた。やっぱり神木くんはボクを男の子として見ている。

いや、それは喜ぶべき所なんだけど、嬉しいけど嬉しくないって言うか。


ん?待てよ?ボクって天才か!?

良い方法を思いついちゃったぞ!


次の日。

体育の時間、始まりは2人ペアでストレッチをする。そこで昨日の作戦。事前に用意はできている。


「悪い神木、今日は橘と組んでくれ。」


いつもの神木くんのペアの木村にお願いしたんだ。ボクのペアの津川とストレッチをしてくれと頼み込んだ。そうする事によってボクと神木くんがペアになる。つまり合法的に神木くんの体に触れるのだ。


「おう!よし、じゃあ橘、やるか」


「うん!任せて!」


前屈中、ボクは神木くんの背中を押す係になる。ごつごつとした背中をしていると考えていた。背骨じゃなく、筋肉だ。

そりゃあボクだって男の子だから筋肉の少しぐらいある。けど神木くんは少し筋肉がある方だ。ちなみになぜ知ってるのかとか言うと、着替えは男子更衣室で行う為、その時に神木くんの腹筋をみた。


「前から思ってたけど、橘っていい香りするよな。」


「な、なんだよ急に。」


「先週の休み遊んだだろ?その時から思ってたわ。」


「まぁ朝に香水を少しね。え?もしかして臭かった?」


ボクは両肩をスンスンと匂う。


「いやいや、だからいい匂いだって。俺も香水とかつけようかな?そしたらモテるかもな!あははは」


その時ボクは少しイラついた。

理由は簡単。好きな人がモテようとしてるからだ。そこら辺の女子より可愛い(男だけど)ボクがいるじゃないか。どうにか神木くん自身を男の子…欲を言えばボクに興味を持つようになってもらわなければ。


「神木くんは、女の子にモテたいんだねぇ。」


ちなみに神木くんは彼女がいない。それは把握済みだ。


「橘、なんか怒ってる?力加減が痛いんだけど。」


自然と押す力が強くなって、神木くんを痛がらせてたみたいだ。


「あ、あぁごめんね。押しすぎたみたい。そんな事より、誰か気になってる子とかいるの?」


うちの中学は男女別で体育をするから、ここで話しても女子に漏れる事はない。だからこんな恋バナをしても問題ない。


「え?気になっちゃう?誰だと思う?」


ボク…なんて言えないよね。どうしよう。

悔しいけど、ここは適当な女の子の名前とか言っとくか。


「小田さんとか?」


クラスの中で結構可愛いと思う子の名前を言った。


「小田ねぇ。お、もしかして橘って小田の事好きとか?」


「違うよ!ボクはもっとカッコよくて、優しい人が…」


そう弁明してる時に体育の先生が『ストレッチ終わり!サッカーの準備しろー!』と言い、その場は終わってしまった。


サッカーが終わり、みんな汗だくで更衣室に帰る。ボクはこの男の人の臭いが少し苦手だし、更衣室で着替えるのも嫌だ。だって神木くんじゃない人に体をジロジロ見られるからだ。


「橘、今日はナイスだったな。」


その一言で救われるよ。デレェとしそうな顔を整える。


「いやぁ。パスしたのはボクだけど、神木くんがゴールしてくれたからだよ。ありが…」


ふと隣にいる神木くんを見ると、上半身裸だった。ボクは生唾を飲む。毎日鍛えているのか腹筋は割れており、胸筋もあった。そしてその目線の流れで顔を見る。そして目が合ってしまった。


「どうした、橘?もしかして俺の体に惚れちゃったかぁ?」


「う、うるさい!冗談を言う暇があるなら早く着替えろ!」


「へいへい!」


バレたバレたバレたバレた!!!

体を見たのがバレた。

横目でチラッと見た限り、神木くんは気にしてないと言わんばかりに着替えを続行している。


「神木、早く行くぞー」


神木くんの友達が急かすように言う。

更衣室の男子はどんどん減っていく。

ボクはゆっくり着替えるんだ。男子が減って着替えた方がジロジロ見る人もいないから。

そして今日は珍しく僕以外はいなくなってしまった。

ボクも着替えを終えた時に、ふと目が入った。


「これって、神木くんの着替え…だよね」


隣のロッカーにあったのは神木 蓮と書かれた体操袋があった。


「全く、神木くんは…」


ボクは届けてあげようと、ため息をつきながら神木くんの体操袋をロッカーから乱雑に取り出す。

その時に、フワリと男のムワッとする汗の臭いが鼻に触れた。


「ゔっ…」


臭いにおいを嗅いだからじゃない。鼻の穴から鼻腔に抜け、脳みそに届けられたその匂いは本能時に刺激される匂いだった。


誰もいないと分かっていても、更衣室を見回す。


この時のボクは『魔が差した』と言うやつだろう。もう一度…もう一度だけ。体操袋の穴に鼻を近づける。1度目はスンッと軽く匂い、覚悟を決めた。肺が満タンになるまで大きく鼻で息を吸った。


「…はぁぁぁぁぁぁあああ」


これは一種の麻薬だった。

僕はその場に座り込んでしまった。早くこれを届けなければ。次の授業も始まってしまう。

でもこの状況を自分からは手放せない。


その時だった。体操袋の中にペットボトルが入っているのに気がづいた。まるで神様がボクを応援しているかのようなタイミングだ。


気がついた時にはペットボトルを手に取り、蓋を開けていた。誰に訊かせるでもない言い訳をボクは並べていた。


「そもそも、神木くんがいけないんだ。ボクがいつも我慢してるのに、横で何食わぬ顔で着替えるんだから。家まで着いて行った時なんて気付かない君が悪いんだ。今日だってこんな餌をボクに与えるなんて…君って奴は、本当は僕のこと大好きなんじゃないか?お互い両思いなんだし、ボクが飲んでもいいよね。」


ペットボトルを傾け、口に運ぶ。

ボクの下唇がペットボトルの口に当たる瞬間、学校のチャイムが鳴る。

それによってボクは我に帰り、急いで教室に戻ったのだった。


「おい!神木くん、これ忘れてたぞ」


ボクの不完全燃焼は神木くんに当たる事で解消していた。神木くんの体操袋を投げて渡すと、神木くんは嬉しそうな顔をした。


「まじ?ありがとう!放課後取りに行くのめんどくさかったんだよな。」


「今度忘れたら…」


神木くんに聞こえない程度で、忠告しておいた。あんな特級呪物がこの世にあってはならない。



暇なら続き書く

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