LOST CORNER
●彼ならではの個性は健在であるものの、全体的に「丸くなった」様相を感じられる。
【収録曲】
1.RED OUT
2.KICK BACK
3.マルゲリータ + アイナ・ジ・エンド
4.POP SONG
5.死神
6.毎日
7.LADY
8.ゆめうつつ
9.さよーならまたいつか!
10.とまれみよ
11.LENS FLARE
12.月を見ていた
13.M八七
14.Pale Blue
15.がらくた
16.YELLOW GHOST
17.POST HUMAN
18.地球儀
19.LOST CORNER
20.おはよう
大ヒットを記録したアルバム『STRAY SHEEP』リリース後も数多くの楽曲を発表してきた米津玄師。4年振りのアルバムとなる今作にはそれらが収録されているのみならず、新曲も10曲近くあり、結果として、全20曲・約70分とかなりのボリュームになっています。
なので、今作は重厚な作品になる……と思いきや、個人的にはあまりそういう印象を受けませんでした。従来と比べて「軽い」空気感の曲が目立ちますし(特に『毎日』~『LENS FLARE』において顕著)、構成の仕方はある意味「プレイリスト」的。最後の2曲である『LOST CORNER』『おはよう』は随分あっさりとした雰囲気で、これまでの彼のアルバムとは聴き終えた時の感覚がかなり異なりました。言い換えると、万人受けしやすい「開かれた」作品といったところでしょうか。
それゆえに、様々な楽曲を上手く並べてパッケージした『BOOTLEG』や自身の「憂い」を徹底的に追求した『STRAY SHEEP』と比べて、やや物足りない印象も。一言で表すならば、全体的に「丸くなった」様相を感じられたアルバムでした。まあ、歌詞を見ると「口の中はたと血が滲んで 空に唾を吐く」(さよーならまたいつか!)や「もっと愛されていたい ここで消えてしまいたい」(LENS FLARE)のように結構ネガティブな表現がありますし、攻撃的で尖った雰囲気を強調させた『RED OUT』『KICK BACK』や初期を彷彿とさせる世界観を見せる『POST HUMAN』のような曲の存在もあって、彼ならではの「個性」が薄まった印象はさほど無いのですが。
評価:★★★★