BOOTLEG
レビュー執筆日:2018/6/20
●多彩な楽曲を一枚のアルバムとして見事にまとめ上げた傑作。
【収録曲】
1.飛燕
2.LOSER
3.ピースサイン
4.砂の惑星 + 初音ミク
5.orion
6.かいじゅうのマーチ
7.Moonlight
8.春雷
9.fogbound + 池田エライザ
10.ナンバーナイン
11.爱丽丝
12.Nighthawks
13.打上花火
14.灰色と青 + 菅田将暉
大ヒットした米津玄師の4thアルバム。元々彼は幅広い音楽性を取り入れるミュージシャンなのですが、今作ではその特徴が今まで以上に強く現れていると思います。例えば、『LOSER』ではラップを導入し、『ピースサイン』では疾走感のあるギターロックを、『orion』では緊張感溢れるバラードを聴かせ、『ナンバーナイン』ではEDMの要素を大きく取り入れています。他にも様々な楽曲が収録されており、バリエーションという点においては過去最高だったと思います。
かと言って、二作前の『YANKEE』のようにアルバム全体で見るとちぐはぐになってしまうということはありません。確かに統一感は弱いですが、今作は曲順がよく練られており、一枚のアルバムとして上手くまとまっています。一曲目の『飛燕』はリスナーの期待感を煽るような広がりのある音像になっており、『LOSER』から『orion』まではキャッチーな既発曲を並べ、『かいじゅうのマーチ』から『fogbound』までは落ち着いた雰囲気で、『ナンバーナイン』からは最後に向かって盛り上がっていき、夏の夜を想起させるような感傷的なナンバー『灰色と青』で締めるという構成は非常によくできていると思います。(欲を言えば、最後から二曲目の『打上花火』は原曲のアレンジで収録した方が最後に向けての盛り上がりがよりよく表現できたと思いますが)
歌詞に関しては、抽象的な表現が戻ってきたように思います。特に『砂の惑星』において顕著で、「立ち入り禁止」「サンダーストーム」「メルトショック」等といった言葉のチョイスが楽曲の不穏さをより際立たせています。また、ストレートな表現に関してもより磨きがかかっており、『かいじゅうのマーチ』の「人を疑えない馬鹿じゃない 信じられる心があるだけ」や『灰色と青』の「どれだけ無様に傷つこうとも 終わらない毎日に花束を」などといった歌詞は率直でありながら陳腐さを感じられず、より心に迫る表現になっていると感じます。
サウンドにおいても歌詞においても大きな成長が見られた今作。大ヒットするのも納得の満足いく一枚でした。
評価:★★★★★
最後に余分な空白行が入っていたので、修正いたしました。(2022/10/10)