diorama
レビュー執筆日:2018/5/19
●チープな音像から感じられるくすんだ世界観と、バリエーション豊かな楽曲を楽しめる一枚。
【収録曲】
1.街
2.ゴーゴー幽霊船
3.駄菓子屋商売
4.caribou
5.あめふり婦人
6.ディスコバルーン
7.vivi
8.トイパトリオット
9.恋と病熱
10.Black Sheep
11.乾涸びたバスひとつ
12.首なし閑古鳥
13.心像放映
14.抄本
今から5年以上前、ある雑誌でこのアルバムが絶賛されていたので聞いてみたところ、これがかなりの当たりでした。
このアルバムの特徴を一言で表すならば、「煙に包まれたようなくすんだ街での様々な情景を描いた作品」と言えるでしょう。ある種のコンセプトアルバムと言っていいかもしれません。気怠げな雰囲気が漂うスローなナンバーの『街』、ハイテンポで意味よりも語感を重視したような歌詞が特徴的な『ゴーゴー幽霊船』、沖縄民謡のようなメロディで醜い言い争いの様子を描く『calibou』、おもちゃ箱をひっくり返したような『トイパトリオット』、ストレートなギターロックの『心像放映』、そして『街』と似た雰囲気を持ち合わせながらより酩酊感溢れる出来の『抄本」等といったジャンルにとらわれない様々な楽曲が収録されています。
それでありながら、収録されている曲はどれも音使いが妙にチープでどこかくすんだような雰囲気があり、不思議と統一感があります。歌詞においてもそのような点が見られ、明るい曲調の『トイパトリオット』でさえも「それをすぐ殺してしまおう」等といった暗いフレーズが随所に散りばめられでおり、前述の「くすんだ雰囲気」の中で浮いてしまわずに上手く収まっています。
どこか錆び付いたような、どこか霞がかったような、それでいてどこか愛らしい世界観が見事に体現されたこの一枚。少しでも気になった方は是非聞いてみたらどうでしょうか。
評価:★★★★★