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箱庭のテイル  作者: 佐々木奮勢
第三章:デジットハーブ
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戦いの後 続きの始まり

「住民たちの多くは復興が終わるまでの間、クーティや近郊の町々に移り住んで貰う事になった。」


 あの戦いから三日後、ブラグドッグの敷地に建てられた仮設の家屋の中で、パドはレイン達四人にデジットハーブの現状を話していた。


「一部の腕のある住人、元々漁師をやっていた者達が主となって町の復興に努める様だ。内の者からも復興部隊を新設し派遣する。」


 パドは生えて間もない新品の手で口元を覆った。


「ああ、その通りだ。こちらも少なくない被害は受けている。町の入り口で避難を促していた誘導部隊と戦闘班が半数近く負傷した。死亡者はその内の二割程だが、四肢の欠損などの重傷者の度合いを考えると頭が痛くなる。彼らのサポートや穴埋めをどうするかとな。」


 パドは渋そうに眉をしかめた。


「ん?ああ、ただ戦闘班の奴らは……血の気が多い。こんなの大した事無いと元気に訓練を行っている。全く……強かな奴らだ。あいつ等もあいつ等なりに志半ばで死んでしまった仲間達の思いを抱えているんだろう。」


 パドはそこまで言ってから何かに気が付いたように目を見開いた。


「あ、いや、別に悲しい気分にさせたい訳じゃないんだ。……話を変えよう。お前達の次の目的地は確かあそこだったな?……そうそこだ。奇遇な話だが、俺達もそこに用事が出来た。」


 勝手に仕事を増やすなあの馬鹿親、とぼやくパドだったが、皆の反応に鬱陶しそうにしながらも少々恥ずかしそうに頬を掻いた。


「本当だ。そんなに騒ぐな鬱陶しい。……とは言え直ぐにでは無い。こちらの仕事が片付いてからだから一月二月は後になる。お前たちの後を追いかける形になるな。」


 そう話すパドだったが、レインの話を聞いて溜息をついた。


「はぁ……むしろお前らが居て何が出来る訳でも無いだろう?なら先に進んだ方が合理的じゃないか。」


 パドの言葉はある意味正しく、場が静まった。


「……分かってる。お前達のそのやるせない気持ち位な。だが、俺達はやる事はやった。大きな被害はあったが、むしろこの程度に俺達が納めたんだ。その事に胸を張って次に進んだ方が良い。……その方が心の為だ。」


 パドは一瞬深刻そうな表情を出したが、直ぐに不器用な笑顔を張り付けた。


「話は終わりだ。今日はもう寝とけ。明日は早いだろ?俺もまだやる事があるからな。」


 そう言ってパドは部屋を出て行った。



「さ、行くか。」


 翌日早朝、プルディラを加えた四人は砂と崩れてしまった町の入り口に立っていた。


「そうね……来る前と様子は酷く変わっちゃったけど、また来れたら良いわね。」


 カリンは変わり果ててしまった町を見渡した。崩れてしまった家屋の周りの人影が大声で激励する様子が見えた。


「あれが昨日パドが言っていた復興部隊か。……すげえな。」


 彼等の不屈のバイタルを目にし、素直に感動するライガ。


「ああ、凄いよ。本当に。」


 そうして三人が感傷に浸っていると、


「レインさーーん!!!!」

「ん?何だ?」


何処かからレインを呼ぶ声が。しかもレインには非常に聞き覚えのある元気の有り余る声。


「この声……?」

「レインさーーん!!僕です!!ロビーでーーす!!!!」


 町の外から大きく手を振って駆け寄ってくるロビーの姿があった。


「ロビーか!!無事で良かった。」

「はい!!レインさんの忠告のお陰で僕もレティーザさんも近所の人達も無事でした!!」


 実は戦いの前にロビーへ避難して欲しい旨を伝えていたレイン。数少ない知り合いが生き残っていたことに安堵する。


「本当に良かった。……ん?どうしてこの町に戻って来たんだ?復興の手伝いか?」


 避難していた筈のロビーが何故この状況のデジットハーブに戻って来たのか。それがレインの頭に疑問として浮き上がった。


「いえ、僕は手伝いになれる程身体を動かすのは得意ではありませんので。……えっと、変な語尾の係の人に聞いたんです。レインさん達が今日出発するって。あの町に向かうって。」

「確かに、これから向かう所だよ。」


 するとロビーは少し溜めてこう言った。


「あの!!……僕、もっと勉強しようと思うんです!!なのでその……僕も連れて行ってください!!魔導学園都市ブランターヌへ!!!!」


 レイン達の次なる目的地、グリーニヤから託された二通の手紙の宛先として書かれていた地名ブランターヌ。世界有数の魔導都市で一体どんな出会いがあるのか。それはまた別のお話。

ご閲覧いただきありがとうございます!!

次回の更新は9月21日12時頃です。

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