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何処かの国の何でもない夜
「ままー。」
夜、子供が母親の居るリビングにやってきた。夜中に起きてしまい、眠られなくなってしまったのだろう。
「あら、どうしたの?」
「ねむれないの。」
子供はそう言って母親に抱き着く。母親は子供を抱きかかえながら、
「なら、眠くなるまで絵本でも読もうか。」
そう言って寝室へ向かった。
寝室に着き、子供をベッドに寝かすと母親は本棚から1冊の本を取り出した。
「今日はこの本にしようね。」
「うん、ぼくそのほんすき。」
良かったと言いながら母親はベッドの脇に腰を下ろした。
「魔法使いの大冒険。」
本の題名を読み、ページをめくる。そして、冒険の始まりを口にした。
「これはあなたが想像もできない程ずっとずっと、ずっと前のお話です。ある日のこと、一人の男と踊り子が出会いました。」