それぞれの現在
『だから乗れないはずは無いだろう?』
「マスヤマさん、あなたのチケットは一時的に凍結されました。」
『鬼!また現世に帰れと?』
「まぁ私ら本当に獄卒ですけどね?っていうかフレイヤ様からの絶対命令なんですよ……まだ魔王倒して無いとか?」
『いや聖女が守銭奴でな……』
「ああマッコール孤児院の……あの娘なら孤児院復活の為の守銭奴ですよ?」
『冒険者が命落とさない様に作った飴を祭で売ったら儲かると言いやがった。助けるつもりはなくなったよ。』
「それで自殺したんですか?」
『いや、元々手違いでリンジーの中に同居したんだ。』
「え?そりゃ転生法違反ですぜ?」
『それでもまぁ助けてやりたかったんだけどね。ありゃ無理だ。』
「ふむ……じゃホムンクルスで再生は?」
『マグナス・ポアロとか言う人の?』
「話が早いな。そのホムンクルスに入れる魂が足りんで苦労しとるんですよ。」
『船乗せてもらえないんならいいよ。暇潰しに。』
「ただ自殺だけは船に乗れなくなるからな?行っておいでマスヤマ・シュウイチ。後にオゴウカツミとも会えるだろう。」
『え?鬼さんあんた……』
「オゴウらはおでんと呼んどるよ。全ての記憶を持ち転生するのじゃ。ではまた会おうエインヘリヤルよ。」
足元がカパッと開き増山はその中に吸い込まれる。
『なんで落とし穴なんだよおぉぉぉ!』
「ふぅ……さて、フレイヤ!すぐさまわしの元に来い!」
今回ばかりはオーディーンも激怒の神になっていた様である。
コポ……コポポ……
水槽の中で増山は目覚めた……目の前に怪しげなおっさんが……
「おお!目覚めたかね実験体28号!」
『鉄人かおいらは!あんたマグナス・ポアロさんかい?』
「まだ何も教えとらんのに何で喋っとるんじゃ?」
『オスカーって司祭に聞いた。おいらはリンジーって聖女に憑依してたんだ。』
「悪霊じゃったか……」
『悪霊違うわ!エインヘリヤルとか呼ばれてたぞ。ってか……あんた高名な錬金術師なんだよな?』
「今はただの世捨て人じゃ。領地を追い出されてのう。」
『なんで?あんた騎士爵持ちだろう?』
「人体実験の濡れ衣を着せられてのう……」
『やったのか……』
「やっとらんわ!痛み訴える奴より死体の方がマシじゃ!」
『それはそれでどうかと思うが……』
「で、死んだエルフの胎児を生かそうとしたのがお前じゃ。」
『待て、おいらまたエルフか?』
「体は成長したのじゃがどうも生きてないようでのう。」
『魂入ってねーからだよ!』
どうやらこの身体は植物人間であったらしい。
「スライムとシェイプシフターの遺伝子も混ぜたぞ?」
『やっぱあんた危険人物だわ…』
「邪魔するぞ!」
『邪魔するんなら往ね!』
「なんだとこの……おおっ?成功したのか?」
『うっせぇ!今親子の対話中だ。』
「おめぇは借金の形に俺たちの物になるんだよ!」
『ここじゃ人身売買合法なのか?』
「そんな訳無いじゃろ。」
『だな、突風弾!』
チンピラを弾き飛ばして水槽の外に出る。
『なんか着るもの無い?』
「こんなので良ければ。」
『ナチュラルにメイド服出して来るんじゃねぇ……着るけど。』
メイド服を着て表に出る、チンピラは……あ。起きてきた。
「やいやいてめえ!この俺様に歯向かうとは……」
『黙れ下郞、我がミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファーと知っての狼藉か?』
「何を偉そうに……」
『捕縛。マグナス様、これ殺していい?』
「いや騎士団事務所で喋れないとヤバいじゃろ。」
『そんとき甦らせるから……』
「何を怪しげな会話してるのかね?」
『あ!騎士さん。ここ人身売買合法?』
「いや、下手すりゃ極刑だよ。奴隷制度もないし。」
『んじゃ借金の形にあたし連れて行くのは?』
「誘拐の可能性が有るな……お嬢ちゃん名前は?」
『ミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファー、昔マグナス・ポアロ様に助けてもらったの。』
「マグナス様?偉大なる錬金術師の?」
「殺人の濡れ衣で追放されたがのう。」
「いえ、騎士爵領の殺人事件であれば騎士団長の犯行でございました。濡れ衣は晴れております。一度王都にお向かい下さい。」
「わしの言葉に耳も貸さなかったぞあの王は。」
『大丈夫、あんた一人位なら守れるよ。』
「うちからの借金はどうなる?」
「わしいくら借りたかのう?」
「金貨100枚だ!」
「わしは金貨30枚借りて去年までに60枚返しとるぞ?」
「事実ですか?」
「ああ、証文も有るし月金貨3枚返しておる。お前の所はどういう計算しとるんじゃ?」
「騎士さん、こいつまだまだ一般人から絞り取ってるはずだ。黒幕わかったら言ってくれ。性根入れ替わるまで殺したり生かしたりするから。」
「お嬢ちゃん、それはどういう……」
ストレージから出したヌンチャクを一閃、頭蓋が砕けたチンピラに復活をかける。
「お嬢ちゃんさすがに殺人は……あれ?生きてる?」
『怪我も無いから傷害にならないよね?さてもう一回……』
「待て!あんたの借金はチャラにしてやる。」
『は?金貨30枚払いすぎだろう?帰ってくるんだよな?』
「一度支払われたかねは……」
唐竹割り、チンピラは死ぬ。
『復活っと。甦らせるの面倒になってきたなぁ…で、払いすぎた金はどうなるんだね?』
ヌンチャクを振り回しながら笑顔で威嚇する増山、さすがに騎士が止めに入る。
「お嬢ちゃん、さすがに脅し過ぎです。」
『ん~、これからこいつらのアジト潰そうかと思ってたんですが……』
「おい騎士、こいつどうにかしてくれ。」
『爆発!』
チンピラの足元が爆発し、チンピラは失禁しながら意識を手放した。
『ちょっとは気晴らしになったな。騎士さん、そいつ起きたら尋問頼みますね。』
一方、リンジー達は……
「聖女様、邪魔!」
「そんな事言っても……」
「前に出過ぎです!射線を考えて行動して下さい。」
「マスヤマ~帰ってきて~!」
「あなたが怒らせたのでしょう!もう帰って来ませんよ!この程度のダンジョンで何を泣き言言ってるんですか?」
さらに天界では……
「フレイヤ、お主巫女の教育はどうなっとるのじゃ?しかもマスヤマに聞いたら転生法違反しとるではないか!」
これ収まり付くんだろうか……?
話がとっちらかりましたな。
{計算でやったん違うんか?}
おでんが獄卒に化けてあんなとこに居るから
{んで、転生法って?}
地球人類を転生させる場合は必ず身体を与える事、なお特殊能力に上限は無いが世界のバランスを崩さぬ様に留意すべし
{身体もらってないからなぁ……}