お説教はエンドレス
「そういえば司祭様は何をしておられたんですか?」
「リンジーが治した人々に何故今日はダンジョンに入ってはいけないか説明していました。」
「ん?もしかしてあのオスカー司祭でいらっしゃいますか?」
「あのがどれか判りませんがオスカーです。」
「シン、あの司祭様知ってるの?」
「アーニャ、手刀切断のオスカーって聞いた事は無いか?」
「知ってるわよ!徒手空拳でドラゴン退治したA級冒険者……って、ええっ?」
「ああ、フレイヤ様の加護が有れば難しいことでは有りませんよ?それにドラゴンと言っても地竜ですから。」
“帝国のオゴーはブラックドラゴンを退治したそうですよ。今は緑星竜とグラトニースライムとカイザーゴブリンを従えています。さすがスサノオ神の分身ですね。”
『はえ~……ブラックドラゴン……ってスサノオ神?高天原の喧嘩神が来てるんですか?』
「マスヤマさん、それはどういう神様なんですか?」
『おいらの地域には悪魔の概念は有りません、スサノオ神が悪い神を押さえてたからです。ただこのスサノオ神はイタズラが酷かったんで姉の主神アマテラスに高天原を追放されます。スサノオは地上に降りて人々を苦しめてた八俣大蛇を倒しその尻尾から出てきた剣・草薙の剣をアマテラスに奉納する……ってのが向こうの神話です。』
“そうそう、そのオゴーさんからあなたに渡してくれと言付かっていました、受け取ってください。”
60センチ程の金属の……棒?
“ひねればアチョー棒になります。”
『ヌンチャクと言ってください……面白い金属ですね?暖かみを感じる。』
“オリハルコンです。ディクリウスの妹を守ってやってくれと言っていました。”
『本当に克己みたいな奴だ……ロボットなのに。』
“え?オゴーカツミですよ?奥さんはカヅコと言っていました。息子がユキハルです。”
『なんだ本当に克っしゃんなんだ!会える日を楽しみにしてると伝えてください。CBXの増山がありがとうと言っていたと。』
“はい、確かに伝えておきます。ではまた……”
『……あれ?克っしゃんの奥さんって腹に子供が居る状態で亡くなったと聞いたけど……まぁいいや、会ったら本人から聞こう。……どうしたのみんな?』
「いや……オゴーカツミって帝国のSSS級冒険者だと聞きましたが?」
「帰らずの迷宮のミノタウロス初めて撃破したとか……」
「皇帝含む50人一気復活なんてのも……」
『神の写し身なら不思議じゃ無いでしょ?』
「あんた本当は解って無いでしょ?」
『軽四もわかってないだろうに。』
「あの……司祭様?聖女様一人で口喧嘩してますが?」
「あれは聖女とエインヘリヤルの口喧嘩なのです。」
「聖女様はマスヤマさんの時は魔法も戦闘力も大幅に上がってる様ですよ。」
「あの……噂で聞いたんですがホムンクルスの培養に成功した錬金術師が居るとか……そこにマスヤマさんの魂移植はできませんか?」
「ふむ……シンさん、その錬金術師とは?」
「マグナス・ポアロ師です。」
ぶっ!オスカーは口に含んだ水を噴き出す。
「あああすいません、清浄!」
「司祭様、ご存知なので?」
「ああディノス騎士長は知りませんか。マグナスは地竜を退治したとき一緒に居たクソ野郎です。騎士爵を貰って辺境に蟄居してるはずですが……」
「司祭様が嫌っているのは理解しましたが?」
「奴は殉死した兵士達を切り刻んで腑分けしていたんです!」
『それって解剖学的見地からの行動なのでは?』
「マスヤマさん!あいつを擁護するんですか?」
『そういう訳でも有りませんが……例えば腕を折った人を治療したら腕がひねくれて治った人なんか居ませんか?』
「治癒呪文とはそういう物ですが?」
『そこで思考停止しないで、自分で使ってみて判ったんですが治癒呪文には元の形状に戻す呪文が含まれてますね。』
「まぁ当然ですね。」
『ただこの呪文部分は魔力が少ないと折れた骨同士ではなく近い骨に癒着しようとしませんか?』
「え?それは……」
『もう一度聞きます、ポアロという人はひねくれた状態の腕や脚を持つ殉死した兵士を解剖してたのではありませんか?』
「う……確かにあいつはそんな兵士ばかり……」
『なら簡単ですよ。彼は人の為に嫌われ役を買って出ていた聖人です。あまり嫌わないであげて下さい。』
「私は……なんという間違いを……」
「マスヤマさんは賢者かなにかだったんですか?」
「いいえ、えっちな絵描きです。」
『例えばこの聖女の裸などを……』
「止めなさいよ!」
「続けて喋っているとマスヤマさんか聖女様かわかりませんね。」
「あたしの事はリンジーと呼んで下さい。」
『もしくは軽四輪とでも……』
「あんただけでしょう!」
『小合克己も言ってるらしいけどな!』
「同一人物なんですからもう少し仲良くできませんか?」
「騎士長さん、俺には結構仲は良い様に見えますよ。」
「そうですね、幼い兄妹か仔犬がじゃれあってる様な。」
「いや……あなた方あれどうやって止める気ですか?他人に見られたら気狂い聖女とか言われますよ?」
「あ、俺やってみて良いですかね?」
「ああシンは兄弟多いから。」
シンは左手をリンジーの頭に置いて右手で左手を叩く。
「何やってんですかあんたらは!いくら仲が良くても時と場所を選んでイチャついて下さい!」
『え……あ……はい。』
「ではオスカー司祭様、あとお願いします。」
シンからバトンを受け取ったオスカーは嬉々として説教を始めるのだった。
『司祭!リンジーが寝てます!』
「寝てません!おとなしく聞いてただけです!」
「あなた方にはもう少しお説教が必要ですね。」
にっこり笑うオスカーを見てディノスは……
「シンくん、アーニャちゃん、昼飯にしないかな。」
「騎士長さん、俺たちは呼び捨てで結構ですよ。」
「それじゃあっしもディノスと呼んで下さい。」
「はい……ディノス様、聖女様と司祭様放って行っていいんでしょうか?」
「アーニャは優しいんですね。ありゃ一時間やそこら止まりませんよ。ゆっくり昼飯して来れる。」
三人はそっと抜け出すと冒険者ギルドの食堂に向かった。
周りの人物紹介しようとしたら説教回になったな?
{そう書いたんは誰じゃ?}
軽四と増山が勝手に動き回ってる状態なんでな。
{キャラクターの制御できてないんか?}
本編だけはある程度動かせるんだけどな。
{全部で完璧に動かさんかい!}