ギルドのオヤジは……
「どうせならマスヤマさんもギルドに登録しません?」
と言うシンとアーニャに連れられて冒険者ギルドに付いて来たのだが……
「お嬢ちゃん、ここは汚くて怖いおっさんが来る所だぞ?」
『ありがとうございます、でもニーズヘッグの皮を引き取ってくれると聞いたので。』
ざわめきがギルドを支配する。
え?それじゃあの子がエインヘリヤル様?
そう言えばあれくらいの子供だったぞ。
でもニーズヘッグは守護竜になったんじゃ?
『いやニーズはここに居ますが?ニーズ、変身解除。』
{我腹減るので5メートル位でいい?}
『1メートル位でもいいよ?。』
どろんと不思議な音を出して竜化するニーズヘッグ。
{我今回ケーキを守る為守護竜になったニーズヘッグです。みんな、よろしくね。}
おや?隻眼の貫禄の有るおっさんが……
「エインヘリヤル様、本日はどういう御用でございますか?」
真っ青な顔してへりくだっとる……
『すいません、あたしミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファーの影武者やってる者なんですがギルド登録させて欲しいなと。』
「おお!それはよくいらしていただきました。」
『おそらくあなたがギルドマスターと思いますので先に言いますがへりくだる必要は有りません。もっと普通に話していただきたいです。』
と耳打ちした途端、推定ギルマスは相好を崩した。
「いや住まない。若いお嬢さんと話すのは久し振りで固くなってたようだ。」
『そっちかい!』
「まぁ詳しくはギルマス部屋へ……シンとアーニャは付き添いですかな?」
『彼らには某守銭奴から助けてもらいまして……』
等と言いつつギルマス部屋に入る。
「シンは騎士団参謀の三男、アーニャは領主様の御息女なんですが二人でふらっと町を出ましてな……」
『んじゃ聖女パーティーなんかに参加してる場合じゃ無いのでは?』
「それが二人の親が口を揃えて「聖女パーティーに入ったのなら安心だ」と……」
「ギルマス!それよりマスヤマさんの方を……」
「それは誰かな?」
『ゴールディー・マスヤマ。わたしの本名です。』
{我もニーズヘッグ・マスヤマ名乗りたい。}
『あと可能ならミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファーの名前を使いたいのですが……』
「ああそれで王の密書が……わかりました。テンプラカードをミラリオス名義で作りましょう。ただこのカードは無くされるとここまで来ていただく形になってしまいますが……それとニーズヘッグちゃんには従魔カードを作りましょう。ただレベルをどうするか……」
『薬草集めのレベルで。』
「さすがに却下します。マスヤマさんは今最低でもドラゴンスレイヤーの称号を持ってますし相手が相手だけにゴッドイーターでもおかしく無いんですよ?これが帝国なら全ての戦歴が判る魔具が有るんですが……」
“そう言えばマスヤマの朋友の帝国勇者はSSSでしたね。”
「ふむ……マスヤマ名義のカードはゴッドイーターでダミーのミラリオスはドラゴンスレイヤーにしましょうか。」
『それ偉い人の認定とか要るのでは?』
「ヨシムネ王からは「よしなに頼む」との密書をいただいております。本人の要望だと言えば通ります。ニーズちゃんもゴッドイーター級従魔だよ。これにより聖女パーティーはゴッドイーター級パーティーとなります。全員冒険者の見本となる行動を望みます。」
ロビーに降りるとさっきの人のよさそうなおっさんが話し掛けてきた。
「お嬢ちゃん、どうだったね?」
『なんかドラゴンスレイヤーとか言われました。』
「あはは、一瞬で並ばれちまったか。」
「ドラゴンスレイヤー?貴方は剣聖ムサシ様ですか?」
「様と呼ばれる程大した者じゃないよ。だいたいオスカーやマグナスの方が有名だしな。」
『父ちゃん本人より周りの方がまともなんだよな……』
「父ちゃん?まさかお嬢ちゃんオスカーの……」
『ちゃいます。マグナス・ポアロの娘のゴールディーと申します。』
「え……あやつエルフを娶ったのか?」
『いやおいら死んでたらしくて気が付くと水槽の中で泳いでた。』
「それはすまん事を思い出させたな。ではこれで……」
『ムサシさん、親父とオスカー神父に会っていきませんか?』
「良いのか?おっさんは間者かも知れないぞ?」
『カトちゃん?』
「御意!」
スッとムサシの後ろに現れるカトー。ムサシの刀が翻る……が空蝉の丸太の前で止まる。
「身のこなしは一流なれど剣士のそれにござるよ。」
「ああすまん、いきなり気配が現れたから反応しちまった。あんた名うての忍だね?」
「気配を察知し動き刃が痛むと思い止めた。さすがに剣豪でござる、感服致し申した。スパイはこんなに素直でしなやかな太刀筋ではござらん故に。」
『ってカトちゃん相手の刃潰すのにそんなの使ってるのか……』
「潰れずとも剣に違和感が生じれば成功でござるが……このお方の剣は全て断ち切る剣、止めてもらわなければ拙者も真っ二つでござったよ。」
「そりゃ買い被り過ぎだよ。おっさんそんなに強くねぇし。」
『まぁとりあえず合流しよう。』
「嬢ちゃん、買い取りはいいのか?」
『そうだった……』
ニーズヘッグの脱皮皮は1月間高級宿に泊まれる程度になった。マグナスがいい部分を先に半分以上抜いてそれである。牙や爪はまた金に困ったら売ろう……
「お帰り~!どうじゃった?」
「お前もうお嬢ちゃんに並ばれたぞ。」
「む?マサシか?」
「ムサシだ!忘れてんじゃねぇよ。」
「え?ムサシが来たんですか?」
「ああ、オスカー久し振りだな。」
「仇は打ったのか?」
「おお、結局はただの野盗だったぜ。」
「んじゃ付いて来い。わしらは魔族狩りじゃ。」
「出発は?」
「武器が出来次第……まぁ1週間後じゃなぁ。」
「よし、マグナス来い!」
「お前公爵邸で何しようとしとるんじゃ?」
「昔やった魔法切断を……」
「表行ってやれアホウ!」
「俺、伝説のパーティーって憧れてたんだが……」
「まさか拙者ら以上にアホだとは……」
「おいムナシ。呆れられてるぞ。」
「明らかにお前達の所為だろうが!」
「ムサシが魔法斬ろうとするからだ!」
間に合ったぁ~!
{毎回チキンレースすんなよ。}
いやまぁこれはこれで楽しい。
{楽しむなつっとんじゃ。あと20分やぞ!}




