テイミング
すいません、残業で30分遅れました
「聖女リンジー・マッコールの中にニーズヘッグは封印されております!」
『なんで言うかなこのシスターは……』
「リンジーは限界に近く強欲の呪いが吹き出しております!何卒彼女をお救いください!」
『あの~ダイアナさん。それでおいらがリンジー助けると思った?』
「代わりに我が命を捧げます。」
懐から出したナイフを自分の胸に!
『武装解除!あのねダイアナさん、おいらは魔族の陰謀暴こうとしてたのになんで邪魔したの?帝国英雄が手伝ってくれればすぐに無害化できるのに。』
「はぁ?」
{ではお前だけではできぬと言うことか。}
『馬鹿ミミズ、誰に千切られたか覚えて無いのか?』
{では今すぐこの娘の魂を喰ろうてくれるわ。}
『喰えるものなら喰ってみれ?』
“いかん!次元隔壁!”
辺りを紫の闇が支配する。
“ダイアナ……なんと愚かな……”
「でもリンジーを救うには……」
“馬鹿者!お主はマスヤマに負担を強いただけじゃ!彼のエインヘリヤルはこれでニーズヘッグに単身で挑まなければならなくなったわ!”
『まぁいいや。オーディーン様、フレイヤ様、馬鹿娘とギャラリー護ってて。』
鈍く光るヌンチャクを手にゴールディがニーズヘッグに歩み寄る。
リンジーに噛み付こうとしたニーズヘッグは急に吹き飛ばされた。
『やっぱり聖属性に弱いなぁ。おいらと喧嘩したきゃそこ鍛えろって言わなかったか?そのヌンチャクは教会騎士団の折れた木剣をリサイクルして作ってある。下手な聖剣よりお前にダメージ行くだろう?』
{なんで勝手に動く?}
「リンジーが不器用過ぎたから自動でリンジーを護れと呪をかけた。ホレホレ大口空けてると牙折られるぞ。」
{こんな呪をいつの間に……}
『あのなぁ……自分が憑依してて狭いのが判らないはずねーだろう?しかもどっからともなくどす黒い魔力が流れて来る。気付かん振りして離れるのがそんなにおかしいか?』
{この卑怯者め!}
毒ガスを吹き付けるニーズヘッグ。だが増山は……
『きゃぁ苦しい!これで満足か?』
{何をした?}
『教えてやらん。卑怯者がなんで教えてくれると思った?』
スライムには毒を持つ個体も存在する。それは毒に耐性が有るのではなく酸で身体をコーティングしてるだけなのだが……ニーズヘッグはゴールディの身体にスライムの因子が有ることなど知る由もない。
『んじゃそろそろこっちからも行くぞ?』
バキッ ドゴッ ガン ゴンゴンゴン
増山のヌンチャクがニーズヘッグをしばき倒す。
『なぁミミズ、お前弱くなってねぇ?』
{うぐっ……我が呼び声に集え。不死の軍!}
『聖域を築き不浄なる者を闇に帰せ。聖域!』
{ぐおおおおおお!}
『なんでお前が苦しんでるんだ?地面の下で世界樹の根っこばっかり囓ってるから不浄なる者にカウントされてんのか?』
のたうち回っていたニーズヘッグの目が光った!自然体で立っていたゴールディの身体を爪で袈裟掛けに斬り裂く。
『きゃぁエッチ!』
{いや……お前普通はそこで死ぬだろう?}
『再生っと。なんで死んでやらにゃならんのだ?それより乙女の柔肌を見た罪、倍返しだからな?』
ヌンチャクを捻って55センチ程の棒にすると邪竜をメチャクチャに殴り始めた。
もし増山が剣を持っていたならこの邪竜の命は既に無かっただろう。普通に殴っているだけで角は折れ牙は無くなり残っている爪はもはや用を成して居ないのだ。
{貴様それでも神の眷属か?}
『チーム裸苦転血って聞いたこと無いか?』
{悪魔に逢っては殴り倒し神に逢っては張り倒すとか言われてた東洋のはぐれ神達なら噂は聞いた。だがアザトースに喧嘩売りに行ったとも聞いたぞ?}
『そんなのに喧嘩売りたいか?』
{事実なら腕試ししてみたいな。}
『よし第2ラウンドだ。』
{おい待て事実なのか?}
『オーディーン様知ってるよね?』
“もちろんじゃ。”
{会わせろ、いや会わせてくれ。}
『会ってどうする?』
{はぐれ神達を乗せて飛ぶ!}
“あやつら魂喰いは嫌いじゃぞ?特に聖女の魂とか喰おうとした竜なんぞリンチの上浄化じゃろうな。”
『あ~、やるかもな。特にその聖女、スサノオの連れの妹らしいから傷つけただけで終わりだ。』
{なんとかならねぇ?}
『その口のききかたでどうにかしたいのならヌンチャクの染みにする方が早いな。』
{そうですね……すいません。}
『ちなみにおいらもそいつの仲間だけどな。』
{そうだったんですか。}
『実力見せようか?』
{勘弁してください死んでしまいます。}
『っていうかお前何かに化けられないか?』
{蛇系統なら。}
『もふもふには無理か?』
{もふもふの蛇なら。}
『とりあえずそれやってみて?』
{変化!}
『75年にマスダヤが売ってたモーラーのでかい奴だな。』
{後は人位にしかなれませんよ?}
“『先に言え!』”
ニーズヘッグは透き通る様な肌を持つ少女に変身した。
“ほう、なかなかの美少女じゃなぁ。”
『その姿でリンジーの旅に同行してくれ……あら?』
ちらっと見えたニーズヘッグのステータスにマスヤマの使い魔と書かれていた。
パリンと音を立てて次元隔壁が砕ける。
“諸君!今諸君の目で見たように邪竜ニーズヘッグはエインヘリヤル・マスヤマの使い魔となった。もう魂を喰らう事も勝手に暴れる事もない。聖女リンジーとエインヘリヤル・マスヤマがニーズヘッグの心を浄化したのじゃ。これにて一件落着じゃ!”
歓喜の声を上げる傍聴に来た一般民衆。
歓声の中涙を流して立ち尽くすシスター・ダイアナ。
ニーズヘッグを研究しようとするマグナス・ポアロ。
頭痛の種が増えたヨシムネ王とミツクニ公爵……
そして歯ぎしりをする魔族派の人間共……
それぞれの思惑を乗せてニーズヘッグは人間の側に大きく傾いた。
『ところでお前何が食えるの?』
{人間の食ってる物なら何でも食えるよ?あ!ケーキとか言うの食いたい。}
“マスヤマ、わたくしとオーディーン様のケーキは忘れて居ませんね?”
『おいら文無しですよ?おーいシンさん、アーニャさん、カトちゃ~ん。昼飯行こ~!』
{仲間にすると思ったわ。}
まぁ小合の方には緑星竜が居るし……
{合流したら怪獣大決戦やね。}
あいつらもブラックホール破壊砲は喰らいたくないと思うが?




