魔族の暗躍
地下牢では両足を切られたヨシムネ王が転がされていた。
「ヨシムネ様!」
「フッ……魔族か……余を殺してもニーズヘッグ再生の秘宝の場所は教えんぞ。」
『え?……ああこれか?父ちゃん変身解除はどうやんの?』
「もっかいバク転じゃ。」
『ほいっと、初めまして王様。まずは部分麻痺からの~治癒大。』
ボウッ!切られた足が再生する。
「え?……その子魔族では……無いんですか?」
“久しいですねヨシムネ。この子は我が巫女のエインヘリヤルです。”
「ははぁっ!エインヘリヤル様、知らぬ事とは言え失礼を致しました。」
『いえ、とりあえず広間に戻りましょう。とその前に……ほいっ!』
「余に化ける意味が?」
『有りますよ。そのまま入ったら王様殺されてしまいます。』
戸を開くと……数十本の矢が増山を貫く。
『ね?こうなったでしょ?』
「ゴールディ~!」
「今矢を射た者を拘束せよ!王命である!」
『あ~、死んだかと思った。』
「ゴールディ?何故?」
『父ちゃんスライムの遺伝子混ぜたろ?物理完全無効が有るんだこの体。』
「ありゃ体細胞が足りなくて混ぜただけじゃぞ?」
『気軽に禁忌に踏み込むんじゃない!』
「矢でも死なぬとは化物か?」
“いい加減にせい!わしはオーディーンと言う者じゃがこの世界壊してもいいんじゃぞ?”
“オーディーン様、それはあまりにも……”
“じゃがフレイヤよ、マスヤマの魂が居なくなればこやつらニーズヘッグの餌にしかならんぞ?わしも一度はマスヤマを止めたが今止めた事を後悔しておる。”
「神様は我らを見捨てると?」
“災厄に立ち向かえるたった1枚の切り札を自らの手で破り捨てたんじゃろ?魔族を追い返し王を救ったエインヘリヤルに矢を射たんじゃからのう。”
『ああそりゃ大変だ。あんた達頑張ってね?』
「ちょっとマスヤマ!あんたこの人達助けたいとは思わないの?」
『うん。助けても身体の使用料取る奴なんか喰われちまえと心の底から思ってる。』
“オスカー!なんでこの場にリンジー連れて来たんですか?”
「昨日夕刻彼に助けてもらいましたので……」
「相変わらず拗れさせるのが上手いのうオスカー。」
「うるさい!……マグナス?……痩せたか?」
「フン、わしの事なぞどうでもええじゃろう。お主らはこのミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファーの機嫌を取らねばならんのと違うか?」
「ミラリオス・アルトラパン・メイプルリーファー……ってまさかエインヘリヤル様……?」
『ああおいらは影武者だよ?本物は名前偽って市井に生きてる。んで何やったんそのメイプルリーファーって?』
「邪竜の卵を体内に宿して居るんだ。早く見付け出して殺さねば我が国が……」
『なぁそこのぼんくら騎士、それ殺して邪竜とやらが復活したらお前責任取れんの?』
「何?」
『ミラリオスが自分の命で結界張ってニーズヘッグが現界に降臨するの防いでいると考えないからお前はぼんくらなんだ。なぁオーディーン様?』
“これゴールディ!なんでバラすんじゃ!”
『いやそれ試練にしてもキツ過ぎるでしょ?揚げ句にこういうバカが出る。』
「貴様聞いておれば人を愚弄しおって……」
『バカだからバカと言ったのがわからんのかアホウ、おいらはニーズヘッグより強いか弱いかどっちだ?』
「かの邪竜が貴様より弱いはず無かろう!」
『そんな弱いおいらを不意討ちで殺せない奴がもっと強いニーズヘッグを倒すと来たもんだ。脳味噌腐ってる奴はマグナスの腐敗防止液でも打ってもらえ!』
「何をこの……」
「止めい!騎士団長!お主は何故我が恩人にそのような態度を取るのじゃ?事実余が先に入っておれば死んでおったわ!王国騎士団は解散する!弑逆の計画を持っていたとしてな。」
「ククッ……アハハハハ。ニーズヘッグ様による国家転覆が成される前に計画を潰されるとはな!」
『おっさん、お前に妻子は居るか?』
「そんなもん居らんわ!」
『だろうな。』
斬りかかって来た騎士団長の剣をヌンチャクで弾く。
剣は真ん中から折れ曲がる。
「待て!」
『本物のアホかお前は?』
脳天にヌンチャクを叩き付けると騎士団長は脳漿をぶち撒いて絶命した。
「あの……エインヘリヤル様、背後関係を知りたかったのですが……」
『あ!そうか!王様ごめんね?復活。』
“お主と言いオゴウと言いなんでそんな呪文ホイホイ使うかのう……”
『え?これで克っしゃんが50人程復活させたって聞いたんだけど?』
“ありゃデミグラスの案件じゃぞ?”
『その美味しそうな神様は何?』
「フハハハハ!やはり賤民。人を殺すのに慣れて居らんと見える。」
「近衛兵!このバカを連れて行け!自分が死んだ事もわからん人間じゃ。たっぷり拷問してやれ!」
「やり過ぎて死んだらどうします?」
「許す!最悪エインヘリヤル様が蘇らせてくれるわ。」
『あ!傷も治ってしまうから目ェくり抜いても耳削ぎ落としてもいいからって拷問官さんにお伝えください。』
「お前人の心は無いのか?」
『ミミズ復活させてこの世を潰す様なバカに向ける慈悲が有るかボケ。』
「そっちの話は終わったわね?さぁダンジョンに潜るわよ?」
『金貰っても嫌だ。今のボディーの方がかわいいしな。』
「なんて我が儘な!」
『鏡見ろバカ!』
「え~と……マスヤマさん?」
「あ!シンさん3日ぶり!」
「エインヘリヤル様……かわいいかわいいかわいい!」
『アーニャ……3日前に言ってたイチゴタルトを……オーディーン様とフレイヤ様に……』
「アーニャ殿!マスヤマ様が窒息してござるよ!」
「……そなたらはエインヘリヤル様の仲間かのう?」
「ヨシムネ王、我らは見習い聖女パーティーにございます。」
『父ちゃん、オスカーさんに説明させてて良いのか?』
「あやつが一番弁が回るからのう。」
「鉄拳司祭オスカーよ、聖女とエインヘリヤル様は仲が悪いのか?」
「はぁ、どうも何かの呪いを受けてしまったらしく……」
「お待ちください!」
『あ、ダイアナさんも来たよ……』
「聖女リンジー・マッコールの中にニーズヘッグは封印されております!」
{なんか邪教っぽいのが……}
うんまぁ人間界に入り込んだ魔族がなんだかんだしてただけなんだが。
{剣曲げられた騎士団長もか?}
あれも騎士爵なんだが選民思想をくすぐられて魂売ったアホなんで。




